大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22回「小生、酒上不埒にて」

 今回は、前回拗ねてしまった恋川春町(倉橋格)を中心に話が展開しました。蔦屋重三郎は春町に執筆を促しますが、説得に失敗します。春町の真意は、朋誠堂喜三二(平沢常富)と喜多川歌麿(唐丸、捨吉、雄助)が春町を訪ねたさいに明かされ、春町は北尾政演(山東京伝)の才能に遠く及ばない、と自覚し、戯作の世界にいること嫌気がさしたわけです。しかし、大田南畝(四方赤良)は皮肉という春町の新たな才能に気づき、重三郎はそれを活かして執筆するよう勧めます。春町は執筆に復帰し、北尾政演(山東京伝)とも和解します。まあ、ここで重三郎と手切れしていた方が、春町にとってはよかったのかもしれませんが。

 蝦夷地開発をめぐる田沼家の策謀に誰袖(かをり)も関わることになり、その縁で重三郎と田沼意知が再会し、重三郎はここで初めて意知の身元を知ります。平賀源内の退場後は吉原と幕閣の直接的なつながりが薄れていただけに、なかなか上手く構成されていると思います。今回は、松前道廣の弟で、松前藩の家老である松前廣年が初登場となり、誰袖は松前廣年を篭絡し、そこから抜け荷の証拠をつかもうとします。誰袖は本作では瀬以(花の井、五代目瀬川)の後継者的役割を担っていますが、瀬以よりも強かなところを前面に出しています。今後、誰袖には瀬以よりも苛酷な運命が待ち受けているかもしれず、この点も注目されます。

 人真似ばかりでは面白くないだろう、と春町に指摘された喜多川歌麿(唐丸、捨吉、雄助)が、一瞬微妙な表情を浮かべたのは、今後の重三郎と歌麿との関係で重要になってくるかもしれません。今後終盤まで、本作の人間関係で最も重要なのは重三郎と歌麿でしょうから、その点でも注目されます。本作で東洲斎写楽がどう描かれるのか、まだほとんどまったく情報が明かされていませんが、重三郎と歌麿の関係が大きく関わってくるのではないか、と予想しています。重三郎は唐丸(歌麿)を謎の絵師として売り出したい、と語っており、これは写楽を想起させます。写楽については、阿波藩お抱えの能役者である斎藤十郎兵衛と同一人物とするのが現在では有力説で、本作でも斎藤十郎兵衛をまったく無視はしないでしょうが、歌麿が写楽と深く関わる可能性は低くないように思います。

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