オタマジャクシの起源

 オタマジャクシの起源に関する研究(Chuliver et al., 2024)が報道されました。無尾類は、水生の幼生期(オタマジャクシ)とそれに続く成体期(カエル)からなる二相性の生活環を特徴とし、幼生期から成体期へは、形態と生理が劇的に変化する変態期を介して移行します。現生のオタマジャクシは形態がたいへん多様で、生態学的にも重要な存在ですが、白亜紀以前の化石記録(1億4500万年以上前)ではまだ見つかっておらず、その起源と初期進化は謎に包まれています。これは、変態後の無尾類の化石記録が前期ジュラ紀までさかのぼり、近縁種が後期三畳紀(約2億1700万~2億1300万年前)に存在したこととは対照的です。

 本論文は、パタゴニアで発見された中期ジュラ紀(約1億6800万~1億6100万年前)のステム群無尾類であるノトバトラクス・デギウストイ(Notobatrachus degiustoi)の後期段階のオタマジャクシについて報告します。今回の発見は、それが既知で最古のオタマジャクシであるとともに、本論文が把握している限りでは最初のステム群無尾類の幼生であることから、二重の意味で重要です。この標本は、軟組織を含め保存状態がきわめて良好で、現生のオタマジャクシの特徴である濾過摂食機構に関連する特徴が見られました。

 注目すべきことに、ノトバトラクスのオタマジャクシも成体も体サイズが大型化していて、体長は16センチ近くあり、これは、オタマジャクシの巨大化がステム群無尾類で起きていたことを示しています。今回の新発見から、濾過摂食性のオタマジャクシが一時的な水域環境に生息するという二相性の生活環は、ステム群無尾類の進化史の初期に既に存在し、それが少なくとも1億6100万年にわたり安定であり続けた、と明らかになります。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


進化:これまで知られている最古のオタマジャクシ

 約1億6,100万年前の化石オタマジャクシが、現在までに報告されている中で最古のオタマジャクシである。カエルやヒキガエルの進化に新たな光を投げかけるこの発見は、今週のNatureに掲載される。

 カエルやヒキガエルは、無尾類と呼ばれる尾のない両生類に属する。著者らは、水生のオタマジャクシ幼生が成体へと変態する特徴的な2段階のライフサイクルを持つ。成体のカエルは、後期三畳紀(約2億1,700万年–2億1,300万年前)まで遡る化石記録に残っているが、オタマジャクシは白亜紀(約1億4,500万年前)以前の記録は残っていない。

 Mariana Chuliverらは、パタゴニアの中生代ジュラ紀(約1億6,800万–1億6,100万年前)の地層から、保存状態の良いオタマジャクシ(Notobatrachus degiustoi)の化石を発見した。頭部、大部分の胴体、および尾の一部が確認でき、目、神経、および前肢も見られることから、このオタマジャクシは変態の最終段階にあったことが示唆される。これらの特徴から、濾過摂食システムなど、現在のオタマジャクシの主な特徴は、1億6,100万年前の初期のカエル類においてすでに進化していたことがわかる。体長は16センチ近くあり、このオタマジャクシも巨大であった。同じ場所では、これまでも多くの巨大なN. degiustoiカエルの成体が記録されている。巨大化はカエルの歴史の中で何度も進化してきたが、この研究は、巨大なオタマジャクシと巨大なカエルを両方持つ数少ない種のひとつであることを示している。

 この新しい標本の発見により、オタマジャクシの体の設計図の主要な特徴が、カエルの進化の初期段階ですでに存在していたことが明らかになった。著者らは、劇的な変態を伴う2段階のライフサイクルが、1億6,100万年前にはすでにカエル類に存在していたことを示していると結論づけている。


古生物学:最古のオタマジャクシから明らかになった無尾類の生活環の進化的安定性

古生物学:ジュラ紀までさかのぼったオタマジャクシの起源

 今回、パタゴニアで中期ジュラ紀(約1億6800万~1億6100万年前)の初期のカエル類であるノトバトラクス(Notobatrachus)のオタマジャクシの化石が発見され、カエル類の進化の初期には既に、現代的なオタマジャクシのボディープランが確立されていたことが示された。



参考文献:
Chuliver M. et al.(2024): The oldest tadpole reveals evolutionary stability of the anuran life cycle. Nature, 636, 8041, 138–142.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08055-y

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