森井裕一編『エリア・スタディーズ151 ドイツの歴史を知るための50章』
明石書店より2016年10月に刊行されました。本書はヨーロッパの地理的中心に位置するドイツの重要性と、ドイツが固定的存在ではなく、歴史において変化してきた、との観点からドイツのさまざまな側面を浮き彫りにします。本書の通史編では意図的に近現代の比重をやや高めたそうですが、これは、ヨーロッパ連合(EU)のなかでますます存在感を強めるドイツが、どのように成立し、国際関係のなかで変容したのか、という関心に基づいているから、と述べられています。本書は、ドイツについて多角的に知るための入門書として適しており、ドイツ史の復習にも役立ちました。以下、とくに印象に残った指摘を備忘録として述べていきます。
まず指摘されているのが、ドイツの範囲の歴史的な変動の大きさです。ドイツ史では神聖ローマ帝国を前近代の実体として叙述することが多いものの、神聖ローマ帝国は多民族的で国際的性格を有しており、近代においてもドイツの範囲は戦争の結果によりたびたび変わりました。ドイツ人の歴史の最初には「ゲルマン人」が置かれることも多いものの、「ゲルマン人」はカエサルの生み出した概念という側面が多分にあり、実態としては多くの小集団に分かれており、共通の秩序や法の存在は証明されておらず、ゲルマン法という概念とその内容も、基本的には19世紀に創出された、と指摘されています。
ドイツ史でも重要な意味を有した宗教改革について、以前は近代化と関連づける見解が主流でしたが、現在では、12~18世紀にいたるヨーロッパ世界の「キリスト教化」、つまり思想・制度の確立にとどまらない、信徒の日常生活へのキリスト教の定着に向かう長期的な変化の一部として把握する研究も進んでいるそうです。30年戦争の被害については、地域差が大きく、被害の小さい地域もあったものの、全体的な被害は大きく、人口は20~45%減少し、中には57%減少した地域もある、と指摘されています。成立当初のヒトラー政権については、直近の内閣と比較して議会における勢力は大きかったものの過半数には届かず、大統領の大権に依存する点では同様だった、と指摘されています。
まず指摘されているのが、ドイツの範囲の歴史的な変動の大きさです。ドイツ史では神聖ローマ帝国を前近代の実体として叙述することが多いものの、神聖ローマ帝国は多民族的で国際的性格を有しており、近代においてもドイツの範囲は戦争の結果によりたびたび変わりました。ドイツ人の歴史の最初には「ゲルマン人」が置かれることも多いものの、「ゲルマン人」はカエサルの生み出した概念という側面が多分にあり、実態としては多くの小集団に分かれており、共通の秩序や法の存在は証明されておらず、ゲルマン法という概念とその内容も、基本的には19世紀に創出された、と指摘されています。
ドイツ史でも重要な意味を有した宗教改革について、以前は近代化と関連づける見解が主流でしたが、現在では、12~18世紀にいたるヨーロッパ世界の「キリスト教化」、つまり思想・制度の確立にとどまらない、信徒の日常生活へのキリスト教の定着に向かう長期的な変化の一部として把握する研究も進んでいるそうです。30年戦争の被害については、地域差が大きく、被害の小さい地域もあったものの、全体的な被害は大きく、人口は20~45%減少し、中には57%減少した地域もある、と指摘されています。成立当初のヒトラー政権については、直近の内閣と比較して議会における勢力は大きかったものの過半数には届かず、大統領の大権に依存する点では同様だった、と指摘されています。
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