ホモ・フロレシエンシスの脊椎

 ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)の脊椎について、今年(2025年)3月20日~23日にかけてアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア市で開催された第94回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Nalley et al., 2025)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P119)。ホモ・フロレシエンシスは、インドネシア領フローレス島で発見された後期更新世の人類遺骸群を表しており、その直接的な祖先集団もしくは祖先集団ときわめて近縁な集団を表していると考えられる、70万年前頃の人類遺骸も発見されています(関連記事)。フローレス島西部のリアン・ブア(Liang Bua、略してLB)洞窟で発見された遺骸(LB1)は、ホモ・フロレシエンシスの模式標本とされています。

 この研究は、模式標本(LB1)を含めて、ホモ・フロレシエンシスに分類されている脊椎要素の最初の記載を提供します。ホモ・フロレシエンシスの脊椎が、現存のヒトおよび類人猿(92個点)や、アウストラロピテクス属およびホモ属種(25点)を含めて、他の化石人類と比較されました。化石標本に含まれるのは、5点の部分的な成体の脊椎、1点の部分的な亜成体の脊椎、亜成体の仙骨の20点以上の断片です。これらの要素で表される個体の最小数は、4個体です(成体2個体と亜成体2個体)。

 亜成体の脊椎の発達から、1個体は乳歯が放出し始める成長段階にあり、もう一方の個体は最初の永久歯の大臼歯が放出する成長段階だった、と示唆されます。ホモ・フロレシエンシスの脊椎は絶対的な大きさではアウストラロピテクス属およびチンパンジー属と類似しており、他の頭蓋後方(首から下)要素から得られた、軽い体重および低い身長の推定値と一致します。いくつかの特徴はアウストラロピテクス属との機能的類似性を示唆しており、それにはより尾側に傾斜した環軸椎関節や大きな腰神経弓の断面積が含まれます。

 ホモ・フロレシエンシスの両環椎(C1)の横孔の相対的な大きさから、椎骨動脈はチンパンジー属と大きさがひじょうに類似している可能性が高い、と示唆され、これはLB1の脳の大きさの以前の推定値と一致します。他の特徴は、よりヒト的です。成体の頸椎の断面積は比較的大きく、C1の上部関節面は兵站で、腰椎は比較的幅広です。こうした結果はホモ・フロレシエンシスの以前の報告と一致しており、よりアウストラロピテクス属的な形態を示すいくつかの特徴がある、小さな身体および脳であることを裏づけています。


参考文献:
Nalley T. et al.(2025): The vertebral column of Homo floresiensis. The 94th Annual Meeting of the AAPA.
https://doi.org/10.1002/ajpa.70031

この記事へのコメント