大相撲夏場所千秋楽

 今場所最大の注目は大の里関の横綱昇進で、最近になって大の里関を応援することに決めたので、私もいつもより強い期待と不安を抱きながら、今場所を迎えました。大の里関はこれまで優勝の翌場所がいずれも9勝だったうえに、場所前には不調が伝えられていたので、今年(2025年)初場所で横綱昇進に挑みながら負け越した琴櫻関のように、来場所は初の角番を迎えるのではないか、とかなり不安でした。

 大の里関は初日に先場所負けている若元春関と対戦し、若元春関は実力者だけに今場所の調子を見るうえでたいへん注目していましたが、得意の右を差しての寄りで勝ちました。ただ、若元春関が立ち合いに失敗した感もあり、不安は残りました。大の里関は2日目に、先場所の優勝決定戦では勝ったものの、これまで本割では2戦して勝っていない高安関と対戦し、勝ったものの叩き込みで、今場所は高安関の調子がよくなさそうなので決まったものの、これでは前途多難と思ったものです。

 その意味で、先々場所まで3連敗していた阿炎関との3日目の一番には注目していましたが、阿炎関の強烈な突き押しに耐えて送り出して勝ち、やや安心しました。ただ、阿炎関は先場所に続いて今場所も不調のように見えたので、まだ盤石の安心感はとてもありませんでした。大の里関の4日目の相手は、3日目に横綱の豊昇龍関を破った王鵬関で、王鵬関は今場所好調に見えましたし(この後、負傷があったのか、不振でしたが)、先場所も先々場所も負けている相手だけに、まだ4日目ですが、ここで勝てば横綱昇進への視界が大きく開けてくるかな、と期待できる重要な一番になる、と思っていました。大の里関は王鵬関を一気に押し出して勝ち、相撲内容もよかっただけに、この時点で、横綱昇進への期待が大きく高まりました。

 大の里関は中日に勝ち越しを決めて、終盤には独走態勢に入って、早くも13日目に無敗のまま4回目の優勝を決めました。上述のように、場所前には不調が伝えられていたのでかなり不安でしたが、直前に調子を整え、場所が始まってからさらに調子を上げてきた感があり、今場所は全体的に相撲内容がよかったように思います。これで大の里関の横綱昇進はほぼ確定しましたが、14日目と千秋楽で連敗するのは印象が悪いので、心配ではありました。大の里関は14日目に大栄翔関と対戦し、やや押し込まれて叩く場面があったものの、押し出しで何とか勝ちました。14日目まででは、11日目の若隆景関との一番が最も苦戦しましたが、内容はこの大栄翔関との一番が最も悪いように思われました。あるいは、優勝を決めた後に負けられない、との意識が強すぎたのかな、とも思いました。その意味で、大の里関はもう優勝と横綱昇進をほぼ決めていたとはいえ、千秋楽の豊昇龍関との結びの一番には注目していましたが、攻めこんだものの、逆襲されて上手捻りで負けてしまい、全勝優勝を逃しました。14日目と千秋楽は、優勝して横綱昇進をほぼ決めたことで、かえって負けられない、との意識が強くなったのでしょうか。こうしたところは、来場所以降の課題となります。

 それにしても、大学時代の実績によって幕下付出での初土俵だったとはいえ、これまでの初土俵からの横綱昇進の最短記録だった輪島関の21場所を大きく更新する13場所での横綱昇進で、しかもその輪島関でさえ横綱昇進までに負け越しがあるのに、大の里関はまだ負け越し経験がなく、おそらくこれは年6場所制以降の横綱では初めてでしょうから、色々な意味で快挙だと思います。私にとっては、一番の贔屓の力士の横綱昇進は貴乃花関以来なので、その点でも感慨深いものがあります。まあ、少子高齢化が進む日本社会において、モンゴルやヨーロッパからの入門者もいるとはいえ、稽古の質が向上していたとしても、以前よりも全体的な水準が低下している可能性は高そうですから、この点で冷ややかに見る相撲愛好者は少なくないかもしれません。ただ、以前と比較して八百長が激減しているのだとしたら、大関への昇進も大関で好成績を残すことが以前よりも難しくなっているでしょうから、最近の幕内力士については、その点も考慮に入れて評価すべきとは思います。

 場所前に好調を伝えられていた豊昇龍関は脆さも見せたものの、12勝3敗で場所を終え、千秋楽結びのすでに優勝を決めていた大の里関を破るなど、横綱としての務めは果たしたと思います。豊昇龍関が一人横綱ではなくなる来場所は、新横綱が行事などによる調整の難しさのためか、苦戦する傾向にあるだけに、現時点では優勝候補筆頭と考えています。豊昇龍関は大の里関の横綱昇進で一人横綱の重圧からかなり解放されるでしょうから、来場所以降は成績が安定するのではないか、と期待されますし、琴櫻関の不振が続くようだと、豊昇龍関と大の里関の「豊大時代」が到来するかもしれません。大の里関は稽古量の少なさも指摘されていますが、横綱に昇進すれば変わってくるだろう、と期待していますし、そもそも本当に稽古量が少ないと言えるのか、詳しく取材しているわけではない私には判断の難しい問題です。それはともかく、大の里関は対応力というか学習力の高さが魅力で、立ち会いから防戦一方で押し込まれる場合に先場所までのように安易に引くことも少なくなり、横綱に昇進してさらに強くなるのではないか、と期待しています。

 三役では、高安関は状態が悪かったようで負け越しましたが、関脇の大栄翔関は10勝5敗、元大関で関脇の霧島関は11勝4敗、小結の若隆景関は12勝3敗と勝ち越し、次の大関昇進争いも注目されます。ただ、三人とも元大関か数年前からの大関候補なので、新味に欠けるところがあるのも否定できません。その意味では、大の里関と同じくまだ負け越しがなく、新入幕の先場所に続いての二桁勝ちで、11勝4敗で場所を終えたまだ21歳の安青錦関は、もっと相撲を覚えて体が大きくなれば、数年後には大関、さらには横綱昇進もあるのではないか、と期待しています。

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