渡辺和子『図解 世界の宗教』
西東社より2010年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。手頃な価格なので、復習のために読んでみました。1人の著者で世界の宗教を解説するのに無理があることは否定できませんが、手軽な入門書であり、参考文献も少なからず提示されているので、こうした一般向け書籍があってもよいとは思います。本書でおもに取り上げられているのは、キリスト教とイスラム教と仏教とヒンドゥー教とユダヤ教で、ジャイナ教やシーク教やゾロアスター教や儒教や道教にも言及されています。また1章を割いて日本の宗教史が取り上げられており、いわゆる新興宗教にも言及されています。
まず、宗教は人類誕生とともにすでにあった、と指摘されていますが、ここでの「人類」とは具体的にどの種もしくは分類群なのか、明示されていません。現生人類(Homo sapiens)以降のことなのかな、とも思いますが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)にも宗教があった、との見解を採用しているのならば、現生人類とネアンデルタール人の最終共通祖先の時点で宗教はあった、ということになりそうです。もっとも、ネアンデルタール人系統と現生人類系統の両方で独自に宗教観念を有するような認知能力の進化があった、ということなのかもしれませんが、本書の主題は宗教の起源ではないので、詳しくは述べられていません。
日本の宗教に関しては、古代宗教としての神道があり、他の宗教の受け入れにも寛容だったため、仏教や道教の神々の多くが神道の神としても崇拝の対象になっていった、と本書では指摘されていますが、日本列島において仏教到来以前から宗教としての神道が存続していた、との見解は、現在ではおおむね否定的に考えられているように思います(関連記事)。上述のように日本については1章が割かれており、とくに仏教については、宗派の違いがやや詳しく解説されています。いわゆる鎌倉仏教については、通俗的というか伝統的な、その革新性を重視する見解が採用されていますが、1970年代以降、その見直しが進んでいるように思います(関連記事)。
各宗教の宗派の形成過程も簡潔に解説されており、入門書としては適切だと思います。キリスト教については、ほぼ東方正教会とカトリックとプロテスタントに代表させているところは、簡略化しすぎかもしれませんが、世界の宗教を扱っているわけですから、これでよいかな、とも思います。本書では、世界の三大宗教はキリスト教とイスラム教と仏教とされており、これは現代日本社会における通俗的な観念と一致しますが、仏教の信者数はキリスト教およびイスラム教と比較するとかなり少なく、「三大宗教」という評価が妥当なのか、私は昔から疑問に思っていました。ただ、「民族宗教」ではなく普遍的な宗教であることと、その地理的広がりからは、仏教を世界の「三大宗教」と評価してもさほど問題はないかな、とも思います。
まず、宗教は人類誕生とともにすでにあった、と指摘されていますが、ここでの「人類」とは具体的にどの種もしくは分類群なのか、明示されていません。現生人類(Homo sapiens)以降のことなのかな、とも思いますが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)にも宗教があった、との見解を採用しているのならば、現生人類とネアンデルタール人の最終共通祖先の時点で宗教はあった、ということになりそうです。もっとも、ネアンデルタール人系統と現生人類系統の両方で独自に宗教観念を有するような認知能力の進化があった、ということなのかもしれませんが、本書の主題は宗教の起源ではないので、詳しくは述べられていません。
日本の宗教に関しては、古代宗教としての神道があり、他の宗教の受け入れにも寛容だったため、仏教や道教の神々の多くが神道の神としても崇拝の対象になっていった、と本書では指摘されていますが、日本列島において仏教到来以前から宗教としての神道が存続していた、との見解は、現在ではおおむね否定的に考えられているように思います(関連記事)。上述のように日本については1章が割かれており、とくに仏教については、宗派の違いがやや詳しく解説されています。いわゆる鎌倉仏教については、通俗的というか伝統的な、その革新性を重視する見解が採用されていますが、1970年代以降、その見直しが進んでいるように思います(関連記事)。
各宗教の宗派の形成過程も簡潔に解説されており、入門書としては適切だと思います。キリスト教については、ほぼ東方正教会とカトリックとプロテスタントに代表させているところは、簡略化しすぎかもしれませんが、世界の宗教を扱っているわけですから、これでよいかな、とも思います。本書では、世界の三大宗教はキリスト教とイスラム教と仏教とされており、これは現代日本社会における通俗的な観念と一致しますが、仏教の信者数はキリスト教およびイスラム教と比較するとかなり少なく、「三大宗教」という評価が妥当なのか、私は昔から疑問に思っていました。ただ、「民族宗教」ではなく普遍的な宗教であることと、その地理的広がりからは、仏教を世界の「三大宗教」と評価してもさほど問題はないかな、とも思います。
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