謹賀新年

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。ついに2025年を迎えました。もう3年近く前となる2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの直接的な軍事侵略は今も続いており、中東情勢もシリアのアサド政権の急速な崩壊など緊張状態が続くなかで、世界情勢の見通しがさらに暗くなった感もあります。こうした国際情勢の悪化により日本でも経済などさまざまな点で悪影響があり、今後の日本社会の見通しは暗く、何とも厳しい時代になりました。私の周囲でも色々と不愉快なことが起きそうですが、人生には楽しみも多いのだ、と開き直ってしぶとく生きていき、人類進化史を中心としてさまざまな分野で勉強と情報収集を地道に続けていくつもりです。人類進化史でも古代DNA研究はとくにそうですが、最新の研究動向には追いつくのはなかなか難しく、追いつくのは無理としても、関連文献を少しでも多く読んでいこう、と考えています。

 今年の目標や希望・期待としては、古人類学ではやはり古代DNA研究の進展が注目されますが、ユーラシア西部、とくにヨーロッパと比較してユーラシア東部では、近年では中国において発展が目覚ましいとはいえ、日本列島も含めて全体的には研究が大きく遅れている、と言えるでしょう。ユーラシア東部の古代DNA研究は日本人起源論とも直接的に関わってくるだけに、日本人の一人として研究の進展に注目しています。縄文時代の人類集団の形成過程とともに、現代日本人の形成に大きな影響を及ぼしたと考えられる弥生時代以降のユーラシア東部大陸部からの移住が、何回かの大きな波だったのか、それともある程度継続的だったのか、また弥生時代の前半と古墳時代とでは、ユーラシア東部大陸部から日本列島への移民の遺伝的構成に違いがあったのか、ということも注目されます。それは、日本列島だけではなく、朝鮮半島における紀元前千年紀以降の人類集団の遺伝的構成変容の可能性とも関連しています。

 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)など、非現生人類(Homo sapiens)ホモ属(古代型ホモ属、絶滅ホモ属)の古代DNA研究の進展も期待されますが、これら非現生人類ホモ属のDNAデータはこれまで、現在のロシア領で発見された遺骸から得られたものも多く、ウクライナの被害や広範囲の経済的打撃はもちろんのこと、古代DNA研究も、ロシアによるウクライナの侵略のため妨げられているところがあるのではないか、と腹立たしくあります。デニソワ人はこれまで、アルタイ山脈とチベット高原でしか遺伝学的には確認されておらず、デニソワ人である可能性がきわめて高い遺骸は、アルタイ山脈以外ではチベット高原とラオスでしか発見されていません。今年は、それ以外の地域でデニソワ人遺骸が確認されるのではないか、と期待しています。とくに中国で発見された中期~後期更新世の分類が曖昧なホモ属化石については、デニソワ人の確認当初からその可能性が指摘されていただけに、注目されます。

 娯楽では、『ビッグコミックオリジナル』で連載中の『卑弥呼』が年明け最初の発売号で143話を迎え、昨年もたいへん楽しめたので、今後の展開にも大いに期待しています。魏への使節派遣は随分と先のように思えましたが、すでに西暦で228年を迎えたことから、意外と最終回は近いようにも思います。日本列島内とともに、ユーラシア東部大陸部の情勢も本格的に描かれるのではないか、と期待しています。今年の大河ドラマは蔦屋重三郎が主人公で、合戦場面はおそらくなく、登場人物も戦国時代の有名な大名ほどの一般的知名度はないでしょうから、視聴率では苦戦するかもしれません。しかし、蔦屋重三郎は当ブログの大河ドラマ予想記事にて何度か主役候補に挙げたこともあるくらいなので、私はひじょうに楽しみにしています。

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