大相撲名古屋場所千秋楽

 今場所注目していたのは、新横綱の大の里関、名古屋場所の会場が昨年(2024年)までの愛知県体育館から愛知国際アリーナに変わったこと、大栄翔関と霧島関と若隆景関にとっての大関昇進の足場固め(大栄翔関と霧島関は13勝以上での優勝ならば、今場所後の大関昇進もあるかな、と場所前には予想していました)、新入幕から2場所連続で二桁勝利の安青錦関が幕内上位でどこまで通用するのか、などで、場所前にはいつもより楽しみにしていました。しかし、場所前に大栄翔関の休場が発表され、安定して実力を発揮し、幕内優勝経験もあるだけに、残念でした。

 新横綱の大の里関は、強さと弱点の両方をはっきりと見せた感じで、その力強さで一気に勝つことが多いものの、一気に勝負を決められないと、安易に引いて負けてしまいますし、疲労のためか、土俵際の詰めの甘さも終盤には目立ちました。過去の大横綱も苦戦傾向だっただけに、新横綱の場所で優勝は難しいかな、とは予想していましたが、13日目に優勝争いから脱落し、何とか二桁は勝ったものの、11勝4敗で場所を終え、残念でした。やはり、新横綱の場所の調整は難しいのでしょうか。こうした課題は依然としてありますが、好意的に考えると、まだ成長の余地があるとも言えるわけで、大の里関は対応力が高いだけに、今後に期待したいところです。大の里関は私が現在最も贔屓にしている力士なので、つい甘い見方になってしまいますが。ついでに、大の里関の美点を一つ挙げると、立ち会いで両手をついて相手を待っており、余計な駆け引きをしないように見えるところです。横綱として3場所目となる豊昇龍関は、初日に勝って好調なのかな、と思いましたが、2日目から3連敗で、5日目から休場となりました。横綱昇進時の成績が物足りなかっただけに、色々と言われるでしょうが、来場所での巻き返しを期待しています。

 優勝争いは、13日目を終えて安青錦関と琴勝峰関が2敗で首位を並走する、予想外の展開となりました。とくに安青錦関は、先場所の活躍を見て将来の大関さらには横綱候補として期待していましたが、幕内上位でのここまでの活躍には本当に驚きました。安青錦関は勢いで勝っているのではなく、相撲内容がしっかりしており、急激に成長しているように見えます。やはり、「相撲偏差値が高い」と言われていた、安治川親方(安美錦関)の指導が優れているのでしょうか。この点で、「相撲偏差値が低い」とも揶揄されていた二所ノ関親方(稀勢の里関)の大の里関への指導に疑問も抱いてしまいます。

 千秋楽を迎えた時点で、優勝争いは2敗の琴勝峰関と3敗の安青錦関および新入幕の草野関に絞られ、三役経験のない平幕力士の優勝が確定しました。巴戦の可能背もあった千秋楽は、まず琴勝峰関と安青錦関が対戦し、琴勝峰関が突き落としで安青錦関に勝ち、初優勝を決めました。草野関は高安関と対戦し、突き出されて負け、11勝4敗で場所を終えました。琴勝峰関は、2年前(2023年)の初場所で貴景勝関との相星決戦に負けて優勝を逃し、まだ経験の浅い安青錦関が硬くなっていたように見えただけに、相星決戦の経験が千秋楽には活かされていたように思います。琴勝峰関2年前の初場所での相星決戦後、怪我もあり低迷し、十両陥落も経験していて、先場所も途中休場で負け越していただけに、今場所の活躍は本当に意外でした。ただ、これまで平幕上位での最高の成績は西前頭5枚目での8勝7敗で、今場所も東前頭15枚目での優勝ですから、次の大関候補に挙げるのは時期尚早と考えています。草野関は大器と言われており、新入幕でこの活躍は見事で、幕内上位でどれだけ通用するのか、注目しています。

 優勝を逃したとはいえ、まだ負け越しがなく、新入幕から3場所連続で11勝4敗とした安青錦関への期待は大きく、現在唯一の大関である琴櫻関が、今場所も何とか勝ち越したものの8勝7敗と不振だったので、近いうちに大関に昇進するよう、期待しています。その大関争いでは、上述のように大栄翔関が全休で一旦脱落となり、霧島関は8勝7敗で、来場所後の大関昇進には13勝以上での優勝が要求されそうですが、若隆景関は7日目まで4敗と不振だったものの、その後盛り返して10勝5敗で場所を終えました。若隆景関はこれで、小結の先場所が12勝、関脇の今場所が10勝となり、来場所は12勝以上ならば文句なしで、11勝でも内容がよければ大関昇進となりそうです。ただ、若隆景関は今場所もそうでしたが、大怪我の前から前半は不振の傾向があるだけに、大関昇進のかかる来場所も前半が鍵となるでしょう。玉鷲関は11勝4敗で場所を終え、3回目の殊勲賞と大活躍で、40歳でのこの活躍は本当に立派ですし、嬉しいものです。玉鷲関の来場所の三役復帰は難しいように思いますが、九州場所での三役復帰を期待しています。

 先場所の前からすでに週刊誌で報道されていましたが、元横綱の白鵬関の宮城野親方が先場所後に相撲協会を退職し、現役時代の実績のみならず、相撲に関する見識や人脈も優れており、相撲の普及に貢献していた(有望な少年を早期に抑えておくという、「私欲」もあったでしょうが)だけに、たいへん残念です。元宮城野親方の部屋の運営に問題があったことは否定できず、他の親方の事例からもとくに厳しい処分ではなかった、との見解もあるようですが、正直なところ、主流派?の親方と比較してずっと厳しい処分だったように思います。現在の相撲協会の執行部には、元宮城野親方を現役時代から嫌っていた親方が多いようで、そうした親方の主導によって元宮城野親方を退職に追い込んでいった感があります。相撲協会の執行部は、元貴乃花親方の現状から、相撲協会を離れた元宮城野親方に大したことはできないだろう、と楽観しているのかもしれませんが、相撲協会にとっては元貴乃花親方の退職よりもずっと大きな打撃となるでしょう。元宮城野親方にとっても、相撲協会にいる方ができることは多そうに思いますが、こうなってしまっては、相撲協会にいてはやりにくいことで、相撲界に貢献するよう期待しています。

この記事へのコメント