初期人類の食性変化と形態
初期人類の食性変化と形態に関する研究(Fannin et al., 2025)が公表されました。日本語の解説記事もあります。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。行動駆動説では、動物の行動の大きな変化によって新たな選択圧が生じた結果として、新たな身体的特徴の進化が起きる、と想定されています。本論文は、ケルコピテコイデス属(Cercopithecoides)化石から得られた炭素および酸素同位体比を人類の食性進化の観点へと統合し、イネ科植物など草食性行動が、対応する形態の変化に約70万年先行していた、と明らかにし、人類系統でも行動駆動が存在したことを示しています。以下の略称は、M₃(下顎第三大臼歯)、M₃L(third molar length、下顎第三大臼歯の長さ)、炭素(C)、酸素(O)、CI(Confidence interval、信頼区間)、CV(coefficient of variation、差異の係数)です。以下、敬称は省略します。
●要約
食性変化とそれに対応する形態学的変化は時に同時にではなく連続して変化することがあり、これは行動駆動と呼ばれる進化的過程です。化石記録における行動駆動の検出が困難なのは、対応する形態とは独立して行動を測定することが難しいからです。この問題を解決するために、一部の霊長類の化石記録における分かりづらい行動、つまりイネ科植物の摂食に焦点が当てられました。本論文は化石ケルコピテコイデス属から得られた炭素および酸素同位体比を報告し、このデータを人類の食性進化の観点へと統合して、草食性行動は歯の形態の対応する変化に約70万年先行していた、と分かりました。食性と形態の時間的分離は、食性変化がヒトの進化を促進した、時期の判断と理由の調査に役立ちました。
●研究史
チャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)やジョージ・ゲイロード シンプソン(George Gaylord Simpson)やエルンスト・ウォルター・マイヤー(Ernst Walter Mayr)などは、動物の行動における重要な変化は、新たな形態学的形質の進化を促進する、と主張し、これは行動駆動と呼ばれる仮説です。自然実験によって確証されたように、行動駆動とその結果、つまり、行動形態学的表現型は同時ではなく連続的に進化するかもしれない、との仮説(図1A)は、行動の開始と化石記録における機能的形質の出現との間の遅れを前提とする、一部の指導的な古生物学者の見解を形成してきました。じっさい、地球上の生命の注目すべき瞬間の多くは、四肢動物の出現から人類の二足歩行の起源まで、行動駆動の三稜鏡で検討されてきました。以下は本論文の図1です。
この見解の問題は明確な機序の欠如で、大きな行動変化を引き起こす要因は不明です。エイドリアン・リスター(Adrian Lister)などは、変化する生息条件が行動的革新を強いる場合のような、外的要因を主張しました。他の研究者は、生物がより大きな作用をしている、と示唆し、拡散および/もしくは探索や自身の環境の改変を通じた新たな生息地への活発な拡大など、内的モデルを支持しています。どちらも互いに排他的ではありませんが、高水準の個体の行動のさいが行動駆動の不可欠な前提条件である、との広範な合意があります。この前提には、化石記録では検証可能との利点があり、幹系統におけるより大きな行動多様性を予測します。これは一般的な柔軟な幹仮説として知られており、木の比喩として系統発生を適切に拡張しています。
化石記録における行動駆動の検出には、依然として二つの障害があります。第一に、検討対象の形態学的特徴から独立した方法での、行動の定量化は困難な場合が多くあります。第二に、行動駆動の連続は速度と期間が変わるかもしれず、行動駆動が発生した年代と理由を調べるさいに、計算の均一な年代差引はできません。これらの限界がひじょうに残念なのは、行動変化を駆り立てた既知の要因、つまりマイヤーが述べた「最初の力」が、多くの古人類学者にとっての聖杯探索だからです。
これらの課題を克服するために、霊長類の進化における興味深い行動、つまり、ほとんどの草食性哺乳類に共通する機能的形質である長冠歯および/もしくは精巧な消化管の適応を欠いている場合の、C₄のイネ科型草本植物(つまり、草やスゲ)の消費です。それでも、鮮新世には霊長類において少なくとも3回の大きな草食性への並行した変化があり、それには340万年前頃のケルコピテコイデス属(Cercopithecoides)などのコロブス亜科や、420万年前頃のゲラダヒヒ属などオナガザル亜科や、現代人系統である380万年前頃の人類が含まれます。
これらのうちケルコピテコイデス属は、コロブス亜科の葉食性や植物質を効率的に消化する能力(高く隆起した大臼歯と反芻動物的な嚢状の胃のためです)を考えると、さほど意外ではありません。しかし、コロブス亜科の160万年前頃の草食の試みがケルコピテコイデス属の絶滅で挫折した一方で、その近縁であるオナガザル亜科は低い尖頭(臼状)の大臼歯と単純な胃にも関わらず生き残りました。オナガザル亜科はいくつかの方法でこれらの制約を克服し、その一部は現在、ヒヒ(ヒヒ属)やゲラダヒヒ(Theropithecus gelada)の食性選択において明らかです。これらのサルはイネ科植物を食べるさいに、ひじょうに器用に手を使い、葉や花や種子や地価の貯蔵器官を栄養必要分に応じて分解します。
さらに複雑なのは、初期ホモ属を含めて人類の草食性です。エネルギー需要の増加した脳の大型化した類人猿が、イネ科植物を食べ始めた理由の理解は困難です。イネ科の葉は繊維質で炭水化物は少なく、草食の人類をエネルギー枯渇に追い込むだろう特徴です。イネ科の趣旨はより高品質な食物ですが、その年間利用可能性は4ヶ月未満なので、種子だけではパラントロプス・ボイセイ(Paranthropus boisei)の食性を説明できず、パラントロプス・ロブストスは数年の過程である大臼歯冠の形成期にほぼ100%のC₄植物を摂取していました。この謎の解明は古人類学者にとって優先的課題ですが、研究の進展はC₄植物組織の不可解な性質によって阻まれており、それは、葉か種子か地下貯蔵器官か、あるいはその混合だったのでしょうか?合意が曖昧なのは、炭素安定同位体比(C₄のイネ科植物組織の食性の割合を示唆します)を、異なる時間規模での食物の物理的特性を示す、歯の摩耗痕や形態など頭蓋歯の特徴と一致させる複数の方法があるからです[50]。行動駆動の考慮が有益かもしれないのは、摂食行動と形態を時間的に明示的に切り離す枠組みだからです。
本論文では、鮮新世~更新世アフリカのサバンナ・森林地帯の霊長類進化の文脈における行動駆動の3柱が検証されます。これらの目的の達成のため、(1)以前の分析で代表されていないか標本抽出されていない分類群と時間間隔を対象として、化石標本の炭素および酸素安定同位体が測定され、(2)C₄植物食料における時空間的差異を考慮しながら、行動と形態の年代差引の期間と速度が決定されました。これらの結果の強度はこの研究に関わった者を勇気づけ、行動駆動を始動させたイネ科組織区別のための酸素安定同位体比の利用という、第三の目的へと突き動かしました。
●霊長類の行動の測定
植生が二つの力、つまり、形態へのさまざまな選択圧を及ぼす利用可能性と選好によって形成されることを考えると、C₄植物草食性を引き起こす要因は不明です。実際の摂取量ではなく、食性選好を推定するために、C₄植物の生物量の時空間的差異を考慮して、D = (rᵢₛ − pₛ)/(rᵢₛ + pₛ − 2rᵢₛpₛ)として計算される選択制指数であるJacob’s Dが計算され、ここではrᵢₛはC₄植物摂取の割合(δ¹³C値に基づきます)で、pₛはと基底の生息地におけるC₄植物生物量の推定値です。Jacob’s Dは−1~+1の範囲で変わり、正の値は選好を、負の値は忌避を、0は無作為選択を示唆します。コロブス亜科については、D値の範囲は無関心から嫌悪までとなり、わずかな個体のみがC₄植物選好を示します。逆に、ゲラダヒヒ属は420万年前頃に始まる過剰選択へと向かう傾向を示したものの(図2A)、この結果は基幹ヒヒ族(papionine)であるプリオパピオ属(Pliopapio)と類似した食性を過程しています。おそらくは推測にすぎませんが、これは鮮新世~更新世のアフリカ全域のあらゆるC₄植物草食性の祖先状態を反映しています。人類は強いC₄植物食料の選好の同様の軌跡をたどりましたが、その傾きは230万年前頃に急激に変化しました(図2B)。以下は本論文の図2です。
本論文の調査結果は、鮮新世~更新世において一部の霊長類がC₄植物食料を摂取していた、との見解を確証します。同時に本論文の分析は、一部の種がその利用可能性に対して過剰な寄り合いのC₄植物を対象としていた、との選好の論証によって、霊長類の草食性に関する理解を深めます。この結果は、非木質被覆率もしくはC₄植物の利用可能な割合を推定するための、古土壌炭酸塩などC₄植物生物量の代替指標に対して堅牢です。さらに、本論文の分析は230万年前頃の人類におけるC₄植物選好の逆転を明らかにしますが、この単系統群水準の調査結果は、分類群と系統の間の重要な食性の区別を曖昧にします。パラントロプス属とホモ属のJacob’s Dの解析は、230万年前頃のパラントロプス・ロブストスとホモ属におけるC₄植物食料への急激な嫌悪を明らかにしましたが、アフリカ東部のパラントロプス属ではC₄植物食料への急激な嫌悪は明らかになりませんでした。
●行動駆動の裏づけ
行動変化が確証されたので、行動形態学的年代差引についての検証のため、歯の形態学的差異が注目されました。M₃Lに焦点が当てられたのは、データが文献で容易に利用可能で、破砕理論がM₃Lでの草食性による選択を予測しているからです。さらに、イネ科は硬く、食塊形成に対して比較的耐性があるので、より長いM₃では咀嚼中の食料破砕確率が高くなると予測され、これは接触効率性の重要な構成要素です。もう一つの理由は、内因性植物化石や外因性の砂粒を含めて、珪酸質粒子の出現率と関わっています。珪酸は歯の摩耗の主因なので、より長いM₃はイネ科による摩耗への大勢が強い、と予測されます。これらの予測を検証するために、体重による違いを制御した後で、現生有蹄類と霊長類のイネ科食性でM₃Lが変わる、と分かりました。イノシシ科はこのパターンを例証しており、M₃Lは草食性に急速に対尾えして進化しています。草食性のイノシシ科の大臼歯は、予測より約2cm長くなっています。この形態と機能の関係の古さを検証するために、化石イノシシ科についての刊行されたデータが集められました。図1BはC₄イネ科食性増加と、最初の遅延後のM₃Lの急激な加速を示しており、これは行動駆動の予測に適合し、長鼻類についての刊行されている調査結果をよく反映しています(図1C)。
霊長類に戻り、C₄植物の選好とM₃Lとの間の経時的共変動が記入され、有意な変化点値の存在に応じて線形回帰もしくは中止点回帰のどちらかに当てはめられました。オナガザル亜科のM₃Lで増加が検出されましたが、C₄植物選好は検出されませんでした。どちらの字形れでも統計的変化点は観察されず、これは行動駆動の証拠を除外します。対照的に、ゲラダヒヒ属のM₃Lは440万~330万年前頃にかけて急激に増加し(プリオパピオ属的な幹M₃Lを仮定した場合)、330万~50万年前頃にはより緩やかに増加しました。330万年前頃の形態学的変化点は420万年前頃の推定される行動的変化点より遅れており(図2A)、その後で350万年前頃の形態学的適応が続きました。変化点間の差を計算すると、約90万年の行動と形態の年代の差引が得られました(M₃のCIは120万~70万年)。人類のM₃Lも経時的に増加しましたが、変化点は160万年前頃でした(図2D)。しかし、この変化てんは130万年前頃となる化石記録からのパラントロプス属の消滅に影響を受けています。その後のホモ属については、急激な食性変化、つまりC₄植物選好の逆転が検出され、これは70万年前頃以後のM₃Lの急速な縮小を説明できるかもしれません。長鼻類と同様に、砂塵形成として知られる、イネ科植物の表面に容易に補足される、環境中の砂塵の水準増加は、230万年前頃以前の大臼歯の長さに寄与した要因だった可能性が高そうです。
既存文献では標準的ですが、年代分析では進化速度における系統発生の差異が無視され、向上進化が仮定されます。この限界に対処するために、充分に解明された系統発生[68]を使用し、利用可能な体重推定値のある種に焦点を当てて、人類の部分集合で行動および形態学的進化の根底にある速度が計算されました。予測されたように、行動進化の速度はC₄イネ科植物食になった幹系統間ではより速く、体重に対して絶対的(図2E)もしくは相対的のどちらでも、M₃が長くなることに先行しました。この結果から、パラントロプス属とホモ属につながった、推定される2系統のアウストラロピテクス属の子孫系列の、狭く焦点を当てた年代分析が行なわれました。両系列で形態学ぶと年代の差引が検出され、これは、行動変化の創始者としてのアウストラロピテクス属の役割を浮き彫りにします。230万年前頃のホモ属の行動と形態の分岐にも、強い注目が集まります。
これら補完的な調査結果は行動駆動の予測を支持しますが、予測される前提条件、つまりイネ科植物食を生み出した系統における高水準の行動の差異には触れていません。この柔軟な幹仮説を検証するために、人類系統内の食性差異のブートストラップ係数が計算されました。この実行は、幹系統のより大きな柔軟性を確証します。たとえば、中期鮮新世のアウストラロピテクス属の食性多様性は、パラントロプス・ボイセイと初期ホモ属よりもそれぞれ約29%と約22%高くなりました(図3A)。この分岐分類学的調査結果が潜在的な地理的差異に対して堅牢であることを確認するために、東アフリカ地溝帯の時空間単位にわたって、個々の人類系統のCVが記入されました。再度、柔軟な幹の証拠が骨狩り、食性柔軟性の頂点は230万年前頃となる単系統群水準の行動変化に先行します(図3B)。以下は本論文の図3です。
これらの調査結果の意義は3点です。第一に、食性の変化は歯の形態の変化に先行していた、と示されます。第二に、行動と形態の年代の差引は数百万年に及ぶかもしれない、と示されます。第三に、本論文の結果から、初期ホモ属は230万年前頃に、C₄植物食料を忌避し始めた、と示唆され、これはδ¹³C値のみでは検出が困難な行動変化です。
●人類のイネ科植物食の明瞭化
行動駆動を促進したイネ科組織の種類を特定するために、δ¹⁸O値の差異に焦点が当てられました。図4は、共存するイネ科種がどのような均一なδ¹³C値および異なるδ¹⁸O値を有するのか、示しています。一般的に、消費者のδ¹⁸O値は食料源の水の値を反映しており、これは時空間的に大きく変動するため、δ¹⁸O値のみから化石記録で摂食行動を有意義に推測もしくは比較することは困難です。この問題を克服するためにδ¹⁸O値がウマ科へと正規化され、それはウマ科のδ¹⁸O値が人類と確実に同年代だからです。さらに、ウマ科は水準基標もしくは基準分類群を表しており、それは、ウマ科が代表的なイネ科植物食で、後期中新世移行に牧草地の生態的地位を占めており、必須飲水動物だからで、それが意味するのは、ウマ科が絶えず天水で体内を補充していることです。これら2点の行動によって体内の水は混合し、それは、δ¹⁸Oが枯渇した水と、イネ科植物から蒸発した水、つまり、日中のδ¹⁸Oの蒸発による損失に起因してδ¹⁸Oが増加した水です(図4)。次に、これらの動態から、乾燥度と共変し、イネ科植物のC₃もしくはC₄経路とは関係ない、ウマ科のδ¹⁸O値における予測可能な水とエナメル質の差引が得られます。したがって、ウマ科は時空間規模でδ¹⁸Oの比較の標準的な参照を提供します。以下は本論文の図4です。
地上のイネ科植物組織、およびその中の蒸発した水分に大きく依存する飲水必須の霊長類は、同じ生息地のウマ科と類似するδ¹⁸O値を有する、と予測されます。換言すると、ウマ科は同じ化石群の昼行性のイネ科植物の葉の飲水必須動物にとって、δ¹⁸O値の予測を提供します。そうした値は、人類のウマ科で正規化されたδ¹⁸O値において明らかですが、それは230万年前頃以前のみです(図5A)。この基準標準手法を用いて、人類におけるさまざまな時間的動態が検出され、パラントロプス属とホモ属は230万年前頃にδ¹⁸Oの枯渇した水への移行を示します。ホモ属について本論文では、この変化点はC₄植物食料の急激な忌避と本質的に一致する、と主張されます。形態学的には、脳の大きさが同じ頃(210万年前頃)に急速に拡大し(図5B)、20万年後に大臼歯の大きさの縮小(接触時間の減少を示唆しています)が続きました(図5C)。一部の学者はこの前後の変化の原因を、肉食増加および関連する文化的行動(たとえば、調理や道具使用)と考えています[68]。しかし、230万~160万年前頃の間で肉食増加の動物考古学的証拠はありません。さらに、蒸発した植物の水分の放棄はパラントロプス属とホモ属の両方で起きており(図5A)、ホモ属が何を食べていたのか、という問題を提起します。以下は本論文の図5です。
そうした低いδ¹⁸O値には、3通りの説明があります。第一は、いわゆる水依存[78]、もしくは人類がδ¹⁸Oの枯渇した天水を継続的に飲むことで体内の水分を補充していた、という見解です。人類例外主義の仮定に基づくと、この推論はすべての草原に暮らす霊長類の水依存を見落としています。たとえばヒヒは、ケニアのライキピア(Laikipia)でほぼ毎日天水を飲んでおり、これは同所性のシマウマと同等かそれ以下にはならないδ¹⁸O値をもたらす行動です。したがって、水依存を原因とする問題はその大きさにあり、それ自体は間違っているわけではないものの、人類の摂取量が、ウマ科やヒヒなど他の水依存分類群の割合と比較してずっと不釣り合いと仮定しています。それは水分保持の人類の適応とも一致しません。第二の説明はカバのような行動を想定しており(図4A)、人類は昼行性の沈水と夜行性の草食を行なっていた、とされており(図4B)、この両方の行動は、ライキピアやアフリカ東部全域の他の11ヶ所のカバを含めて、すべてのカバで低いδ¹⁸O値をもたらします。人類の低いδ¹⁸O値についてのこの説明は、節約的な理由で可能性は低そうです。夜行性摂食はのケルコピテコイデス属もしくは類人猿では知られておらず、夜間の陸生のイネ科植物食は、大型ネコ科や他の夜行性捕食者に対する人類の静寂性とは矛盾します。
第三の説明は、周辺の土壌のδ¹⁸Oの枯渇した水を密接に反映している、植物の地下貯蔵器官の水を想定しています。したがって、植物の地下貯蔵器官に基づく食性は、低いδ¹⁸O値をもたらす、と予測され、一部の土壌のモグラネズミ類(モグラネズミやデバネズミ)のウマ科で正規化された値は、230万年前頃以後の一部の人類と区別できません(図5A)。一般的に、モグラネズミ類との同位体収束は経時的に増加し、その後のパラントロプス・ロブストスとホモ属では、それぞれ77%と61%の重複で横ばいになりました。デバネズミはC₄イネ科植物の球根と球茎に依存し、植物の地下貯蔵器官の水分は競合する上述の2通りの説明のどちらよりも人類の低いδ¹⁸O値を適切に説明することになります。
これらの結果の意義は2点です。第一に、ウマ科で正規化されたδ¹⁸O値から、一部の人類は、地上の植物組織を示唆する、高度に蒸発した水を飲んでいたのに対して、他の人類は、植物の地下貯蔵器官を示唆する、δ¹⁸Oの枯渇した水を飲んでいた、と示唆されます。この区別は、地上と地下のイネ科植物の二重の重要性の認識によって、人類進化の対立する関係を調和させる契機となります。第二に、本論文の結果は230万年前頃の重要な食性変化を示しており、初期ホモ属はC₄植物を避けて、δ¹⁸Oの枯渇した水を摂取し始め、これは塊茎に注目を呼ぶ組み合わせです。塊茎はC₃光合成植物と強く関連しており、さらに、C₄植物の球茎と球根はより地下深くにあるため、手だけでは採取困難で、これはより大きな脳の種と関連する認知能力向上および掘削道具を促進した要因です。この違いは、パラントロプス属と初期ホモ属との間の技術的不均衡の可能性を提起し、他の研究者が異なる一連の証拠を用いて主張したように、塊茎がホモ・エレクトス(Homo erectus)の出現を促進した、と主張したくなります。
参考文献:
Fannin LD. et al.(2025): Behavior drives morphological change during human evolution. Science, 389, 6759, 488–493.
https://doi.org/10.1126/science.ado2359
[23]Böhme M. et al.(2019): A new Miocene ape and locomotion in the ancestor of great apes and humans. Nature, 575, 7783, 489–493.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1731-0
関連記事
[50]Yeakel JD. et al.(2007): The isotopic ecology of African mole rats informs hypotheses on the evolution of human diet. Proceedings of the Royal Society B, 274, 1619, 1723-1730.
https://doi.org/10.1098/rspb.2007.0330
関連記事
[68]Organ C. et al.(2011): Phylogenetic rate shifts in feeding time during the evolution of Homo. PNAS, 108, 35, 14555-14559.
https://doi.org/10.1073/pnas.1107806108
関連記事
[78]Cerlinga TE. et al.(2011): Diet of Paranthropus boisei in the early Pleistocene of East Africa. PNAS, 108, 23, 9337-9341.
https://doi.org/10.1073/pnas.1104627108
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●要約
食性変化とそれに対応する形態学的変化は時に同時にではなく連続して変化することがあり、これは行動駆動と呼ばれる進化的過程です。化石記録における行動駆動の検出が困難なのは、対応する形態とは独立して行動を測定することが難しいからです。この問題を解決するために、一部の霊長類の化石記録における分かりづらい行動、つまりイネ科植物の摂食に焦点が当てられました。本論文は化石ケルコピテコイデス属から得られた炭素および酸素同位体比を報告し、このデータを人類の食性進化の観点へと統合して、草食性行動は歯の形態の対応する変化に約70万年先行していた、と分かりました。食性と形態の時間的分離は、食性変化がヒトの進化を促進した、時期の判断と理由の調査に役立ちました。
●研究史
チャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)やジョージ・ゲイロード シンプソン(George Gaylord Simpson)やエルンスト・ウォルター・マイヤー(Ernst Walter Mayr)などは、動物の行動における重要な変化は、新たな形態学的形質の進化を促進する、と主張し、これは行動駆動と呼ばれる仮説です。自然実験によって確証されたように、行動駆動とその結果、つまり、行動形態学的表現型は同時ではなく連続的に進化するかもしれない、との仮説(図1A)は、行動の開始と化石記録における機能的形質の出現との間の遅れを前提とする、一部の指導的な古生物学者の見解を形成してきました。じっさい、地球上の生命の注目すべき瞬間の多くは、四肢動物の出現から人類の二足歩行の起源まで、行動駆動の三稜鏡で検討されてきました。以下は本論文の図1です。
この見解の問題は明確な機序の欠如で、大きな行動変化を引き起こす要因は不明です。エイドリアン・リスター(Adrian Lister)などは、変化する生息条件が行動的革新を強いる場合のような、外的要因を主張しました。他の研究者は、生物がより大きな作用をしている、と示唆し、拡散および/もしくは探索や自身の環境の改変を通じた新たな生息地への活発な拡大など、内的モデルを支持しています。どちらも互いに排他的ではありませんが、高水準の個体の行動のさいが行動駆動の不可欠な前提条件である、との広範な合意があります。この前提には、化石記録では検証可能との利点があり、幹系統におけるより大きな行動多様性を予測します。これは一般的な柔軟な幹仮説として知られており、木の比喩として系統発生を適切に拡張しています。
化石記録における行動駆動の検出には、依然として二つの障害があります。第一に、検討対象の形態学的特徴から独立した方法での、行動の定量化は困難な場合が多くあります。第二に、行動駆動の連続は速度と期間が変わるかもしれず、行動駆動が発生した年代と理由を調べるさいに、計算の均一な年代差引はできません。これらの限界がひじょうに残念なのは、行動変化を駆り立てた既知の要因、つまりマイヤーが述べた「最初の力」が、多くの古人類学者にとっての聖杯探索だからです。
これらの課題を克服するために、霊長類の進化における興味深い行動、つまり、ほとんどの草食性哺乳類に共通する機能的形質である長冠歯および/もしくは精巧な消化管の適応を欠いている場合の、C₄のイネ科型草本植物(つまり、草やスゲ)の消費です。それでも、鮮新世には霊長類において少なくとも3回の大きな草食性への並行した変化があり、それには340万年前頃のケルコピテコイデス属(Cercopithecoides)などのコロブス亜科や、420万年前頃のゲラダヒヒ属などオナガザル亜科や、現代人系統である380万年前頃の人類が含まれます。
これらのうちケルコピテコイデス属は、コロブス亜科の葉食性や植物質を効率的に消化する能力(高く隆起した大臼歯と反芻動物的な嚢状の胃のためです)を考えると、さほど意外ではありません。しかし、コロブス亜科の160万年前頃の草食の試みがケルコピテコイデス属の絶滅で挫折した一方で、その近縁であるオナガザル亜科は低い尖頭(臼状)の大臼歯と単純な胃にも関わらず生き残りました。オナガザル亜科はいくつかの方法でこれらの制約を克服し、その一部は現在、ヒヒ(ヒヒ属)やゲラダヒヒ(Theropithecus gelada)の食性選択において明らかです。これらのサルはイネ科植物を食べるさいに、ひじょうに器用に手を使い、葉や花や種子や地価の貯蔵器官を栄養必要分に応じて分解します。
さらに複雑なのは、初期ホモ属を含めて人類の草食性です。エネルギー需要の増加した脳の大型化した類人猿が、イネ科植物を食べ始めた理由の理解は困難です。イネ科の葉は繊維質で炭水化物は少なく、草食の人類をエネルギー枯渇に追い込むだろう特徴です。イネ科の趣旨はより高品質な食物ですが、その年間利用可能性は4ヶ月未満なので、種子だけではパラントロプス・ボイセイ(Paranthropus boisei)の食性を説明できず、パラントロプス・ロブストスは数年の過程である大臼歯冠の形成期にほぼ100%のC₄植物を摂取していました。この謎の解明は古人類学者にとって優先的課題ですが、研究の進展はC₄植物組織の不可解な性質によって阻まれており、それは、葉か種子か地下貯蔵器官か、あるいはその混合だったのでしょうか?合意が曖昧なのは、炭素安定同位体比(C₄のイネ科植物組織の食性の割合を示唆します)を、異なる時間規模での食物の物理的特性を示す、歯の摩耗痕や形態など頭蓋歯の特徴と一致させる複数の方法があるからです[50]。行動駆動の考慮が有益かもしれないのは、摂食行動と形態を時間的に明示的に切り離す枠組みだからです。
本論文では、鮮新世~更新世アフリカのサバンナ・森林地帯の霊長類進化の文脈における行動駆動の3柱が検証されます。これらの目的の達成のため、(1)以前の分析で代表されていないか標本抽出されていない分類群と時間間隔を対象として、化石標本の炭素および酸素安定同位体が測定され、(2)C₄植物食料における時空間的差異を考慮しながら、行動と形態の年代差引の期間と速度が決定されました。これらの結果の強度はこの研究に関わった者を勇気づけ、行動駆動を始動させたイネ科組織区別のための酸素安定同位体比の利用という、第三の目的へと突き動かしました。
●霊長類の行動の測定
植生が二つの力、つまり、形態へのさまざまな選択圧を及ぼす利用可能性と選好によって形成されることを考えると、C₄植物草食性を引き起こす要因は不明です。実際の摂取量ではなく、食性選好を推定するために、C₄植物の生物量の時空間的差異を考慮して、D = (rᵢₛ − pₛ)/(rᵢₛ + pₛ − 2rᵢₛpₛ)として計算される選択制指数であるJacob’s Dが計算され、ここではrᵢₛはC₄植物摂取の割合(δ¹³C値に基づきます)で、pₛはと基底の生息地におけるC₄植物生物量の推定値です。Jacob’s Dは−1~+1の範囲で変わり、正の値は選好を、負の値は忌避を、0は無作為選択を示唆します。コロブス亜科については、D値の範囲は無関心から嫌悪までとなり、わずかな個体のみがC₄植物選好を示します。逆に、ゲラダヒヒ属は420万年前頃に始まる過剰選択へと向かう傾向を示したものの(図2A)、この結果は基幹ヒヒ族(papionine)であるプリオパピオ属(Pliopapio)と類似した食性を過程しています。おそらくは推測にすぎませんが、これは鮮新世~更新世のアフリカ全域のあらゆるC₄植物草食性の祖先状態を反映しています。人類は強いC₄植物食料の選好の同様の軌跡をたどりましたが、その傾きは230万年前頃に急激に変化しました(図2B)。以下は本論文の図2です。
本論文の調査結果は、鮮新世~更新世において一部の霊長類がC₄植物食料を摂取していた、との見解を確証します。同時に本論文の分析は、一部の種がその利用可能性に対して過剰な寄り合いのC₄植物を対象としていた、との選好の論証によって、霊長類の草食性に関する理解を深めます。この結果は、非木質被覆率もしくはC₄植物の利用可能な割合を推定するための、古土壌炭酸塩などC₄植物生物量の代替指標に対して堅牢です。さらに、本論文の分析は230万年前頃の人類におけるC₄植物選好の逆転を明らかにしますが、この単系統群水準の調査結果は、分類群と系統の間の重要な食性の区別を曖昧にします。パラントロプス属とホモ属のJacob’s Dの解析は、230万年前頃のパラントロプス・ロブストスとホモ属におけるC₄植物食料への急激な嫌悪を明らかにしましたが、アフリカ東部のパラントロプス属ではC₄植物食料への急激な嫌悪は明らかになりませんでした。
●行動駆動の裏づけ
行動変化が確証されたので、行動形態学的年代差引についての検証のため、歯の形態学的差異が注目されました。M₃Lに焦点が当てられたのは、データが文献で容易に利用可能で、破砕理論がM₃Lでの草食性による選択を予測しているからです。さらに、イネ科は硬く、食塊形成に対して比較的耐性があるので、より長いM₃では咀嚼中の食料破砕確率が高くなると予測され、これは接触効率性の重要な構成要素です。もう一つの理由は、内因性植物化石や外因性の砂粒を含めて、珪酸質粒子の出現率と関わっています。珪酸は歯の摩耗の主因なので、より長いM₃はイネ科による摩耗への大勢が強い、と予測されます。これらの予測を検証するために、体重による違いを制御した後で、現生有蹄類と霊長類のイネ科食性でM₃Lが変わる、と分かりました。イノシシ科はこのパターンを例証しており、M₃Lは草食性に急速に対尾えして進化しています。草食性のイノシシ科の大臼歯は、予測より約2cm長くなっています。この形態と機能の関係の古さを検証するために、化石イノシシ科についての刊行されたデータが集められました。図1BはC₄イネ科食性増加と、最初の遅延後のM₃Lの急激な加速を示しており、これは行動駆動の予測に適合し、長鼻類についての刊行されている調査結果をよく反映しています(図1C)。
霊長類に戻り、C₄植物の選好とM₃Lとの間の経時的共変動が記入され、有意な変化点値の存在に応じて線形回帰もしくは中止点回帰のどちらかに当てはめられました。オナガザル亜科のM₃Lで増加が検出されましたが、C₄植物選好は検出されませんでした。どちらの字形れでも統計的変化点は観察されず、これは行動駆動の証拠を除外します。対照的に、ゲラダヒヒ属のM₃Lは440万~330万年前頃にかけて急激に増加し(プリオパピオ属的な幹M₃Lを仮定した場合)、330万~50万年前頃にはより緩やかに増加しました。330万年前頃の形態学的変化点は420万年前頃の推定される行動的変化点より遅れており(図2A)、その後で350万年前頃の形態学的適応が続きました。変化点間の差を計算すると、約90万年の行動と形態の年代の差引が得られました(M₃のCIは120万~70万年)。人類のM₃Lも経時的に増加しましたが、変化点は160万年前頃でした(図2D)。しかし、この変化てんは130万年前頃となる化石記録からのパラントロプス属の消滅に影響を受けています。その後のホモ属については、急激な食性変化、つまりC₄植物選好の逆転が検出され、これは70万年前頃以後のM₃Lの急速な縮小を説明できるかもしれません。長鼻類と同様に、砂塵形成として知られる、イネ科植物の表面に容易に補足される、環境中の砂塵の水準増加は、230万年前頃以前の大臼歯の長さに寄与した要因だった可能性が高そうです。
既存文献では標準的ですが、年代分析では進化速度における系統発生の差異が無視され、向上進化が仮定されます。この限界に対処するために、充分に解明された系統発生[68]を使用し、利用可能な体重推定値のある種に焦点を当てて、人類の部分集合で行動および形態学的進化の根底にある速度が計算されました。予測されたように、行動進化の速度はC₄イネ科植物食になった幹系統間ではより速く、体重に対して絶対的(図2E)もしくは相対的のどちらでも、M₃が長くなることに先行しました。この結果から、パラントロプス属とホモ属につながった、推定される2系統のアウストラロピテクス属の子孫系列の、狭く焦点を当てた年代分析が行なわれました。両系列で形態学ぶと年代の差引が検出され、これは、行動変化の創始者としてのアウストラロピテクス属の役割を浮き彫りにします。230万年前頃のホモ属の行動と形態の分岐にも、強い注目が集まります。
これら補完的な調査結果は行動駆動の予測を支持しますが、予測される前提条件、つまりイネ科植物食を生み出した系統における高水準の行動の差異には触れていません。この柔軟な幹仮説を検証するために、人類系統内の食性差異のブートストラップ係数が計算されました。この実行は、幹系統のより大きな柔軟性を確証します。たとえば、中期鮮新世のアウストラロピテクス属の食性多様性は、パラントロプス・ボイセイと初期ホモ属よりもそれぞれ約29%と約22%高くなりました(図3A)。この分岐分類学的調査結果が潜在的な地理的差異に対して堅牢であることを確認するために、東アフリカ地溝帯の時空間単位にわたって、個々の人類系統のCVが記入されました。再度、柔軟な幹の証拠が骨狩り、食性柔軟性の頂点は230万年前頃となる単系統群水準の行動変化に先行します(図3B)。以下は本論文の図3です。
これらの調査結果の意義は3点です。第一に、食性の変化は歯の形態の変化に先行していた、と示されます。第二に、行動と形態の年代の差引は数百万年に及ぶかもしれない、と示されます。第三に、本論文の結果から、初期ホモ属は230万年前頃に、C₄植物食料を忌避し始めた、と示唆され、これはδ¹³C値のみでは検出が困難な行動変化です。
●人類のイネ科植物食の明瞭化
行動駆動を促進したイネ科組織の種類を特定するために、δ¹⁸O値の差異に焦点が当てられました。図4は、共存するイネ科種がどのような均一なδ¹³C値および異なるδ¹⁸O値を有するのか、示しています。一般的に、消費者のδ¹⁸O値は食料源の水の値を反映しており、これは時空間的に大きく変動するため、δ¹⁸O値のみから化石記録で摂食行動を有意義に推測もしくは比較することは困難です。この問題を克服するためにδ¹⁸O値がウマ科へと正規化され、それはウマ科のδ¹⁸O値が人類と確実に同年代だからです。さらに、ウマ科は水準基標もしくは基準分類群を表しており、それは、ウマ科が代表的なイネ科植物食で、後期中新世移行に牧草地の生態的地位を占めており、必須飲水動物だからで、それが意味するのは、ウマ科が絶えず天水で体内を補充していることです。これら2点の行動によって体内の水は混合し、それは、δ¹⁸Oが枯渇した水と、イネ科植物から蒸発した水、つまり、日中のδ¹⁸Oの蒸発による損失に起因してδ¹⁸Oが増加した水です(図4)。次に、これらの動態から、乾燥度と共変し、イネ科植物のC₃もしくはC₄経路とは関係ない、ウマ科のδ¹⁸O値における予測可能な水とエナメル質の差引が得られます。したがって、ウマ科は時空間規模でδ¹⁸Oの比較の標準的な参照を提供します。以下は本論文の図4です。
地上のイネ科植物組織、およびその中の蒸発した水分に大きく依存する飲水必須の霊長類は、同じ生息地のウマ科と類似するδ¹⁸O値を有する、と予測されます。換言すると、ウマ科は同じ化石群の昼行性のイネ科植物の葉の飲水必須動物にとって、δ¹⁸O値の予測を提供します。そうした値は、人類のウマ科で正規化されたδ¹⁸O値において明らかですが、それは230万年前頃以前のみです(図5A)。この基準標準手法を用いて、人類におけるさまざまな時間的動態が検出され、パラントロプス属とホモ属は230万年前頃にδ¹⁸Oの枯渇した水への移行を示します。ホモ属について本論文では、この変化点はC₄植物食料の急激な忌避と本質的に一致する、と主張されます。形態学的には、脳の大きさが同じ頃(210万年前頃)に急速に拡大し(図5B)、20万年後に大臼歯の大きさの縮小(接触時間の減少を示唆しています)が続きました(図5C)。一部の学者はこの前後の変化の原因を、肉食増加および関連する文化的行動(たとえば、調理や道具使用)と考えています[68]。しかし、230万~160万年前頃の間で肉食増加の動物考古学的証拠はありません。さらに、蒸発した植物の水分の放棄はパラントロプス属とホモ属の両方で起きており(図5A)、ホモ属が何を食べていたのか、という問題を提起します。以下は本論文の図5です。
そうした低いδ¹⁸O値には、3通りの説明があります。第一は、いわゆる水依存[78]、もしくは人類がδ¹⁸Oの枯渇した天水を継続的に飲むことで体内の水分を補充していた、という見解です。人類例外主義の仮定に基づくと、この推論はすべての草原に暮らす霊長類の水依存を見落としています。たとえばヒヒは、ケニアのライキピア(Laikipia)でほぼ毎日天水を飲んでおり、これは同所性のシマウマと同等かそれ以下にはならないδ¹⁸O値をもたらす行動です。したがって、水依存を原因とする問題はその大きさにあり、それ自体は間違っているわけではないものの、人類の摂取量が、ウマ科やヒヒなど他の水依存分類群の割合と比較してずっと不釣り合いと仮定しています。それは水分保持の人類の適応とも一致しません。第二の説明はカバのような行動を想定しており(図4A)、人類は昼行性の沈水と夜行性の草食を行なっていた、とされており(図4B)、この両方の行動は、ライキピアやアフリカ東部全域の他の11ヶ所のカバを含めて、すべてのカバで低いδ¹⁸O値をもたらします。人類の低いδ¹⁸O値についてのこの説明は、節約的な理由で可能性は低そうです。夜行性摂食はのケルコピテコイデス属もしくは類人猿では知られておらず、夜間の陸生のイネ科植物食は、大型ネコ科や他の夜行性捕食者に対する人類の静寂性とは矛盾します。
第三の説明は、周辺の土壌のδ¹⁸Oの枯渇した水を密接に反映している、植物の地下貯蔵器官の水を想定しています。したがって、植物の地下貯蔵器官に基づく食性は、低いδ¹⁸O値をもたらす、と予測され、一部の土壌のモグラネズミ類(モグラネズミやデバネズミ)のウマ科で正規化された値は、230万年前頃以後の一部の人類と区別できません(図5A)。一般的に、モグラネズミ類との同位体収束は経時的に増加し、その後のパラントロプス・ロブストスとホモ属では、それぞれ77%と61%の重複で横ばいになりました。デバネズミはC₄イネ科植物の球根と球茎に依存し、植物の地下貯蔵器官の水分は競合する上述の2通りの説明のどちらよりも人類の低いδ¹⁸O値を適切に説明することになります。
これらの結果の意義は2点です。第一に、ウマ科で正規化されたδ¹⁸O値から、一部の人類は、地上の植物組織を示唆する、高度に蒸発した水を飲んでいたのに対して、他の人類は、植物の地下貯蔵器官を示唆する、δ¹⁸Oの枯渇した水を飲んでいた、と示唆されます。この区別は、地上と地下のイネ科植物の二重の重要性の認識によって、人類進化の対立する関係を調和させる契機となります。第二に、本論文の結果は230万年前頃の重要な食性変化を示しており、初期ホモ属はC₄植物を避けて、δ¹⁸Oの枯渇した水を摂取し始め、これは塊茎に注目を呼ぶ組み合わせです。塊茎はC₃光合成植物と強く関連しており、さらに、C₄植物の球茎と球根はより地下深くにあるため、手だけでは採取困難で、これはより大きな脳の種と関連する認知能力向上および掘削道具を促進した要因です。この違いは、パラントロプス属と初期ホモ属との間の技術的不均衡の可能性を提起し、他の研究者が異なる一連の証拠を用いて主張したように、塊茎がホモ・エレクトス(Homo erectus)の出現を促進した、と主張したくなります。
参考文献:
Fannin LD. et al.(2025): Behavior drives morphological change during human evolution. Science, 389, 6759, 488–493.
https://doi.org/10.1126/science.ado2359
[23]Böhme M. et al.(2019): A new Miocene ape and locomotion in the ancestor of great apes and humans. Nature, 575, 7783, 489–493.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1731-0
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[50]Yeakel JD. et al.(2007): The isotopic ecology of African mole rats informs hypotheses on the evolution of human diet. Proceedings of the Royal Society B, 274, 1619, 1723-1730.
https://doi.org/10.1098/rspb.2007.0330
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[68]Organ C. et al.(2011): Phylogenetic rate shifts in feeding time during the evolution of Homo. PNAS, 108, 35, 14555-14559.
https://doi.org/10.1073/pnas.1107806108
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[78]Cerlinga TE. et al.(2011): Diet of Paranthropus boisei in the early Pleistocene of East Africa. PNAS, 108, 23, 9337-9341.
https://doi.org/10.1073/pnas.1104627108
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