白亜紀後期の初期鳥類の生態的多様性
白亜紀後期(6920万~6840万年前頃)の初期鳥類の生態的多様性関する研究(Torres et al., 2025)が公表されました。白亜紀のクラウン群鳥類(鳥綱)系統の化石記録は、極めてまれだが、初期鳥類の複数の分岐にわたる主要な生態的変化を解明する上で非常に重要である。クラウン群鳥類と推定される既知で最初期の鳥類の一種であるヴェガヴィス・イアアイ(Vegavis iaai)は、白亜紀後期の南極に生息した、足を使って潜水する鳥類で、標本は、頭蓋骨のない骨格か、下顎の一部など頭蓋骨の一部のみだったので、その系統発生的な類縁関係には議論があります。ヴェガヴィス・イアアイは当初、系統解析によってステム群カモ科に位置づけられましたが、その後は、カモ目のステム群内、あるいは鳥綱の外側にすら位置づけられることもありました。
本論文は、ヴェガヴィス・イアアイの新たに発見されたほぼ完全な頭蓋を報告します。この頭蓋は、ベガビスの摂食生態に関して新たな知見をもたらすとともに、ヴェガヴィス・イアアイがクラウン群鳥類の中でカモ目に位置づけられることを支持する、形態的特徴を示している。ヴェガヴィス・イアアイには、鳥類様の嘴(無歯性で、小さい上顎骨)と脳の形状(大脳が著しく発達し、視葉が腹側に移動しています)が見られます。また、側頭窩には相当の深さと広がりがあり、これはヴェガヴィス・イアアイの顎の筋組織が肥大していたことを示しています。ヴェガヴィス・イアアイの嘴は細く先端がとがっており、下顎には関節後突起が存在しません。
以上の特徴から構成される摂食装置は、既知の他のいかなるカモ目鳥類のものとも異なりますが、水中で獲物を捕獲する他の現生鳥類(カイツブリ類やアビ類)のものと類似しています。白亜紀に、既知のキジカモ類(キジ目およびカモ目)の中では他に例のない摂食生態を有するヴェガヴィス・イアアイが存在したことは、現生鳥類の多様性には見られないような進化的実験が、最初期のカモ目鳥類の分岐を特徴づけていたことをさらに示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:古代の水鳥の謎を解く頭蓋骨の発見
約6,800万年前に南極大陸に生息していた鳥の新しい化石が発見され、初期の水鳥であることを報告する論文が、今週のNature に掲載される。ほぼ完全な頭蓋骨は、これまで部分的な特徴しか知られていなかったVegavis(ヴェガヴィス)と呼ばれる鳥のものである。この発見は鳥類の進化に関する新たな洞察をもたらす可能性がある。
これまでのVegavisの標本は、頭蓋骨のない骨格か、下顎の一部など頭蓋骨の一部のみであったため、鳥類の分類におけるこの鳥の分類については多くの疑問が残されていた。 限られた証拠から、現生水鳥の近縁である可能性が示唆されていたが、完全な頭蓋骨がなかったため、この鳥の正体や鳥類の進化の系統における位置については不明な点があった。
Christopher Torresらは、南極大陸で発見された白亜紀(Cretaceous)後期(約6,920万–6840万年前)の鳥類としては最古のもののひとつであるVegavis iaai(ヴェガヴィス・イアアイ)のほぼ完全な頭蓋骨を提示した。研究チームは、この新しい頭蓋骨のほぼ完全な3D再構築を行った。分析の結果、典型的な鳥類の脳の形状が明らかになり、Vegavisがカモやガチョウの近縁種として、水鳥の仲間であることが強く裏付けられた。しかし、分析結果は、Vegavisのくちばしが細長く尖っており、顎の筋肉が発達していることも示している。この特徴は、他の既知の水鳥よりもむしろ潜水鳥に近いものである。
この研究は、特に現代の鳥類の白亜紀の化石記録の希少性を考慮しつつ、白亜紀における初期鳥類進化の理解を深める助けとなっている。
古生物学:白亜紀の南極の鳥類の頭蓋が示す初期鳥類の生態的多様性
古生物学:白亜紀の南極に存在した独特なカモ類
マーストリヒチアン期(白亜紀最後の地質時代)の南極に生息した化石鳥類ベガビス(Vegavis iaai)については、これまで多くが謎に包まれていた。今回、ベガビスのほぼ完全な頭蓋が発見されたことで、この鳥類が初期のカモ目に属することが示された。
参考文献:
Torres CR. et al.(2025): Cretaceous Antarctic bird skull elucidates early avian ecological diversity. Nature, 638, 8049, 146–151.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08390-0
本論文は、ヴェガヴィス・イアアイの新たに発見されたほぼ完全な頭蓋を報告します。この頭蓋は、ベガビスの摂食生態に関して新たな知見をもたらすとともに、ヴェガヴィス・イアアイがクラウン群鳥類の中でカモ目に位置づけられることを支持する、形態的特徴を示している。ヴェガヴィス・イアアイには、鳥類様の嘴(無歯性で、小さい上顎骨)と脳の形状(大脳が著しく発達し、視葉が腹側に移動しています)が見られます。また、側頭窩には相当の深さと広がりがあり、これはヴェガヴィス・イアアイの顎の筋組織が肥大していたことを示しています。ヴェガヴィス・イアアイの嘴は細く先端がとがっており、下顎には関節後突起が存在しません。
以上の特徴から構成される摂食装置は、既知の他のいかなるカモ目鳥類のものとも異なりますが、水中で獲物を捕獲する他の現生鳥類(カイツブリ類やアビ類)のものと類似しています。白亜紀に、既知のキジカモ類(キジ目およびカモ目)の中では他に例のない摂食生態を有するヴェガヴィス・イアアイが存在したことは、現生鳥類の多様性には見られないような進化的実験が、最初期のカモ目鳥類の分岐を特徴づけていたことをさらに示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:古代の水鳥の謎を解く頭蓋骨の発見
約6,800万年前に南極大陸に生息していた鳥の新しい化石が発見され、初期の水鳥であることを報告する論文が、今週のNature に掲載される。ほぼ完全な頭蓋骨は、これまで部分的な特徴しか知られていなかったVegavis(ヴェガヴィス)と呼ばれる鳥のものである。この発見は鳥類の進化に関する新たな洞察をもたらす可能性がある。
これまでのVegavisの標本は、頭蓋骨のない骨格か、下顎の一部など頭蓋骨の一部のみであったため、鳥類の分類におけるこの鳥の分類については多くの疑問が残されていた。 限られた証拠から、現生水鳥の近縁である可能性が示唆されていたが、完全な頭蓋骨がなかったため、この鳥の正体や鳥類の進化の系統における位置については不明な点があった。
Christopher Torresらは、南極大陸で発見された白亜紀(Cretaceous)後期(約6,920万–6840万年前)の鳥類としては最古のもののひとつであるVegavis iaai(ヴェガヴィス・イアアイ)のほぼ完全な頭蓋骨を提示した。研究チームは、この新しい頭蓋骨のほぼ完全な3D再構築を行った。分析の結果、典型的な鳥類の脳の形状が明らかになり、Vegavisがカモやガチョウの近縁種として、水鳥の仲間であることが強く裏付けられた。しかし、分析結果は、Vegavisのくちばしが細長く尖っており、顎の筋肉が発達していることも示している。この特徴は、他の既知の水鳥よりもむしろ潜水鳥に近いものである。
この研究は、特に現代の鳥類の白亜紀の化石記録の希少性を考慮しつつ、白亜紀における初期鳥類進化の理解を深める助けとなっている。
古生物学:白亜紀の南極の鳥類の頭蓋が示す初期鳥類の生態的多様性
古生物学:白亜紀の南極に存在した独特なカモ類
マーストリヒチアン期(白亜紀最後の地質時代)の南極に生息した化石鳥類ベガビス(Vegavis iaai)については、これまで多くが謎に包まれていた。今回、ベガビスのほぼ完全な頭蓋が発見されたことで、この鳥類が初期のカモ目に属することが示された。
参考文献:
Torres CR. et al.(2025): Cretaceous Antarctic bird skull elucidates early avian ecological diversity. Nature, 638, 8049, 146–151.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08390-0
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