マカク属のゲノム

　マカク属のゲノムを報告した研究（Zhang et al., 2024）が公表されました。カニクイザル（Macaca fascicularis）とアカゲザル（Macaca mulatta）は、生物医学や進化学の研究にきわめて重要です。しかし、それらのゲノムの複雑性および種間の遺伝的差異はまだ解明されていません。本論文は、カニクイザルの完全なゲノムアセンブリーを提示し、マカク属サルのゲノムではヒトと比較してセグメント重複が46％少なく、セントロメアが3.83倍長いことを明らかにします。また、1塩基対の分解能で、マカク属サルとヒトの間に93の大規模なゲノム差異が見つかり、それらが霊長類の進化で遺伝子調節に与えた影響も浮き彫りになりました。

　マカク属サルの10例のロングリードゲノム、数百のショートリードゲノム、完全長トランスクリプトームデータを用いることで、これら2種の間のさまざまな表現型の差異と関連付けられる可能性のある、約200万塩基対の固定された遺伝的多様体、約240万塩基対の複雑な座位、約1676万塩基対遺伝的分化領域、110の選択的スプライシング事象が明らかになりました。まとめると、この統合遺伝子解析は、系統特異的な表現型、適応、霊長類進化に関する理解を深めるものであり、それによって、これらのサルのヒト疾患研究での生物医学的応用が改善されるでしょう。


参考文献：
Zhang S. et al.(2025): Integrated analysis of the complete sequence of a macaque genome. Nature, 640, 8059, 714–721.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08596-w