大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回「我こそは江戸一利者なり」

 今回は、蔦屋重三郎の日本橋進出へと至る過程が描かれました。耕書堂の経営は順調で、重三郎は田沼意次に重用され蓄財に励んでいる土山宗次郎から、資金援助するので日本橋に出店するよう勧誘されます。しかし、養子の重三郎を吉原から離れさせたくない駿河屋市右衛門は不機嫌なようで、重三郎も自分を縛りつけてくる養父に対して不満が高まっているようです。本作では重三郎の実父がまだ登場しておらず、すでに今後の登場が公表されている実母とは異なり、登場の予定が明かされていませんが、本作では重三郎と駿河屋市右衛門との間で父子の葛藤と愛憎が描かれるのでしょうか。

 田沼意知から蝦夷地開発に協力するよう要請された重三郎は断りましたが、誰袖(かをり)と大文字屋市兵衛は、田沼家が画策する蝦夷地開発と関わる抜け荷の証拠を得ようとします。誰袖はそのために、松前藩の藩主である松前道廣の弟で家老である松前廣年を誑かすわけですが、これで吉原と幕閣政治が直接的につながってきます。本作は吉原を中心とした江戸市中と幕閣政治との二元構成になっていますが、身分社会の江戸時代において両者が上手く接続されており、なかなか優れた構成になっているように思います。佐野政言は重三郎の案内で土山宗次郎と大田南畝(四方赤良)に会ったものの、洒落た場とは合わないようで、初登場時には不気味な人物のように思えましたが、凡人で不器用なだけなのかもしれません。佐野政言の老父も登場したのは、佐野政言が本作では重要な役割を担うからでしょうか。若元春関と遠藤関と錦木関も力士役で登場しまたが、短時間でした。さすがに現役の関取を長時間拘束するのは難しそうですが、相撲も江戸文化では重要になるので、再登場があるかもしれません。

 重三郎は日本橋への出店を強く望みながらも、自分の力不足を痛感しており、吉原との関係からも日本橋進出を躊躇います。その重三郎を後押ししたのは須原屋市兵衛で、本作の須原屋市兵衛は主人公の重三郎にとっての導き手として重要な役割を担っています。日本橋への進出を決意した重三郎にとって好都合なことに、日本橋では鶴屋の向かいの版元である丸屋が店を畳んで譲ることになりますが、婿を迎えていた先代の娘である「てい」は、吉原の耕書堂には絶対に売りたくない、と鶴屋喜右衛門に伝えます。「てい」は今回が初登場となりますが、後に重三郎の妻となることがすでに公表されています。「てい」と重三郎がどのような経緯で結婚するのかは次の山場となりそうで、どのように描かれるのか、注目しています。

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