年末の挨拶

 いよいよ2024年も終わりが近づいてきました。1年間この過疎ブログをお読みくださった方、さらには有益な情報を寄せてくださった方には感謝申し上げます。今年もロシアによるウクライナへの直接的な軍事侵略は続き、昨年秋以降は中東情勢が悪化したうえに、アメリカ合衆国大統領選挙ではトランプ前大統領が勝つなど、世界情勢の見通しがさらに暗くなった感もあります。まあ、ハリス副大統領が大統領選で勝っていたら、世界規模ではトランプ政権よりさらに悲惨な状況となった可能性もあるとは思いますが。シリアでは、ロシアがウクライナ侵略を優先し、支援が減っていたため、政権基盤が弱体化していたのか、年末にアサド政権が急速に崩壊し、残酷なアサド政権の圧政に苦しんでいた人々にとっては朗報と言えるかもしれませんし、これまでのところ、アサド政権打倒で中心的役割を担ったシャーム解放機構はまともな方針を打ち出しているように見えますが、今後、シリア、さらには中東全体の情勢がさらに悪化する懸念もあります。日本国内も、衆院選の結果として政治的安定性が低下し(これは悪いことだけではないでしょうが)、物価高は相変わらずで(これも、可処分所得が物価以上に上昇していけば、むしろ歓迎すべきですが)、長期衰退傾向にある日本社会の先行きに不安を抱く人は、私も含めて多かったのではないか、と思います。

 すでに昨年末の時点で、ロシアに対するウクライナの明確な軍事的劣勢が伝えられていましたが、今年もその状況は基本的に変わらず、残念ながらウクライナにとってひじょうに厳しい状況が続いており、むしろウクライナはロシアの侵略にまだよく耐えている、と考えるべきなのかもしれません。アメリカ合衆国のトランプ次期大統領は大統領就任後にウクライナとロシアの戦争を直ちに終結させる、と公言していますが、ウクライナ側からも、2014年にロシアの侵略によって奪われたクリミア半島については、奪還を訴え続けるものの、武力での奪還は断念する、と示唆する発言もあり、来年早々にはウクライナとロシアの間で、残念ながらロシアに有利な形で停戦となるかもしれません。私の理想は、ロシアの敗北というか、ロシアが2014年以降に侵略したウクライナ領から撤退し、なおかつ核兵器の使用などロシアのプーチン政権が自暴自棄にならないことなのですが、この実現はかなり難しそうです。ロシアによるウクライナへの侵略によって失われたウクライナとロシア双方の人的および物的犠牲を考えると、ウクライナは抵抗しなければよかった、と声高に主張する人もいるでしょうが、過去10年間近くロシアが強く支援してきたシリアのアサド政権の残酷な弾圧を考えても、ウクライナが抵抗しなかった場合、人命も含めて現時点以上の犠牲にならなかった保証はまったくないでしょう。ロシアによる侵略に長期間抵抗したことで、ウクライナでは民族主義が定着していった感もあり、この戦争はウクライナ人とロシア人を完全に分離する決定的な出来事となるのではないか、と予測しています。

 個人生活では、購入してから5年程しか経過していない冷蔵庫の冷却能力が弱くなってきたことで、買い替えも覚悟しましたが、長い猛暑が終わり、気温が低下してくると、冷蔵庫の冷却能力は回復しました。ただ、来年気温が上がってくると、また冷却能力の低下に悩まされそうで、来年には買い替えることになるかもしれません。個人生活で今年大きな誤算だったのは、購入して5年7ヶ月ほどでテレビが壊れたことです。その後、43インチの安い液晶モニターを購入し、録画機経由で大河ドラマや朝ドラなどを視聴していましたが、画質に我慢できず、有機ELテレビを購入しました。正直なところ、10万円以上出すほど高画質かと考えると、客観的には無駄な出費なのでしょうが、今年放送の大河ドラマ『光る君へ』や自然風景を多く映した番組の画質にはかなり満足しています。ただ、相撲中継が期待していたほどの高画質ではなく、残念でした。スマホの指紋認証が使用できなくなったり、パソコンの性能に不満が強くなったりなど、他にも買い替えを検討していますが、今年はテレビでかなりの出費となったので、来年は節約を心がけるつもりです。

 国内情勢も国際情勢も暗い1年で、来年好転していくようには思えず、個人的にも色々と誤算があって厳しい1年間となり、私生活も好転の見通しが立ちませんが、それでも今年1年間、色々と楽しめたこともあったのは確かで、来年も地道にしぶとく生き続けて、自分のやりたいことを続けられるよう、日々努めていくつもりです。まあ、大きく健康状態を損なわずに生きていけており、本格的な内戦や外国からの侵略がなく、自分のやりたいこともそれなりにやれているだけ、まだましと感謝すべきでしょうか。今年当ブログで取り上げた中でとくに面白かった本は、以下の通りです。

千葉聡『ダーウィンの呪い 人類が魅入られた進化論の「迷宮」』
https://sicambre.seesaa.net/article/202401article_6.html

藤尾慎一郎『弥生人はどこから来たのか 最新科学が解明する先史日本』
https://sicambre.seesaa.net/article/202403article_2.html

小林道彦『山県有朋 明治国家と権力』
https://sicambre.seesaa.net/article/202403article_23.html

宮嵜麻子『ローマ帝国の誕生』
https://sicambre.seesaa.net/article/202405article_18.html

寺西貞弘『道鏡 悪僧と呼ばれた男の真実』
https://sicambre.seesaa.net/article/202405article_25.html

本村凌二『地中海世界の歴史1 神々のささやく世界 オリエントの文明』
https://sicambre.seesaa.net/article/202407article_6.html

本村凌二『地中海世界の歴史2 沈黙する神々の帝国 アッシリアとペルシア』
https://sicambre.seesaa.net/article/202407article_13.html

本村凌二『地中海世界の歴史3 白熱する人間たちの都市 エーゲ海とギリシアの文明』
https://sicambre.seesaa.net/article/202407article_20.html

楊海英『人類学と骨 日本人ルーツ探しの学説史』
https://sicambre.seesaa.net/article/202408article_10.html

Reza Aslan『人類はなぜ<神>を生み出したのか?』
https://sicambre.seesaa.net/article/202408article_17.html

山田重郎『アッシリア 人類最古の帝国』
https://sicambre.seesaa.net/article/202408article_24.html

楊海英『モンゴル帝国 草原のダイナミズムと女たち』
https://sicambre.seesaa.net/article/202409article_7.html

本村凌二『地中海世界の歴史4 辺境の王朝と英雄 ヘレニズム文明』
https://sicambre.seesaa.net/article/202411article_16.html

原武史『象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む』
https://sicambre.seesaa.net/article/202411article_23.html

有富純也編『日本の古代とは何か 最新研究でわかった奈良時代と平安時代の実像』
https://sicambre.seesaa.net/article/202412article_21.html

 これらのなかでもとくにお勧めなのは、楊海英『人類学と骨 日本人ルーツ探しの学説史』です。なお、過去の面白かった本のまとめは以下の通りです。

(1)2010年4月以前
https://sicambre.seesaa.net/article/201004article_25.html

(2)2010年5月~2013年12月
https://sicambre.seesaa.net/article/201401article_3.html

(3)2014年1月~2018年4月
https://sicambre.seesaa.net/article/201805article_24.html

(4)2018年5月~2019年12月
https://sicambre.seesaa.net/article/201912article_51.html

(5)2020年1月~2020年12月
https://sicambre.seesaa.net/article/202012article_41.html

(6)2021年1月~2021年12月
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_33.html

(7)2022年1月~2022年12月
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_31.html

(7)2023年1月~2023年12月
https://sicambre.seesaa.net/article/202312article_31.html

この記事へのコメント