社会的恒常性の基盤
取り上げるのが遅れてしまいましたが、社会的恒常性の基盤エピに関する研究(Liu et al., 2025)が公表されました。ヒトを含めた多くの動物種において、社会的な集団形成は生存に有利に作用します。逆に、社会的隔離は、「孤独」という有害な状況を作り出し、それによって他者との接触を求める動機が高まり、再会時に社会的相互作用が増えます。社会的相互作用において観察される、孤独によって誘発されるこの揺り戻し現象は、空腹や渇きや睡眠などの生理的動因と同様に、恒常性維持の仕組みが社会的欲求の制御の根底にあることを示唆しています。
本研究はまず、複数のマウス系統で社会的隔離への行動反応を比較し、FVB/NJ系が特に高い感受性を、C57BL/6J系は中程度の感受性を示す、と明らかにしました。これらのマウス系統を用いて、視床下部の視索前核に存在するこれまで特性が明らかにされていなかった神経細胞の2群が、それぞれ社会的隔離時と社会的揺り戻し時に活性化し、社会的欲求の喚起と充足に対応した行動を協調的に制御している、と示されました。これら神経細胞の2群は互いに直接結合しており、社会的行動・情動状態・報酬・生理的要求と関連した脳領域ともつながっていました。
また、マウスが他者の存在を評価し、社会的要求を満たすには、接触が必要であることも示されました。これらの結果は、社会的恒常性を支える全脳的な神経系の存在を示し、生得的な社会的要求を制御する神経回路の性質とその機能に関して、また、社会的文脈に関連する健常な脳状態と病的な脳状態についての理解に、機構的な手がかりを与えます。ヒトも社会性動物なので、その点でも注目される研究です。ヒトとマウスの違いを解明していけば、現代人に固有の社会性の生物学的基盤の解明に役立つのではないか、と期待されます。
参考文献:
Liu D. et al.(2025): A hypothalamic circuit underlying the dynamic control of social homeostasis. Nature, 640, 8060, 1000–1010.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08617-8
本研究はまず、複数のマウス系統で社会的隔離への行動反応を比較し、FVB/NJ系が特に高い感受性を、C57BL/6J系は中程度の感受性を示す、と明らかにしました。これらのマウス系統を用いて、視床下部の視索前核に存在するこれまで特性が明らかにされていなかった神経細胞の2群が、それぞれ社会的隔離時と社会的揺り戻し時に活性化し、社会的欲求の喚起と充足に対応した行動を協調的に制御している、と示されました。これら神経細胞の2群は互いに直接結合しており、社会的行動・情動状態・報酬・生理的要求と関連した脳領域ともつながっていました。
また、マウスが他者の存在を評価し、社会的要求を満たすには、接触が必要であることも示されました。これらの結果は、社会的恒常性を支える全脳的な神経系の存在を示し、生得的な社会的要求を制御する神経回路の性質とその機能に関して、また、社会的文脈に関連する健常な脳状態と病的な脳状態についての理解に、機構的な手がかりを与えます。ヒトも社会性動物なので、その点でも注目される研究です。ヒトとマウスの違いを解明していけば、現代人に固有の社会性の生物学的基盤の解明に役立つのではないか、と期待されます。
参考文献:
Liu D. et al.(2025): A hypothalamic circuit underlying the dynamic control of social homeostasis. Nature, 640, 8060, 1000–1010.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08617-8
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