森恒二『創世のタイガ』第13巻(講談社)
2025年3月に刊行されました。第12巻は、現生人類(Homo sapiens)側の王であるタイガが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)側(とはいっても、その指導者は第二次世界大戦のドイツとフランスの国境付近の戦場から来たドイツ人将校ですが)の王族(旧石器時代に時間移動させられた第二次世界大戦時のドイツ軍人5名のうちの1名であるデニスの息子で、おそらく母親はネアンデルタール人)の罠にはまって、凶暴な大型類人猿と戦わざるを得なくなり、そこにタイガとは恋仲で、タイガの前の王だったナクムの妹であるティアリが加勢するところで終了しました。第13巻は、その続きから始まります。
タイガはティアリや他の仲間と協力しながら大型類人猿を倒し、アラタはこの大型類人猿がギガントピテクスではないか、と推測します。ギガントピテクス属はアジア南東部からアジア東部南方に生息し、ギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)は20万年前頃までに絶滅しましたが(関連記事)、プロテオーム(タンパク質の総体)解析から現生分類群ではオランウータン属と最も近縁と明らかになっており(関連記事)、この系統関係は地理的分布と整合的です。第13巻で明示されますが、本作の舞台はナイル川近くのアフリカ北東部で、年代は、10万~4万年前頃の間でしょうか。つまり、ギガントピテクス属が本作の舞台に登場するはずないわけですが、タイガたちや第二次世界大戦時のドイツ軍人5名が旧石器時代のアフリカ北東部に強制的に時間移動させられたことと同じ「力」あるいは「意志」によるのでしょうか。ここは本作の根幹とも関わる設定と思われるので、完結までには明かされることを期待しています。この様子を見ていたネアンデルタール人側の「王族」であるゲオルグは、現生人類側と戦わないよう、年長と思われる「王族」のデニスに進言しますが、強硬派のデニスには和睦する考えはまったくないようです。
現生人類側は、防壁を強化したり、タイガが飼い慣らしたオオカミ(名前はウルフ)の仔も飼い慣らしたりしていき、戦力を強化します。タイガは、何度撃退してもネアンデルタール人側が襲撃してくるので、逆に攻勢に出るために、まずはウルフを連れて、アラタやカシンたちとともに少人数でネアンデルタール人側の本拠地を突き止めようとします。その頃、タイガとともに旧石器時代の世界に時間移動させられ、ネアンデルタール人に一時は強制連行され、強姦されて妊娠したユカは、難産ながら無事に男児を産みます。しかし、その男児の肌の色は明るく、明らかにネアンデルタール人に似ていたことから、現生人類には忌み嫌う者が少なくないようです。それでも旧石器時代の世界に来た当初は、怯えて自信がなかったユカは、出産を経て強くなり、息子を守ります。ユカは息子にナクムと命名するよう長老に願い出て、認められます。
敵本拠地の偵察に出たタイガたちは、途中で遭遇したネアンデルタール人を殺しつつ、ついにナイル川に出て、ネアンデルタール人側の本拠地を見つけます。そこでは、「王」であるクラウス(旧石器時代に時間移動させられた第二次世界大戦時のドイツ軍人5名のうち、まだ生きているのはクラウスだけのようです)が、敗軍の将となった強硬派のデニスを諭し、兵の指揮をデニスより年下と思われるゲオルグに委ねます。本拠地に近づいたタイガたちはネアンデルタール人に発見されて追われ、苦戦しつつもネアンデルタール人を倒していき、再度ゲオルグに和睦するよう忠告し、帰還に成功します。タイガは、ネアンデルタール人側の王こそが問題の根源と考え、捕虜としたネアンデルタール人はできるだけ殺さず、働かせることにします。
第13巻はこれで終了となり、本作の舞台がアフリカ北東部のナイル川の近くだと明示されました。本作の舞台については、中東もしくはヨーロッパと考えてきましたが、アフリカ北東部のナイル川の近くだと明示されました。現時点でネアンデルタール人の分布範囲の南限はレヴァント南部(北緯31度)のシュクバ洞窟(Shukbah Cave)で、まだアフリカでは明確なネアンデルタール人の痕跡は発見されていませんが、ネアンデルタール人が一時的にアフリカまで拡散していた可能性も考えられます(関連記事)。まあ本作では、第二次世界大戦時のドイツ軍人5名がネアンデルタール人側の「王族」として君臨しており、タイガたちが旧石器時代に強制的に時間移動させられるまで、ネアンデルタール人側が現生人類側を圧倒していた、との設定なので、ネアンデルタール人がアフリカ北東部まで侵攻しても不思議ではありませんが。このところ、1年に1冊の刊行となっていますが、相変わらず面白いので、是非完結を見届けたいものです。なお、第1巻~第12巻までの記事は以下の通りです。
第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html
第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html
第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html
第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html
第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html
第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html
第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html
第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html
第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html
第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html
第11巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_1.html
第12巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202404article_6.html
タイガはティアリや他の仲間と協力しながら大型類人猿を倒し、アラタはこの大型類人猿がギガントピテクスではないか、と推測します。ギガントピテクス属はアジア南東部からアジア東部南方に生息し、ギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)は20万年前頃までに絶滅しましたが(関連記事)、プロテオーム(タンパク質の総体)解析から現生分類群ではオランウータン属と最も近縁と明らかになっており(関連記事)、この系統関係は地理的分布と整合的です。第13巻で明示されますが、本作の舞台はナイル川近くのアフリカ北東部で、年代は、10万~4万年前頃の間でしょうか。つまり、ギガントピテクス属が本作の舞台に登場するはずないわけですが、タイガたちや第二次世界大戦時のドイツ軍人5名が旧石器時代のアフリカ北東部に強制的に時間移動させられたことと同じ「力」あるいは「意志」によるのでしょうか。ここは本作の根幹とも関わる設定と思われるので、完結までには明かされることを期待しています。この様子を見ていたネアンデルタール人側の「王族」であるゲオルグは、現生人類側と戦わないよう、年長と思われる「王族」のデニスに進言しますが、強硬派のデニスには和睦する考えはまったくないようです。
現生人類側は、防壁を強化したり、タイガが飼い慣らしたオオカミ(名前はウルフ)の仔も飼い慣らしたりしていき、戦力を強化します。タイガは、何度撃退してもネアンデルタール人側が襲撃してくるので、逆に攻勢に出るために、まずはウルフを連れて、アラタやカシンたちとともに少人数でネアンデルタール人側の本拠地を突き止めようとします。その頃、タイガとともに旧石器時代の世界に時間移動させられ、ネアンデルタール人に一時は強制連行され、強姦されて妊娠したユカは、難産ながら無事に男児を産みます。しかし、その男児の肌の色は明るく、明らかにネアンデルタール人に似ていたことから、現生人類には忌み嫌う者が少なくないようです。それでも旧石器時代の世界に来た当初は、怯えて自信がなかったユカは、出産を経て強くなり、息子を守ります。ユカは息子にナクムと命名するよう長老に願い出て、認められます。
敵本拠地の偵察に出たタイガたちは、途中で遭遇したネアンデルタール人を殺しつつ、ついにナイル川に出て、ネアンデルタール人側の本拠地を見つけます。そこでは、「王」であるクラウス(旧石器時代に時間移動させられた第二次世界大戦時のドイツ軍人5名のうち、まだ生きているのはクラウスだけのようです)が、敗軍の将となった強硬派のデニスを諭し、兵の指揮をデニスより年下と思われるゲオルグに委ねます。本拠地に近づいたタイガたちはネアンデルタール人に発見されて追われ、苦戦しつつもネアンデルタール人を倒していき、再度ゲオルグに和睦するよう忠告し、帰還に成功します。タイガは、ネアンデルタール人側の王こそが問題の根源と考え、捕虜としたネアンデルタール人はできるだけ殺さず、働かせることにします。
第13巻はこれで終了となり、本作の舞台がアフリカ北東部のナイル川の近くだと明示されました。本作の舞台については、中東もしくはヨーロッパと考えてきましたが、アフリカ北東部のナイル川の近くだと明示されました。現時点でネアンデルタール人の分布範囲の南限はレヴァント南部(北緯31度)のシュクバ洞窟(Shukbah Cave)で、まだアフリカでは明確なネアンデルタール人の痕跡は発見されていませんが、ネアンデルタール人が一時的にアフリカまで拡散していた可能性も考えられます(関連記事)。まあ本作では、第二次世界大戦時のドイツ軍人5名がネアンデルタール人側の「王族」として君臨しており、タイガたちが旧石器時代に強制的に時間移動させられるまで、ネアンデルタール人側が現生人類側を圧倒していた、との設定なので、ネアンデルタール人がアフリカ北東部まで侵攻しても不思議ではありませんが。このところ、1年に1冊の刊行となっていますが、相変わらず面白いので、是非完結を見届けたいものです。なお、第1巻~第12巻までの記事は以下の通りです。
第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html
第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html
第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html
第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html
第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html
第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html
第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html
第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html
第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html
第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html
第11巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_1.html
第12巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202404article_6.html
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