初期人類の脳容量とその進化的意義

 初期人類の脳容量とその進化的意義について、今年(2025年)3月20日~23日にかけてアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア市で開催された第94回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Schoenemann et al., 2025)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P147)。

 進化的変化の基本原理は、機能的および行動的変化が一般的に解剖学的進化を駆動し、その逆ではないことです。この原理をヒトの脳の進化に当てはめると、ある行動と関連する脳の形態における識別可能な変化は、重要な行動/認知の変化がすでに始まった後にのみ化石に現れる可能性が高い、と示唆されます。初期人類の頭蓋内表面を評価した最近の研究では、重要な言語野の位置と配置(後外側前頭葉、BA 44、BA 45、BA 47)が150万年前頃まで祖先的位置を維持していたことを示す、と主張されました。これは、重要な行動/認知の進歩がその時点までにやっと起きていたことを示唆しているかもしれません。しかし、これは初期人類における脳の規模増大の重要な意味を無視するでしょう。

 この研究では、最適な文献から、経時的な頭蓋内容量を予測する多項式直線が168点の化石標本について計算されましたが、頑丈なアウストラロピテクス属【パラントロプス属】とホモ・ナレディ(Homo naledi)とホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)は除外されました。この式を用いると、過去300万年間の脳容量における全体的な変化の22%が177万年前頃、つまりジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)遺跡人類集団ですでに起きていた、と推定されます。さらに、30%が150万年前頃までに、48%が100万年前頃までに、74%が50万年前頃までに、90%が現生人類(Homo sapiens)の起源に近い25万年前頃までに起きていました。(1)社会的複雑さと一般的認知能力は霊長類の絶対的な脳の大きさと相関し、(2)より大きな脳は概念的複雑さの増加を裏づける可能性が高く、(3)現生類人猿は言語と関連する潜在的能力を有しているので、初期人類における脳の大きさの増加から、意思疎通(言語?)の強化は、脳回/脳溝が「祖先的」に見えるとしても、177万年前頃までに起きていた可能性が高い、と示唆されます。


参考文献:
Schoenemann PT. et al.(2025): The existence and importance of brain size evolution in early hominins. The 94th Annual Meeting of the AAPA.
https://doi.org/10.1002/ajpa.70031

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