大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回「鱗剥がれた『節用集』」
今回は、蔦屋重三郎と鱗形屋孫兵衛との関係を軸に話が展開しました。重三郎は孫兵衛に嵌められ、利用されているとも言える関係ですが、それでも今は、孫兵衛と組むのが最善と考えて、隠忍自重しています。とはいえ、重三郎にも割り切れないところはあるようで、そうした人間関係の機微も今回は描かれました。重三郎は、鱗形屋が『節用集』の偽版に手を染めていることに気づき、訴えるべきか悩んだ末に訴えませんでした。鱗形屋孫兵衛を追い落とせば、重三郎にも道が開けてくるかもしれないわけで、この好機を逃してしまうところは、重三郎の甘さと見ることもできるでしょうが、これが重三郎の魅力にもなっており、多くの人を惹きつけ、重三郎の版元としての成功にもつながっていく、という構成なのかもしれません。
ただ、重三郎は積極的には鱗形屋の追い落としを画策しなかったものの、鱗形屋が『節用集』の偽版に手を染めていることに気づきながら、孫兵衛には忠告しなかったことについて、孫兵衛が摘発されることを心の底で望んでいたからではないか、と自己分析して長谷川平蔵に打ち明けています。やや自己嫌悪に陥っている感のある重三郎を見て、ともかく好機を逃さないよう平蔵は忠告し、重三郎も完全には割り切れていないものの、この好機を逃すまい、と覚悟を決めたようです。孫兵衛も善人とは言えず、西村屋与八と組んで重三郎を嵌めているので、重三郎が積極的に孫兵衛を密告しなかったこととともに、主人公である重三郎の印象が悪くはならないよう、工夫されているとも思います。長谷川平蔵が孫兵衛を摘発したさいに重三郎が鱗形屋におり、平蔵が吉原で重三郎と知り合っていたため、ともに連行されそうになった重三郎が平蔵に救われたのは創作でしょうが、上手く構成されているように思います。今回、孫兵衛の子供が登場し、最近知りましたが、西村屋の後継者は孫兵衛の息子とも言われているようなので、本作でも孫兵衛の息子が西村屋の後継者になるとしたら、孫兵衛は、自分を密告したのが重三郎だと確信し、重三郎を恨んでいるだけに、孫兵衛の息子と重三郎との関係がどう描かれるのか、注目されます。
鱗形屋が摘発されたのは、重三郎が密告したからではなく、孫兵衛の誤解だったわけですが、平蔵が重三郎に明かしたように、これは上からの指示に基づいており、その指示をしたのが、今回初登場となった勘定吟味役の松本秀持なのでしょう。孫兵衛は1万石の小島藩と組んで『節用集』の偽版で儲けており、小島藩はそれが発覚しそうになったので、松本秀持に、自分たちを見逃してもらうよう賄賂を贈り、鱗形屋を売ったわけです。今回、幕府政治の場面で、財政立て直しに貢献したとして、松本秀持が老中の松平武元や田沼意次に高く評価されており、別進行になっている重三郎の場面と幕府政治の場面が上手く接続されています。
幕府政治の描写で注目されるのは、田沼意次が将軍の徳川家治には信任されているものの、その後継者である家基は松平武元に取り込まれ、意次を敵視しているようで、家基の代になれば田沼一派は危うい、と家治が懸念していることです。家基の若すぎる死は暗殺の可能性も考えられ、通俗的には一橋治済が「容疑者」とされているように思いますが、本作では田沼意次も関わってくるのか、注目されます。佐野政言は今回が初登場となり、田沼意次の息子である意知に系図を売り込んできます。この系図によると、田沼家はかつて佐野家の家臣だった、とあり、成り上がりの田沼家の弱みに付け込んで、老中の意次に取り入ろうというわけですが、意知からその系図を渡された意次は、系図を池に投げ捨てます。これが後の意知殺害事件の発端となるのでしょうか。意次と武元のやり取りも含めて、今回も上手い構成が印象に残り楽しめ、今後もたいへん期待できそうです。
ただ、重三郎は積極的には鱗形屋の追い落としを画策しなかったものの、鱗形屋が『節用集』の偽版に手を染めていることに気づきながら、孫兵衛には忠告しなかったことについて、孫兵衛が摘発されることを心の底で望んでいたからではないか、と自己分析して長谷川平蔵に打ち明けています。やや自己嫌悪に陥っている感のある重三郎を見て、ともかく好機を逃さないよう平蔵は忠告し、重三郎も完全には割り切れていないものの、この好機を逃すまい、と覚悟を決めたようです。孫兵衛も善人とは言えず、西村屋与八と組んで重三郎を嵌めているので、重三郎が積極的に孫兵衛を密告しなかったこととともに、主人公である重三郎の印象が悪くはならないよう、工夫されているとも思います。長谷川平蔵が孫兵衛を摘発したさいに重三郎が鱗形屋におり、平蔵が吉原で重三郎と知り合っていたため、ともに連行されそうになった重三郎が平蔵に救われたのは創作でしょうが、上手く構成されているように思います。今回、孫兵衛の子供が登場し、最近知りましたが、西村屋の後継者は孫兵衛の息子とも言われているようなので、本作でも孫兵衛の息子が西村屋の後継者になるとしたら、孫兵衛は、自分を密告したのが重三郎だと確信し、重三郎を恨んでいるだけに、孫兵衛の息子と重三郎との関係がどう描かれるのか、注目されます。
鱗形屋が摘発されたのは、重三郎が密告したからではなく、孫兵衛の誤解だったわけですが、平蔵が重三郎に明かしたように、これは上からの指示に基づいており、その指示をしたのが、今回初登場となった勘定吟味役の松本秀持なのでしょう。孫兵衛は1万石の小島藩と組んで『節用集』の偽版で儲けており、小島藩はそれが発覚しそうになったので、松本秀持に、自分たちを見逃してもらうよう賄賂を贈り、鱗形屋を売ったわけです。今回、幕府政治の場面で、財政立て直しに貢献したとして、松本秀持が老中の松平武元や田沼意次に高く評価されており、別進行になっている重三郎の場面と幕府政治の場面が上手く接続されています。
幕府政治の描写で注目されるのは、田沼意次が将軍の徳川家治には信任されているものの、その後継者である家基は松平武元に取り込まれ、意次を敵視しているようで、家基の代になれば田沼一派は危うい、と家治が懸念していることです。家基の若すぎる死は暗殺の可能性も考えられ、通俗的には一橋治済が「容疑者」とされているように思いますが、本作では田沼意次も関わってくるのか、注目されます。佐野政言は今回が初登場となり、田沼意次の息子である意知に系図を売り込んできます。この系図によると、田沼家はかつて佐野家の家臣だった、とあり、成り上がりの田沼家の弱みに付け込んで、老中の意次に取り入ろうというわけですが、意知からその系図を渡された意次は、系図を池に投げ捨てます。これが後の意知殺害事件の発端となるのでしょうか。意次と武元のやり取りも含めて、今回も上手い構成が印象に残り楽しめ、今後もたいへん期待できそうです。
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