『卑弥呼』第149話「状況 其ノ一」
『ビッグコミックオリジナル』2025年6月5日号掲載分の感想です。前号は休載だったので、久々の感があります。前回は、ヤノハがミマアキに、魏と公孫淵の戦が終わる前に中土に使者を派遣するが、以前言ったように、ミマアキには使節の中心になってもらう、と伝えたところで終了しました。今回は、遼東郡の襄平からヤノハとは旧知の何(カ)がゴリとともに出立する場面から始まります。何は襄平の隣の遼隧(リョウスイ)県に駐屯した、次期幽州刺史である毌丘倹に謁見するために、南東に向かいます。ゴリは、トメ将軍と落ち合うために帯方郡へと向かいます。
山社(ヤマト)では、山社国の同盟国である筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)諸国、つまり那(ナ)と伊都(イト)と末盧(マツラ)と穂波(ホミ)と都萬(トマ)の王に、伊岐(イキ、現在の壱岐諸島でしょう)と津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)の王が集まり、ヤノハと協議しています。ヤノハは、豊秋津島(トヨアキツシマ、本州を指すと思われます)の大国である日下(ヒノモト)の動向を憂慮しており、戦いに備えるために敵をもっと知らなければならない、と同盟国の諸王に訴えます。しかし、那国のウツヒオ王は、すでに日下連合軍とたたかった経験もあるので、敵を充分すぎるほど知っているのではないか、とヤノハに指摘します。他の王も、日下国には鉄の武器を駆使する強力な戦集団がおり、豊秋津島の金砂(カナスナ)国と宍門(アナト)国はまったく歯が立たず、天下統一の最終目標である筑紫島への上陸を虎視眈々と狙っているので、山社連合が取るべき道は、豊秋津島に打って出るか、動かず守備を固めるかだ、と議論します。するとヤノハは、自分とは考えが違うようだ、と言います。ヤノハは、今後数年、日下国が筑紫島を攻めることはない、と考えており、その理由を説明します。日下が一番欲しいものと一番恐れているものを考えると、日下が筑紫島に今求めているのは、山社の同盟国の諸王が考えている筑紫島の占領ではなく、日下の支配を黙って受け入れ、筑紫島が日下の一部と言われても無条件に認めることこそ、日下が最も望んでいることだろう、とヤノハ指摘します。
それ以上に日下が欲しいものは何なのか、穂波国のヲカ王に問われたヤノハは、出雲と答えます。日下はすでに金砂国を支配していますが、金砂国は日下が二番目に欲しかったもので、それは、金砂国にある豊富な鉄と、金砂国の民が発明した鬼国(キノクニ)とは異なるたたら製法のためだ、とヤノハは指摘します。しかし、都萬国のタケツヌ王は納得せず、出雲は大穴牟遅神(オオアナムヂノカミ)という日下とは異なる神を祀る聖地でしかない、というわけです。するとヤノハは、正確には、日下が手に入れたいのは事代主(コトシロヌシ)と神官たちで、それは日下が一番恐れているものと関係があり、厲鬼(レイキ)、つまりは疫病だ、と指摘します。筑紫島諸国が祀る神々はいずれも、疫厲(エキレイ)や疫病に備える方法も、ましてや治し方も授けてくれない、というわけです。そこで筑紫島諸国の王も、日下が一番欲しいのは疫病を払う術で、倭国最高の薬師である事代主と神官たちの知識を必要としている、と理解します。ヤノハは、日下が出雲の民を大勢日下に連れ去り、もう一つの出雲を作ろうと画策していて、本気で事代主を日下に招こうとしており、大穴牟遅神を最高神と認めてもよいとまで言っている、と指摘します。末盧国のミルカシ女王は、天照様を捨てるのか、とやや懐疑的ですが、欲しいもののためにはえげつないことを平気でするのが日下で、いずれ国名を捨てて、出雲と名乗ってもよいと言い出すだろう、とヤノハは推測しています。伊都国のイトデ王が、日下にとって一番欲しいものが山社になったらどうなるのか、と尋ねると、平気で山社と名乗るだろう、とヤノハは答えます。ここでウツヒオ王が、日下を抑える策として、中土(中華地域のことでしょう)の魏との接触を試みているヤノハの策について、具体的な進め方を話してもらいたい、とヤノハに促します。
朝鮮半島を進んでいたトメ将軍一行は、馬韓を越えて帯方郡に入ります。そこに騎馬部隊が現れ、トメ将軍はオオヒコと通詞一人だけを連れて、騎乗してその騎馬部隊に近づきます。トメ将軍は、倭国から来たことと、帯方郡太守の劉昕に謁見したいことを伝えます。すると、劉昕の息子の劉夏が騎乗して前に進み出て、通詞が劉夏の言葉を翻訳して伝え、帯方郡の通詞が倭の言葉を介することにオオヒコは驚きます。劉夏の通詞から、遼東太守の公孫淵に会う目的で通行の許しを求めるのならば断わるので、帰るよう伝えられたトメ将軍は、許可なくとも通るといえばどうするのか、と問います。すると、劉夏の通詞は、一戦交える覚悟だ、と答えます。帯方郡は騎兵でも百名程度で、我々二千名の兵を討ち果たすことは不可能なのに、豪気なことだ、とトメ将軍は感心しますが、オオヒコは焦っています。
山社では、ミルカシ女王が、中土の状況の前に伺いたいことがあると言い、一番の脅威はもちろん日下としても、二番目の脅威である暈(クマ)国も無視できないのではないか、とヤノハに尋ねます。するとヤノハは、先の大地震(おおなゐ)で暈国の実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)は軍備より内政に地下背を注いでいるので、今の暈を脅威とは考えていない、と答えます。暈について、筑紫島諸国の王も、鞠智彦の取り子(養子)のことを知っており、不思議な力を持つ童で、元服したら日見彦(ヒミヒコ)になるだろう、との噂が広がっていました。するとヤノハは、よい話ではないか、と言います。自分も人なのでいずれ身罷るわけで、その前に次の日見子(ヒミコ)か日見彦が顕れねばならない、というわけです。もし鞠智彦の養子が天照様の声を聞けて、本気で倭国の太平を考えているならば、この地位(日見子)を一日も早く譲りたい、とヤノハが言い、ヤノハが以前と同じことを言っていることから、近く本気で退位するつもりなのか、とイクメとミマアキの姉弟が心配するところで今回は終了です。
今回は、山社連合と魏との直接的接触の始まりと、日下の脅威へのヤノハの認識が描かれました。ヤノハの認識はさすがに同盟国の諸王より深く、倭国内情勢では、日下と出雲の関係がしばらくは焦点となりそうです。山社連合と魏との交渉が、公孫淵の敗亡と絡めて描かれつつ、日下と出雲の関係も同時に進行するのでしょうか、注目されるのは、ヤノハが、日下は国名を平気で改めるだろう、と考えていることで、日下が山社と改名する可能性にも言及していることです。日下の以前の都は後の纏向遺跡のようですから、ヤノハが懸念するように、本作でも最終的には日下が山社と名乗るのかもしれません。記紀の系譜も、作中で語られている日下の系譜とおおむね一致しますから、日下が山社連合を滅ぼすか制圧し、おそらくは後の熊襲であろう暈国が日下を頂点とする「大和朝廷」と対峙するところで、本作は完結となるのかもしれません。暈国は『三国志』に見える狗奴国でしょうから、魏への遣使の後で山社連合が暈国に苦戦し、日下連合の支配下に入るのかもしれませんが、これまでの作風からして、かなり捻ってくることが予想されるので、本作がどのように完結するのか、現時点ではとても断定できません。中土と同様に、倭国も日下連合と山社連合と暈国の三国鼎立状況になっており、そこから生じる関係性の複雑さも、本作の魅力になっているように思います。現在が西暦で238年頃とすると、『三国志』から推測される卑弥呼の没年まで10年ほどですから、完結が近いようにも思いますが、魏への遣使はかなり長い描写になりそうですし、暈国や日下連合との関係もありますから、まだ完結はかなり先かな、とも思います。『三国志』に見える台与もほぼ間違いなく本作で登場するでしょうし、『三国志』から推測すると、この時点ですでに台与は生まれていた可能性が高そうですが、現時点でそれらしき人物は登場していません。卑弥呼の一族と伝えられている台与の出自が本作ではどう設定されるのかも、気になるところです。
山社(ヤマト)では、山社国の同盟国である筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)諸国、つまり那(ナ)と伊都(イト)と末盧(マツラ)と穂波(ホミ)と都萬(トマ)の王に、伊岐(イキ、現在の壱岐諸島でしょう)と津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)の王が集まり、ヤノハと協議しています。ヤノハは、豊秋津島(トヨアキツシマ、本州を指すと思われます)の大国である日下(ヒノモト)の動向を憂慮しており、戦いに備えるために敵をもっと知らなければならない、と同盟国の諸王に訴えます。しかし、那国のウツヒオ王は、すでに日下連合軍とたたかった経験もあるので、敵を充分すぎるほど知っているのではないか、とヤノハに指摘します。他の王も、日下国には鉄の武器を駆使する強力な戦集団がおり、豊秋津島の金砂(カナスナ)国と宍門(アナト)国はまったく歯が立たず、天下統一の最終目標である筑紫島への上陸を虎視眈々と狙っているので、山社連合が取るべき道は、豊秋津島に打って出るか、動かず守備を固めるかだ、と議論します。するとヤノハは、自分とは考えが違うようだ、と言います。ヤノハは、今後数年、日下国が筑紫島を攻めることはない、と考えており、その理由を説明します。日下が一番欲しいものと一番恐れているものを考えると、日下が筑紫島に今求めているのは、山社の同盟国の諸王が考えている筑紫島の占領ではなく、日下の支配を黙って受け入れ、筑紫島が日下の一部と言われても無条件に認めることこそ、日下が最も望んでいることだろう、とヤノハ指摘します。
それ以上に日下が欲しいものは何なのか、穂波国のヲカ王に問われたヤノハは、出雲と答えます。日下はすでに金砂国を支配していますが、金砂国は日下が二番目に欲しかったもので、それは、金砂国にある豊富な鉄と、金砂国の民が発明した鬼国(キノクニ)とは異なるたたら製法のためだ、とヤノハは指摘します。しかし、都萬国のタケツヌ王は納得せず、出雲は大穴牟遅神(オオアナムヂノカミ)という日下とは異なる神を祀る聖地でしかない、というわけです。するとヤノハは、正確には、日下が手に入れたいのは事代主(コトシロヌシ)と神官たちで、それは日下が一番恐れているものと関係があり、厲鬼(レイキ)、つまりは疫病だ、と指摘します。筑紫島諸国が祀る神々はいずれも、疫厲(エキレイ)や疫病に備える方法も、ましてや治し方も授けてくれない、というわけです。そこで筑紫島諸国の王も、日下が一番欲しいのは疫病を払う術で、倭国最高の薬師である事代主と神官たちの知識を必要としている、と理解します。ヤノハは、日下が出雲の民を大勢日下に連れ去り、もう一つの出雲を作ろうと画策していて、本気で事代主を日下に招こうとしており、大穴牟遅神を最高神と認めてもよいとまで言っている、と指摘します。末盧国のミルカシ女王は、天照様を捨てるのか、とやや懐疑的ですが、欲しいもののためにはえげつないことを平気でするのが日下で、いずれ国名を捨てて、出雲と名乗ってもよいと言い出すだろう、とヤノハは推測しています。伊都国のイトデ王が、日下にとって一番欲しいものが山社になったらどうなるのか、と尋ねると、平気で山社と名乗るだろう、とヤノハは答えます。ここでウツヒオ王が、日下を抑える策として、中土(中華地域のことでしょう)の魏との接触を試みているヤノハの策について、具体的な進め方を話してもらいたい、とヤノハに促します。
朝鮮半島を進んでいたトメ将軍一行は、馬韓を越えて帯方郡に入ります。そこに騎馬部隊が現れ、トメ将軍はオオヒコと通詞一人だけを連れて、騎乗してその騎馬部隊に近づきます。トメ将軍は、倭国から来たことと、帯方郡太守の劉昕に謁見したいことを伝えます。すると、劉昕の息子の劉夏が騎乗して前に進み出て、通詞が劉夏の言葉を翻訳して伝え、帯方郡の通詞が倭の言葉を介することにオオヒコは驚きます。劉夏の通詞から、遼東太守の公孫淵に会う目的で通行の許しを求めるのならば断わるので、帰るよう伝えられたトメ将軍は、許可なくとも通るといえばどうするのか、と問います。すると、劉夏の通詞は、一戦交える覚悟だ、と答えます。帯方郡は騎兵でも百名程度で、我々二千名の兵を討ち果たすことは不可能なのに、豪気なことだ、とトメ将軍は感心しますが、オオヒコは焦っています。
山社では、ミルカシ女王が、中土の状況の前に伺いたいことがあると言い、一番の脅威はもちろん日下としても、二番目の脅威である暈(クマ)国も無視できないのではないか、とヤノハに尋ねます。するとヤノハは、先の大地震(おおなゐ)で暈国の実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)は軍備より内政に地下背を注いでいるので、今の暈を脅威とは考えていない、と答えます。暈について、筑紫島諸国の王も、鞠智彦の取り子(養子)のことを知っており、不思議な力を持つ童で、元服したら日見彦(ヒミヒコ)になるだろう、との噂が広がっていました。するとヤノハは、よい話ではないか、と言います。自分も人なのでいずれ身罷るわけで、その前に次の日見子(ヒミコ)か日見彦が顕れねばならない、というわけです。もし鞠智彦の養子が天照様の声を聞けて、本気で倭国の太平を考えているならば、この地位(日見子)を一日も早く譲りたい、とヤノハが言い、ヤノハが以前と同じことを言っていることから、近く本気で退位するつもりなのか、とイクメとミマアキの姉弟が心配するところで今回は終了です。
今回は、山社連合と魏との直接的接触の始まりと、日下の脅威へのヤノハの認識が描かれました。ヤノハの認識はさすがに同盟国の諸王より深く、倭国内情勢では、日下と出雲の関係がしばらくは焦点となりそうです。山社連合と魏との交渉が、公孫淵の敗亡と絡めて描かれつつ、日下と出雲の関係も同時に進行するのでしょうか、注目されるのは、ヤノハが、日下は国名を平気で改めるだろう、と考えていることで、日下が山社と改名する可能性にも言及していることです。日下の以前の都は後の纏向遺跡のようですから、ヤノハが懸念するように、本作でも最終的には日下が山社と名乗るのかもしれません。記紀の系譜も、作中で語られている日下の系譜とおおむね一致しますから、日下が山社連合を滅ぼすか制圧し、おそらくは後の熊襲であろう暈国が日下を頂点とする「大和朝廷」と対峙するところで、本作は完結となるのかもしれません。暈国は『三国志』に見える狗奴国でしょうから、魏への遣使の後で山社連合が暈国に苦戦し、日下連合の支配下に入るのかもしれませんが、これまでの作風からして、かなり捻ってくることが予想されるので、本作がどのように完結するのか、現時点ではとても断定できません。中土と同様に、倭国も日下連合と山社連合と暈国の三国鼎立状況になっており、そこから生じる関係性の複雑さも、本作の魅力になっているように思います。現在が西暦で238年頃とすると、『三国志』から推測される卑弥呼の没年まで10年ほどですから、完結が近いようにも思いますが、魏への遣使はかなり長い描写になりそうですし、暈国や日下連合との関係もありますから、まだ完結はかなり先かな、とも思います。『三国志』に見える台与もほぼ間違いなく本作で登場するでしょうし、『三国志』から推測すると、この時点ですでに台与は生まれていた可能性が高そうですが、現時点でそれらしき人物は登場していません。卑弥呼の一族と伝えられている台与の出自が本作ではどう設定されるのかも、気になるところです。
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