大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回「死を呼ぶ手袋」

 今回は、将軍の徳川家治の世継ぎだった徳川家基の死が描かれました。家基の若すぎる死について、毒殺と疑っている人は少なくないかもしれませんが、本作でも毒殺と描かれていました。本作では、家基が田沼意次をひじょうに嫌っている、と描かれており、自分の息子を将軍の後継者に考えていると思われる野心家の一橋治済と組んで、田沼意次が毒殺したのではないか、と予想していましたが、本作では、家基と意次の不仲が広く知られているため、意次は疑われることを避けて、家基の毒殺には関わっていませんでした。本作は、吉原と蔦屋重三郎を中心とした江戸市中の描写と、幕閣の政治描写の二元構成となっていますが、最近は幕閣の政治描写が少なかったので、久々に政治描写に重点が置かれていました。

 家治は家基の死が毒殺と疑っており、松平武元と意次に捜査を命じます。意次は平賀源内に毒殺の手段を調べさせ、源内も武元も、手袋に毒が仕込まれていたのではないか、との結論にたどり着きます。しかし、この手袋を作らせ、献上したのは意次で、武元が先にこの手袋を抑えたことで、意次は窮地に陥ります。この過程で、武元と意次のやり取りはひじょうに見応えがありました。けっきょく、毒殺の黒幕は明示されなかったものの、武元の暗殺?も含めて、一連の事件の黒幕が一橋治済であることを示唆しているような描写でした。利益を得たものを疑う、という推理系物語の原則からすると、一橋治済を黒幕とする設定は物語として王道的と言えるかもしれませんが、やや陳腐な印象もあります。一橋治済は最終回まで登場するでしょうから、今後の暗躍?も注目されますが、本作のこれまでの傾向から、単なる安っぽい悪役や黒幕にはならないだろう、と期待しています。

 鱗形屋孫兵衛の出版業はますます苦しくなり、重三郎は青本の刊行に乗り出します。重三郎の版元業での躍進も近づきつつあり、今回も登場したものの、まだ目立つ活躍のない北尾政演(山東京伝)にも、そのうち大きく取り上げられる場面がありそうで、楽しみです。源内は、エレキテルが不評なことから精神的に不安定になっているようです。これが次回の源内の退場にどうつながってくるのか、序盤の重要人物だっただけに注目しています。け今回は、杉田玄白が初登場となります。本作で杉田玄白が大きな役割を担うことになるのか、まだ不明ですが、今後もたびたび登場することになりそうです。

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