革新的な形質の不安定さによる多様化の促進

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、革新的な形質の不安定さによる多様化の促進に関する研究(Peoples et al., 2025)が公表されました。系統が多様化する速度は生命の系統樹全体で大きく異なりますが、それは多くの場合、進化的新機軸によるものです。新たな形質を生み出す能力はクレード(単系統群)間で異なり、生態学的移行を引き起こす可能性もあるが、大進化の規模で新機軸が進化する速度の差によってもたらされる影響は、これまで見過ごされてきました。

 複雑な歯は、主要な脊椎動物系統の進化的成功に寄与した新機軸の一つです。本論文は、条鰭類魚類では、歯の複雑性そのものではなく、その進化的不安定性が急速な多様化を促進することを明らかにします。単純な歯と複雑な歯の間の移行が急速に起こる場合、種分化速度は5倍になる、と分かりました。本論文は、アフリカのカワスズメ科魚類(シクリッド類)が全ての魚類の中でも特殊で、単純な歯と複雑な歯の間の移行は他に類のない速さで起きた系統が大部分を占めている、と明らかにしました。この新機軸は、複雑な歯の生態学的柔軟性と相互に作用して、マラウイ湖とビクトリア湖とバロンビンボ湖で急速な適応放散を促進しました。

 多様化に対するこうした顕著な影響は、歯の複雑性と微小生息地や餌との緊密な関連に起因している。こうした知見は、新機軸の進化の仕方における系統発生学的変動が、新機軸そのものよりも、多様化のパターンに強い影響を及ぼし得ることを示しています。この新しい視点から新機軸の影響を調べることで、おそらくさらに多くの形質が、生命の系統樹における多様化速度の不均一化に関係づけられるでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:重要な新機軸の進化的不安定性が急速な多様化を促進する

進化学:革新的な形質の不安定さが多様化を促進する

 今回、アフリカの湖沼におけるカワスズメ科魚類(シクリッド類)の爆発的な種分化は、それらの歯が単尖頭と多尖頭という2つの状態の間でどれだけ容易に進化し得るかに関係することが分かった。多様化に対するこの顕著な影響は、歯の複雑性そのものではなく、歯の複雑性と微小生息地や餌との緊密な関連に起因している。



参考文献:
Peoples N. et al.(2025): Evolutionary lability of a key innovation spurs rapid diversification. Nature, 639, 8056, 962–967.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08612-z

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