シルル紀の軟体動物
取り上げるのが遅れてしまいましたが、シルル紀の軟体動物に関する研究(Sutton et al., 2025)が公表されました。軟体動物門は種数が2番目に多い動物門ですが、その初期進化の道筋は完全には解明されておらず、長らく論争の的でした。長期にわたって存在してきたこのきわめて多様な動物群の過去の形態のうち、現代の動物相に残っているものはごくわずかです。最近の解析において、軟体動物は一貫して根本から2つの姉妹クレード(単系統群)に分かれることが示されています。一方は、腹足類や二枚貝類、頭足類などを含む貝殻亜門(Conchifera)で、もう一方は、多板類(「ヒザラガイ類」)と無板類から構成されるアキュリフェラ(Aculifera)類です。
軟体動物の進化は全体としてボディープランの特徴に見られる可塑性によって特徴づけられますが、アキュリフェラ類はこれまで、より保守性が高いと解釈されてきました。わずかに存在する古生代初期の完全に保存されたアキュリフェラ類化石やアキュリフェラ類に似た動物の化石は、概して移行期の形態とみなされ、現生の多板類と無板類の体の形態に見られる対照的な特徴に関する疑問に情報を与える、と考えられてきました。初期のアキュリフェラ類の歴史と、この動物群が占めていた形態的・生態的な範囲に関しては、まだ充分な標本数が得られていません。
本論文は、イギリスのヘレフォードシャー(Herefordshire)州の化石鉱脈から出土した、三次元的に保存されているシルル紀のアキュリフェラ類の新種2種を報告します。これらは、このクレードの形態的・生態的な範囲を大幅に拡張します。系統発生解析の結果、これら2種は分類群の複雑な集合の内部に位置づけられ、殻の存在や足の性質など、基本的な特徴の状態の逆転が示唆されました。形態的保守性という従来の仮説とは対照的に、初期のアキュリフェラ類の進化は、他のクラウン群軟体動物の多様化に匹敵するほど多数の独特な形態を生み出していたようです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:パンクとエモの化石が軟体動物進化の理解を揺るがす
Punk feroxとEmo vorticaudumと名付けられた、新たに記載された2種の軟体動物は、初期の軟体動物がこれまで考えられていたよりも多様であったことを示している。今週のNature に掲載されるこのトゲトゲしたミミズのような化石に関する論文は、イギリスのヘレフォードシャー州(Herefordshire)で発見されたもので、約4億3,000万年前のものである。
軟体動物は、動物界で2番目に種の多い動物門であるが、その初期の進化の詳細は完全には解明されていない。これら2つの新しい軟体動物の化石が発見されたことで、この生物群の知られている多様性を広げるものである。
標本は、ヘレフォードシャーのシルル紀(Silurian)堆積物から発見されたもので、有棘類(〔ゆうきょくるい〕;Aculifera)と呼ばれる軟体動物の亜群に属する。Mark Suttonらの報告によると、これらの標本には特徴的な棘やその他の特徴があり、これまで報告されてきた初期の軟体動物とは一線を画しているという。一方は、そのトゲトゲの「髪型」がパンクロック運動を連想させることからPunk(パンク)と名付けられ、もう一方は、長いフリンジのようなトゲと、エモという音楽ジャンルに関連するスタッズのついた服に似た殻を持つことからEmo(エモ)と名付けられた、と著者らは提案している。両化石の特徴は、これまでに記載された有棘類とは異なっている。
この発見は、初期の有棘類の軟体動物は、現代の軟体動物よりも多様なグループであったことを示唆しており、軟体動物の進化の歴史に新たな洞察を与えるものである、と著者らは結論づけている。
参考文献:
Sutton MD. et al.(2025): New Silurian aculiferan fossils reveal complex early history of Mollusca. Nature, 637, 8046, 631–636.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08312-0
軟体動物の進化は全体としてボディープランの特徴に見られる可塑性によって特徴づけられますが、アキュリフェラ類はこれまで、より保守性が高いと解釈されてきました。わずかに存在する古生代初期の完全に保存されたアキュリフェラ類化石やアキュリフェラ類に似た動物の化石は、概して移行期の形態とみなされ、現生の多板類と無板類の体の形態に見られる対照的な特徴に関する疑問に情報を与える、と考えられてきました。初期のアキュリフェラ類の歴史と、この動物群が占めていた形態的・生態的な範囲に関しては、まだ充分な標本数が得られていません。
本論文は、イギリスのヘレフォードシャー(Herefordshire)州の化石鉱脈から出土した、三次元的に保存されているシルル紀のアキュリフェラ類の新種2種を報告します。これらは、このクレードの形態的・生態的な範囲を大幅に拡張します。系統発生解析の結果、これら2種は分類群の複雑な集合の内部に位置づけられ、殻の存在や足の性質など、基本的な特徴の状態の逆転が示唆されました。形態的保守性という従来の仮説とは対照的に、初期のアキュリフェラ類の進化は、他のクラウン群軟体動物の多様化に匹敵するほど多数の独特な形態を生み出していたようです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:パンクとエモの化石が軟体動物進化の理解を揺るがす
Punk feroxとEmo vorticaudumと名付けられた、新たに記載された2種の軟体動物は、初期の軟体動物がこれまで考えられていたよりも多様であったことを示している。今週のNature に掲載されるこのトゲトゲしたミミズのような化石に関する論文は、イギリスのヘレフォードシャー州(Herefordshire)で発見されたもので、約4億3,000万年前のものである。
軟体動物は、動物界で2番目に種の多い動物門であるが、その初期の進化の詳細は完全には解明されていない。これら2つの新しい軟体動物の化石が発見されたことで、この生物群の知られている多様性を広げるものである。
標本は、ヘレフォードシャーのシルル紀(Silurian)堆積物から発見されたもので、有棘類(〔ゆうきょくるい〕;Aculifera)と呼ばれる軟体動物の亜群に属する。Mark Suttonらの報告によると、これらの標本には特徴的な棘やその他の特徴があり、これまで報告されてきた初期の軟体動物とは一線を画しているという。一方は、そのトゲトゲの「髪型」がパンクロック運動を連想させることからPunk(パンク)と名付けられ、もう一方は、長いフリンジのようなトゲと、エモという音楽ジャンルに関連するスタッズのついた服に似た殻を持つことからEmo(エモ)と名付けられた、と著者らは提案している。両化石の特徴は、これまでに記載された有棘類とは異なっている。
この発見は、初期の有棘類の軟体動物は、現代の軟体動物よりも多様なグループであったことを示唆しており、軟体動物の進化の歴史に新たな洞察を与えるものである、と著者らは結論づけている。
参考文献:
Sutton MD. et al.(2025): New Silurian aculiferan fossils reveal complex early history of Mollusca. Nature, 637, 8046, 631–636.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08312-0
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