『卑弥呼』第142話「的中」
『ビッグコミックオリジナル』2025年1月5日号掲載分の感想です。前回は、暈(クマ)国の夜萬加(ヤマカ)の洞穴で、ニニギ(ヤエト)がヒルメに、地震(なゐ)が起きる、との予言を信じるよう説得していると、じっさいに地震が発生したところで終了しました。今回は、地震で揺れている夜萬加の洞窟で、ニニギがヒルメに逃げるよう説得する場面から始まります。しかし、地震はすぐに収まり、お前の言う大きな地震とはこの程度なのか、とヒルメはニニギを嘲笑うかのように言います。するとニニギは、次に来る地震はもっと大きく、この洞穴も危ないので早く出るようヒルメに促し、強引に引っ張って出そうとします。ヒルメはクエビトにニニギを止めさせようとしますが、クエビトが前回、ニニギの実父であるチカラオ(ナツハ)に殺されたことを、チカラオ以外はまだ知らず、クエビトは戻っていないことを配下から聞かされたヒルメは、ニニギを止めるよう、改めて配下に命じます。ニニギはヒルメの配下に、今の地震はもっと大きい地震の前触れで、この洞穴に留まっていれば全員死ぬ、と改めて訴え、自分とヒルメのどちらを信じるのか、と問いかけます。するとヒルメは、こんな小童の話を信じるな、と配下に命じますが、配下は念のため山から降りるようヒルメに提案し、ヒルメは切歯扼腕します。
山社(ヤマト)では、ヤノハが楼観から降りて輿の中におり、その周囲を祈祷女(イノリメ)や兵士が囲んでいました。楼観は無事でしたが、森では無数の鳥が飛び立ち、狼や犬の遠吠えが聞こえてきたので、鳥も獣も急いで山を下っており、つまり自分が恐れる地震はこれから来る証なのだ、とヤノハはイクメに伝えます。暈国の鞠智(ククチ)の里(現在の熊本県菊池市でしょうか)では、暈国の大夫で実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)に、配下のウガヤが、小童(ニニギ)の預言が中途半端に当たった、と語りかけていました。子の程度の地震なら国にさほどの被害もないだろう、と楽観するウガヤに対して、庭から出て広い野原に逃れる、と鞠智彦は命じます。次に来る大きな地震に備えねばならない、というわけです。夜萬加では、ニニギに言われて地震発生を触れ回っていた4人の子供が、この程度の揺れで大騒ぎしていたのか、と邑長に叱責されていましたが、4人の子供は嘘ではない、と言い張り、邑長がさらに怒っているところに、ニニギが現れて、その4人は正しく、先ほどの地震は前触れにすぎない、と断言します。ニニギが輿に乗っているヒルメに、何か言うよう頼むと、ヒルメは顔を見せ、ニニギは正しい、次の地震はもっと大きい、と民に伝えます。
山社では、ヤノハが輿から降りて待機していたところに、揺れが始まり、そろそろ来る、とヤノハが呟きます。同時刻に、夜萬加でも大きく地面が揺れ始め、山崩れが起き、建物が倒壊します。しばらくして地震は収まり、ニニギはその場の物に、もう大丈夫だ、地震神(ナイノカミ)は立ち去った、と伝えます。その様子を見ていたヒルメは、ニニギが本物かもしれない、と呟きます。山社では地震で楼観が倒壊するなど、都は全壊しました。ヤノハはミマアキに、邑々を急ぎまわって確認し、被害甚大な邑には派兵するよう命じて、人が無事ならそれだけでよい、と呟きます。鞠智の里では、よく大地震を見抜いた、とウガヤが鞠智彦に感心していました。鞠智彦はウガヤに、ニニギをすぐに連れてくるよう命じます。ニニギの預言は嘘ではなかった、と訝るウガヤに、自分たちは山社の日見子(ヒミコ)、つまりヤノハに対抗できる本物の日見彦(ヒミヒコ)を見つけたのだ、と語りかけるところで今回は終了です。
今回は大地震の様子が描かれ、ヤノハの権威はさらに高まったでしょうが、大地震を触れ回ったニニギが本物の神霊のある少年として、ヒルメや鞠智彦に認められたことで、話が大きく動いたように思います。暈国では以前、タケル王が日見彦とされていましたが、これは、鞠智彦も含めて擁立した者や山社の者もほぼ全員、偽の日見彦と考えており、タケル王は鞠智彦に殺害されました。『三国志』によると、本作の暈国と考えられる狗奴国には卑弥弓呼がいるので、誰か代わりに日見彦に擁立されるのではないか、と予想していましたが、どうもニニギが日見彦に擁立されるようです。今回の大地震を預言したことで、ヒルメもニニギを本物の神霊のある少年と考えるようになったので、鞠智彦の提案に賛同するのでしょう。ただ、日見彦と認定されるにはトンカラリンの試練を受けねばなりませんが、鞠智彦はトンカラリンの洞窟の地図を持っているので、ニニギがトンカラリンの試練を切り抜けられるよう、工作するのでしょうか。ニニギが暈国で日見彦として擁立されるのだとしたら、ヤノハが実子のヤエト(ニニギ)に殺される、とのモモソの預言(第73話)は、『三国志』から示唆されるように、暈国と山社連合との戦いにおいてヤノハが殺されることを意味しているのかもしれません。ヒルメは、ニニギがナツハ(チカラオ)に強姦されたヤノハの息子と気づいているでしょうし、鞠智彦もニニギを実際に見ており、ヤノハとの関係に気づいているかもしれないので、鞠智彦はニニギを暈国で日見彦に擁立するさいに、ヤノハがすでに日見子として擁立された後で出産したことを醜聞として触れ回り、それがヤノハの死因になる可能性も考えられます。ただ、ニニギがヤノハの実子であることを、人々にどう納得させるのか、という問題があるので、これについても捻った展開になるかもしれず、どう描かれるのか、楽しみです。なお、残念ながら次号は休載のようです。
山社(ヤマト)では、ヤノハが楼観から降りて輿の中におり、その周囲を祈祷女(イノリメ)や兵士が囲んでいました。楼観は無事でしたが、森では無数の鳥が飛び立ち、狼や犬の遠吠えが聞こえてきたので、鳥も獣も急いで山を下っており、つまり自分が恐れる地震はこれから来る証なのだ、とヤノハはイクメに伝えます。暈国の鞠智(ククチ)の里(現在の熊本県菊池市でしょうか)では、暈国の大夫で実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)に、配下のウガヤが、小童(ニニギ)の預言が中途半端に当たった、と語りかけていました。子の程度の地震なら国にさほどの被害もないだろう、と楽観するウガヤに対して、庭から出て広い野原に逃れる、と鞠智彦は命じます。次に来る大きな地震に備えねばならない、というわけです。夜萬加では、ニニギに言われて地震発生を触れ回っていた4人の子供が、この程度の揺れで大騒ぎしていたのか、と邑長に叱責されていましたが、4人の子供は嘘ではない、と言い張り、邑長がさらに怒っているところに、ニニギが現れて、その4人は正しく、先ほどの地震は前触れにすぎない、と断言します。ニニギが輿に乗っているヒルメに、何か言うよう頼むと、ヒルメは顔を見せ、ニニギは正しい、次の地震はもっと大きい、と民に伝えます。
山社では、ヤノハが輿から降りて待機していたところに、揺れが始まり、そろそろ来る、とヤノハが呟きます。同時刻に、夜萬加でも大きく地面が揺れ始め、山崩れが起き、建物が倒壊します。しばらくして地震は収まり、ニニギはその場の物に、もう大丈夫だ、地震神(ナイノカミ)は立ち去った、と伝えます。その様子を見ていたヒルメは、ニニギが本物かもしれない、と呟きます。山社では地震で楼観が倒壊するなど、都は全壊しました。ヤノハはミマアキに、邑々を急ぎまわって確認し、被害甚大な邑には派兵するよう命じて、人が無事ならそれだけでよい、と呟きます。鞠智の里では、よく大地震を見抜いた、とウガヤが鞠智彦に感心していました。鞠智彦はウガヤに、ニニギをすぐに連れてくるよう命じます。ニニギの預言は嘘ではなかった、と訝るウガヤに、自分たちは山社の日見子(ヒミコ)、つまりヤノハに対抗できる本物の日見彦(ヒミヒコ)を見つけたのだ、と語りかけるところで今回は終了です。
今回は大地震の様子が描かれ、ヤノハの権威はさらに高まったでしょうが、大地震を触れ回ったニニギが本物の神霊のある少年として、ヒルメや鞠智彦に認められたことで、話が大きく動いたように思います。暈国では以前、タケル王が日見彦とされていましたが、これは、鞠智彦も含めて擁立した者や山社の者もほぼ全員、偽の日見彦と考えており、タケル王は鞠智彦に殺害されました。『三国志』によると、本作の暈国と考えられる狗奴国には卑弥弓呼がいるので、誰か代わりに日見彦に擁立されるのではないか、と予想していましたが、どうもニニギが日見彦に擁立されるようです。今回の大地震を預言したことで、ヒルメもニニギを本物の神霊のある少年と考えるようになったので、鞠智彦の提案に賛同するのでしょう。ただ、日見彦と認定されるにはトンカラリンの試練を受けねばなりませんが、鞠智彦はトンカラリンの洞窟の地図を持っているので、ニニギがトンカラリンの試練を切り抜けられるよう、工作するのでしょうか。ニニギが暈国で日見彦として擁立されるのだとしたら、ヤノハが実子のヤエト(ニニギ)に殺される、とのモモソの預言(第73話)は、『三国志』から示唆されるように、暈国と山社連合との戦いにおいてヤノハが殺されることを意味しているのかもしれません。ヒルメは、ニニギがナツハ(チカラオ)に強姦されたヤノハの息子と気づいているでしょうし、鞠智彦もニニギを実際に見ており、ヤノハとの関係に気づいているかもしれないので、鞠智彦はニニギを暈国で日見彦に擁立するさいに、ヤノハがすでに日見子として擁立された後で出産したことを醜聞として触れ回り、それがヤノハの死因になる可能性も考えられます。ただ、ニニギがヤノハの実子であることを、人々にどう納得させるのか、という問題があるので、これについても捻った展開になるかもしれず、どう描かれるのか、楽しみです。なお、残念ながら次号は休載のようです。
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