『おむすび』など朝ドラの雑感
朝ドラ『おむすび』が今月(2025年3月)28日に最終回を迎えましたが、朝ドラの平均視聴率では、長く最低記録だった2009年度後期の『ウェルかめ』を下回ることになりそうです。前作から平均視聴率を大きく下げたとなると、2020年度後期の『おちょやん』が思い浮かびますが、『おちょやん』はなかなか楽しく視聴できました。しかし『おむすび』については、正直なところ、名作とは私も考えておらず、『ちむどんどん』や『半分、青い』程ではないとしても、派手系駄作に分類しています。なお、地味系駄作と考えているのは、代表格が『べっぴんさん』、それに続くのが『わろてんか』で、他には『おかえりモネ』と『舞いあがれ!』です。
『おむすび』の視聴率低迷の要因として、作品の質がお世辞にも高いとは言えなかったことは大きいのかもしれません。主人公の米田結が栄養士を目指すことは放送開始前から明かされており、序盤ではギャルと野球と書道が中心的要素となりましたが、野球と栄養士は結びつきやすく、ギャルも序盤で栄養士と結びついていったのに対して、書道と栄養士の結びつきが弱いというかほぼなく、米田結が当初憧れていた書道部の先輩は、途中からまったく存在感がなくなり、終盤に本筋と関係の弱いところで1回登場しただけでした。かつて夢中になったものと今ではほとんど無縁になってしまうことは、私も含めて多くの人には珍しくないでしょうが、物語にそうした要素を入れると、話が散漫になり、つまらなくなる可能性が高くなるとは思います。これと関連して、神戸栄養専門学校の同級生や世話になった管理栄養士の存在感が広範にはほぼ皆無になったことも、物語としての本作の面白さを減じていたように思います。
ただ、朝ドラは固定視聴者が多いと思われるので、物語としてつまらなくても、惰性で視聴し続ける人は多いと思われ、私の場合は『べっぴんさん』が代表例です。そう考えると、『おむすび』の視聴率低迷の要因として、話の出来が悪いこと以外に、ギャル要素を序盤から終盤まで絶えず前面に出したこともあるように思います。朝ドラの固定視聴者には、高齢で保守的な人が多いでしょうから、私のようにギャルに苦手意識を有している人は少なくなかったように思います。『おむすび』の視聴率低迷の要因としては、ここが最も大きかったのかな、と素人なりに考えています。『おむすび』が朝ドラ史上最低視聴率となりそうなことは残念ですが、主演への高評価は放送開始前と変わりません。
ただ、Twitterの投稿で知りましたが、『おむすび』における阪神・淡路大震災や東日本大震災やコロナ禍、とくに阪神・淡路大震災の描写について、「ここ十年のダメな大阪朝ドラは、戦争を感動ポルノのネタにしてきました。それをまさか阪神淡路大震災にまで広げてやるとは思いませんでしたね」との指摘は的外れだと思います。私は「感動ポルノ」という表現が心底嫌いで、「安っぽいお涙頂戴もの」といった意味合いかな、と考えていますが、「ポルノ」をこのように侮蔑的な意味合いで使用することが珍しくないのは、生育環境からの影響の違いも大きく、個体差もあるとはいえ、現代人において、性的な行為は恥ずかしい、との認識が深い進化的基盤に基づくものだからなのでしょう。「性表現」を問題視する人が少なくないのも、それが一因としてあるとは思います。それはさておき、『おむすび』の阪神・淡路大震災描写ですが、震災直後の困窮した様子や、大惨事からの立ち直りに個人差に違いが大きく、それが軋轢ともなっていくことなど、なかなか丁寧な描写で、安っぽいお涙頂戴ものとの評価は的外れで、単なる悪質な因縁でしかない、と考えています。
災害を安っぽいお涙頂戴ものとして描いた作品で思い浮かぶのは、たとえば『半分、青い』で、東日本大震災で主人公の親友である裕子が津波のため死亡するわけですが、震災直後には裕子の安否は不明です。ここまではよいとして、後に裕子の死が明らかになり、裕子の夫から死の間際の電話への録音が明かされ、病院に勤めていた裕子が、死を覚悟し、家族と主人公に残した発言が「遺言」的でした。震災直後に、テレビやラジオで報道を追っていたとしても、自分の所在地にどの程度の津波が来るのか不明で、ましてや建物の中にいるのに、助からないと判断できたのか、はなはだ疑問で、「絶対にあり得なかった状況」とまで断定するつもりはありませんが、かなり不自然で、安っぽいお涙頂戴ものだな、と放送当時に思ったものです。『半分、青い』については、当初なかなか楽しく視聴していましたが(関連記事)、途中からは話がつまらなくなり、東日本大震災の描写で、明確に駄作と位置づけるようになりました。今にして思うと、初期の高評価は、演者、とくに主演の魅力を楽しみにしていただけなのでしょう。
『おむすび』の次作の『あんぱん』は、そのひじょうに豪華な配役から、NHKがとくに力を入れていることはよく分かります。その点『おむすび』は、主人公の米田家こそ配役は豪華だったものの、米田家以外では緒形直人氏も出演していたとはいえ、全体的には地味な配役だったように思います。『あんぱん』について制作発表のさいには正直なところ、遅咲きだった漫画家の夫を支える妻が主人公ということで、『ゲゲゲの女房』の二番煎じではないか、と思ったものです。『ゲゲゲの女房』は当時朝ドラ史上最低視聴率だった『ウェルかめ』の次作で、朝ドラの視聴率を大きく回復させたので(地上波の放送時間帯が15分繰り上がったのも一因かもしれませんが)、『あんぱん』も『ゲゲゲの女房』と同じ期待をNHKから寄せられているのでしょう。『あんぱん』の制作発表時には、『おむすび』の平均視聴率が朝ドラ史上最低となることを、さすがにNHKも予想していなかったでしょうが、『ゲゲゲの女房』以降、一時期は好調だった視聴率が近年では低迷していたので、おそらく『ゲゲゲの女房』がNHKにとって成功体験となっていることから、あえて二番煎じ的な内容にしたのではないか、と推測しています。
大河ドラマの『篤姫』や朝ドラの『あまちゃん』など、NHKが強烈な成功体験に拘って(と私が推測しているだけではありますが)、出来や視聴率の点で失敗した作品を少なからず見てきただけに(とくに大河ドラマに多いと考えており、『江~姫たちの戦国~』や『花燃ゆ』や『西郷どん』や『いだてん~東京オリムピック噺~』ですが、『いだてん~東京オリムピック噺~』は、大河ドラマとしては異例の低視聴率だったものの、内容は高く評価しています)、『あんぱん』についても不安はあります。また、朝ドラ100作目で、NHKがとくに力を入れていたと思われる『なつぞら』も総合的には、好意的に評価しても凡作だったので、この点でも『あんぱん』への不安はありますが、名作となるよう、願っています。
『おむすび』の視聴率低迷の要因として、作品の質がお世辞にも高いとは言えなかったことは大きいのかもしれません。主人公の米田結が栄養士を目指すことは放送開始前から明かされており、序盤ではギャルと野球と書道が中心的要素となりましたが、野球と栄養士は結びつきやすく、ギャルも序盤で栄養士と結びついていったのに対して、書道と栄養士の結びつきが弱いというかほぼなく、米田結が当初憧れていた書道部の先輩は、途中からまったく存在感がなくなり、終盤に本筋と関係の弱いところで1回登場しただけでした。かつて夢中になったものと今ではほとんど無縁になってしまうことは、私も含めて多くの人には珍しくないでしょうが、物語にそうした要素を入れると、話が散漫になり、つまらなくなる可能性が高くなるとは思います。これと関連して、神戸栄養専門学校の同級生や世話になった管理栄養士の存在感が広範にはほぼ皆無になったことも、物語としての本作の面白さを減じていたように思います。
ただ、朝ドラは固定視聴者が多いと思われるので、物語としてつまらなくても、惰性で視聴し続ける人は多いと思われ、私の場合は『べっぴんさん』が代表例です。そう考えると、『おむすび』の視聴率低迷の要因として、話の出来が悪いこと以外に、ギャル要素を序盤から終盤まで絶えず前面に出したこともあるように思います。朝ドラの固定視聴者には、高齢で保守的な人が多いでしょうから、私のようにギャルに苦手意識を有している人は少なくなかったように思います。『おむすび』の視聴率低迷の要因としては、ここが最も大きかったのかな、と素人なりに考えています。『おむすび』が朝ドラ史上最低視聴率となりそうなことは残念ですが、主演への高評価は放送開始前と変わりません。
ただ、Twitterの投稿で知りましたが、『おむすび』における阪神・淡路大震災や東日本大震災やコロナ禍、とくに阪神・淡路大震災の描写について、「ここ十年のダメな大阪朝ドラは、戦争を感動ポルノのネタにしてきました。それをまさか阪神淡路大震災にまで広げてやるとは思いませんでしたね」との指摘は的外れだと思います。私は「感動ポルノ」という表現が心底嫌いで、「安っぽいお涙頂戴もの」といった意味合いかな、と考えていますが、「ポルノ」をこのように侮蔑的な意味合いで使用することが珍しくないのは、生育環境からの影響の違いも大きく、個体差もあるとはいえ、現代人において、性的な行為は恥ずかしい、との認識が深い進化的基盤に基づくものだからなのでしょう。「性表現」を問題視する人が少なくないのも、それが一因としてあるとは思います。それはさておき、『おむすび』の阪神・淡路大震災描写ですが、震災直後の困窮した様子や、大惨事からの立ち直りに個人差に違いが大きく、それが軋轢ともなっていくことなど、なかなか丁寧な描写で、安っぽいお涙頂戴ものとの評価は的外れで、単なる悪質な因縁でしかない、と考えています。
災害を安っぽいお涙頂戴ものとして描いた作品で思い浮かぶのは、たとえば『半分、青い』で、東日本大震災で主人公の親友である裕子が津波のため死亡するわけですが、震災直後には裕子の安否は不明です。ここまではよいとして、後に裕子の死が明らかになり、裕子の夫から死の間際の電話への録音が明かされ、病院に勤めていた裕子が、死を覚悟し、家族と主人公に残した発言が「遺言」的でした。震災直後に、テレビやラジオで報道を追っていたとしても、自分の所在地にどの程度の津波が来るのか不明で、ましてや建物の中にいるのに、助からないと判断できたのか、はなはだ疑問で、「絶対にあり得なかった状況」とまで断定するつもりはありませんが、かなり不自然で、安っぽいお涙頂戴ものだな、と放送当時に思ったものです。『半分、青い』については、当初なかなか楽しく視聴していましたが(関連記事)、途中からは話がつまらなくなり、東日本大震災の描写で、明確に駄作と位置づけるようになりました。今にして思うと、初期の高評価は、演者、とくに主演の魅力を楽しみにしていただけなのでしょう。
『おむすび』の次作の『あんぱん』は、そのひじょうに豪華な配役から、NHKがとくに力を入れていることはよく分かります。その点『おむすび』は、主人公の米田家こそ配役は豪華だったものの、米田家以外では緒形直人氏も出演していたとはいえ、全体的には地味な配役だったように思います。『あんぱん』について制作発表のさいには正直なところ、遅咲きだった漫画家の夫を支える妻が主人公ということで、『ゲゲゲの女房』の二番煎じではないか、と思ったものです。『ゲゲゲの女房』は当時朝ドラ史上最低視聴率だった『ウェルかめ』の次作で、朝ドラの視聴率を大きく回復させたので(地上波の放送時間帯が15分繰り上がったのも一因かもしれませんが)、『あんぱん』も『ゲゲゲの女房』と同じ期待をNHKから寄せられているのでしょう。『あんぱん』の制作発表時には、『おむすび』の平均視聴率が朝ドラ史上最低となることを、さすがにNHKも予想していなかったでしょうが、『ゲゲゲの女房』以降、一時期は好調だった視聴率が近年では低迷していたので、おそらく『ゲゲゲの女房』がNHKにとって成功体験となっていることから、あえて二番煎じ的な内容にしたのではないか、と推測しています。
大河ドラマの『篤姫』や朝ドラの『あまちゃん』など、NHKが強烈な成功体験に拘って(と私が推測しているだけではありますが)、出来や視聴率の点で失敗した作品を少なからず見てきただけに(とくに大河ドラマに多いと考えており、『江~姫たちの戦国~』や『花燃ゆ』や『西郷どん』や『いだてん~東京オリムピック噺~』ですが、『いだてん~東京オリムピック噺~』は、大河ドラマとしては異例の低視聴率だったものの、内容は高く評価しています)、『あんぱん』についても不安はあります。また、朝ドラ100作目で、NHKがとくに力を入れていたと思われる『なつぞら』も総合的には、好意的に評価しても凡作だったので、この点でも『あんぱん』への不安はありますが、名作となるよう、願っています。
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