ネアンデルタール人から現生人類への遺伝的影響の検証
長期にわたるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)から現生人類(Homo sapiens)への遺伝的影響を検証した研究(Iasi et al., 2024)が報道されました。日本語の解説記事もあります。本論文は、シベリア南部のアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)およびチャギルスカヤ洞窟(Chagyrskaya Cave)やクロアチアのヴィンディヤ洞窟(Vindija Cave)から得られたネアンデルタール人の高品質なゲノムデータと、現生人類では45000~2200年前頃となる古代人や現代人のゲノムデータを用いて、ネアンデルタール人から現生人類への遺伝子流動の経時的な変化を検証しています。このうち最初期現生人類には、たとえば、ルーマニア南西部の「骨の洞窟(Peştera cu Oase、略してPO)」の1個体、シベリア南部西方のウスチイシム(Ust’-Ishim)近郊のイルティシ川(Irtysh River)の土手で発見された45900~42900年前頃の1個体、チェコのコニェプルシ(Koněprusy)洞窟群で発見された洞窟群の頂上の丘にちなんでズラティクン(Zlatý kůň)と呼ばれる成人女性1個体、ブルガリアのバチョキロ洞窟(Bacho Kiro Cave)で発見された個体群などが含まれます。
ネアンデルタール人からの遺伝子流動は、現生人類における遺伝と表現型の差異を形成してきました。ほとんどの非アフリカ系現代人は、その祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)の約1~2%がネアンデルタール人に由来します。ゲノムでは、一部の領域に高頻度のネアンデルタール人多様体があり、「適応的遺伝子移入の候補」と特定されていますが、一方で、ネアンデルタール人祖先系統が存在しない領域もあり、「砂漠」と呼ばれています。しかし、時期と進化の過程、たとえば、ネアンデルタール人祖先系統の景観を形成してきた遺伝的浮動もしくは自然選択は、分かりにくいままです。先行研究のほとんどは、過去の人口動態と選択の影響の分離が困難である、現在の個体群のゲノムに焦点を当ててきました。古代DNA解析は、過去に存在した遺伝的差異のパターンの直接的観察を可能とすることによって、ヒトの進化史への研究を一変させてきました。
本論文では、45000~2200年前頃の間で標本抽出された古代人59個体と多様な現代人275個体から得られたゲノムデータが分析され、経時的なネアンデルタール人祖先系統の進化史が調べられました。経時的なネアンデルタール人祖先系統断片の頻度と長さと分布が調べられたのは、以下の3点の問題に答えるためで、それは、(1)ネアンデルタール人の祖先系統は地理と年代によって個体間でどのように共有されていましたか?(2)ネアンデルタール人からの遺伝子流動はいつ起きて、どのくらいの期間続きましたか?(3)現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の機能的遺産は何ですか?
古代人と現代人におけるネアンデルタール人祖先系統の目録が生成され、ネアンデルタール人祖先系統断片の大半は人口集団間で共有されており、ネアンデルタール人祖先系統断片の共有は非アフリカ人における人口構造を反映している、と分かりました。配列決定されたネアンデルタール人、たとえばヴィンディヤ洞窟やデニソワ洞窟やチャギルスカヤ洞窟の個体との比較から、遺伝子流動は単一もしくは複数の密接に関連するネアンデルタール人集団から起きた、と示唆されます。対照的に、POやウスチイシムやズラティクンやバチョキロ洞窟で発見された最初期の現生人類は、かなりの固有のネアンデルタール人祖先系統と、配列決定されたネアンデルタール人との独特な一致する特性を有しており、これら初期現生人類個体群における一部のネアンデルタール人祖先系統は4万年前頃以後の現生人類とは共有されない、と示唆されます。古代の現生人類個体群におけるネアンデルタール人祖先系統断片の分布と長さを調べることによって、47000年前頃に起きて約7000年間続いた、単一の長期のネアンデルタール人からの遺伝子流動の証拠が見つかりました。これは、ヨーロッパにおける初期現生人類とネアンデルタール人の重複の可能性に関する考古学的証拠と一致します。
最後に、現生人類のゲノム全体と経時的なネアンデルタール人祖先系統の頻度が調べられました。適応的な遺伝子移入の新たな候補が明らかになり、それには、現生人類にとってすぐに適応的になった領域や、遺伝子移入された維持されている変異からより新しい年代に適応的になった一部の領域が含まれます。常染色体とX染色体上のほとんどのネアンデルタール人砂漠は遺伝子流動後急速に形成され、最初期現生人類のゲノムでも明らかでした。注目すべきことに、X染色体はネアンデルタール人祖先系統の均一ではなく無作為でもない分布を示し、大きなネアンデルタール人祖先系統の砂漠は、非アフリカ人において以前に特定された一掃の兆候と重なっています。
本論文は、ネアンデルタール人から現生人類への遺伝子流動の複雑な歴史への洞察を提供します。50500~43500年前頃の間に起きた、単一の長期間にわたるネアンデルタール人から非アフリカ系現代人全員の共通祖先への遺伝子流動の強い裏づけが見つかりました。これらの年代は、出アフリカおよびアフリカ外の地域の移住と居住の年代について下限を提供します。ネアンデルタール人祖先系統への正負どちらであれ自然選択の大半は遺伝子流動後にすぐ起き、アフリカ外の最古級の現生人類の多様性に明確な兆候を残しました。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。
●要約
ネアンデルタール人からの遺伝子流動は、現生人類における遺伝と表現型の差異を形成してきました。本論文は、過去5万年間にわたる300点以上のゲノムにおけるネアンデルタール人祖先系統の目録を生成しました。ネアンデルタール人祖先系統が経時的に個体間でどのように共有されているのか、調べられました。分析の結果、ネアンデルタール人からの遺伝子流動の大半は、祖先系統の相関、現生人類個体群のネアンデルタール人断片の共局在、配列決定されたネアンデルタール人からの分岐によって証明されたように、50500~43500年前頃に起きた、遺伝子流動の単一の共有された長い期間に起因する、と明らかになりました。正負どちらであれ、ネアンデルタール人由来の多様体へのほとんどの自然選択は、遺伝子流動後急速に起きました。本論文の調査結果は、ネアンデルタール人との接触が現生人類の起源と適応をどのように形成したのかについて、新たな洞察を提供します。以下は本論文の要約図です。
●研究史
配列決定されたネアンデルタール人[1~4]および種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)[5、6]のゲノムの配列決定は、現代人の祖先と古代型人類【非現生人類ホモ属】との間の広範な遺伝子流動を明らかにしてきました。結果として、ほとんどの非アフリカ系現代人は1~2%のネアンデルタール人祖先系統を有しており、アジア東部現代人はユーラシア西部現代人よりも20%ほど多くのネアンデルタール人祖先系統を有しています[6]。この遺伝子流動は54000~41000年前頃の間に起きた、と推定されてきましたが、ネアンデルタール人と初期現生人類(たとえば、POやバチョキロ洞窟やウスチイシムの個体)との間に二次的な相互作用があったのかどうか、アジア東部現代人とユーラシア西部現代人との間の人口集団の違いの原因は何だったのか(たとえば、アジア東部現代人の祖先における二次的な交雑の波動や、ユーラシア西部現代人の祖先におけるネアンデルタール人祖先系統の希釈や、他の人口統計学的事象)、まだ議論となっています(7~11)。
さらに、先行研究では、ネアンデルタール人祖先系統の分布はゲノム全体で均一ではない、と特定されてきており、一部の領域はネアンデルタール人祖先系統が顕著に枯渇している(これは「古代型砂漠」と呼ばれています)のに対して、他の領域には異常に高頻度でネアンデルタール人由来の多様体が含まれており、おそらくそうした領域が有益な変異(これは、「適応的遺伝子移入の候補」と呼ばれています)を含んでいるからです(12~17)。これらのパターンを形成してきた進化の力、たとえば、遺伝的浮動や自然選択は、まだ完全には理解されていません。
ほとんどの先行研究は現在の個体群のゲノムに焦点を当ててきており、過去の人口動態と選択の影響を分離することは困難です[18]。本論文では、古代と現在の現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の目録が生成され、時空間を通じたネアンデルタール人祖先系統の体系的分析が提供されます。ネアンデルタール人から継承された多様体の起源と軌跡が復元され、それによって、いつ遺伝子流動が起きたのかに関する推定値[7、9]の改良と、選択がゲノム全体の祖先系統のパターンをどのように形成してきたのか[18、20]、直接的に観察することが可能となります。これらの分析はまとめて、現生人類におけるネアンデルタール人からの遺伝子流動の人口史と遺産の特徴づけに役立ちます。
●現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の位置の特定
古代と現在の個体群を含めて、現生人類334個体から得られたゲノムデータが用いられました。本論文のデータセットには、1万年以上前の33個体など45000~2200年前頃の標本年代のある古代人59個体と、SGDP(Simons Genome Diversity Project、サイモンズゲノム多様性計画)の一部である世界規模の人口集団から得られた現在の多様な275個体[21]のゲノムが含まれます。これらのデータは、全ゲノム配列と、2点の異なるSNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)捕獲配列、つまり「124万(現代人で分離している約120万ヶ所の部位)」と古代型混合配列(約170万ヶ所のネアンデルタール人およびデニソワ人祖先系統の情報をもたらす部位)[8]を用いた、標的部位で濃縮された多様体の組み合わせです。古代の個体群については、全ゲノム配列決定されたか、古代型混合配列で捕獲された古代人59個体のゲノムに分析が限定され、それは、124万配列ではこだいがたの情報をもたらす多様体の数が限定的である、と分かったからです。124万配列のデータを用いて、地理的位置と年代によって階層化された14の人口集団群へと個体群がまとめられました(図1A)。以下は本論文の図1です。
単一の対象である現生人類のゲノムにおけるネアンデルタール人祖先系統の断片を推測するため、隠れマルコフモデルに基づく手法である、admixfrog[23]が用いられました。0.005 cM(センチモルガン)となる各ゲノム区画における対象の各二倍体個体について、admixfrogは3通りの可能性から2祖先系統の組み合わせを推定し、それは、(1)参照として高網羅率の3個体[2~4]を用いてネアンデルタール人か、(2)高網羅率のデニソワ洞窟の個体[6]を用いたデニソワ人か、(3)最小限のネアンデルタール人祖先系統を有するサハラ砂漠以南のアフリカ人関連祖先系統の個体群のパネル[24]を用いた現生人類です。admixfrogは遺伝子型の尤度と汚染を共推定するので、古代DNAの解析によく適しています(図1C)。
admixfrogの性能を検証するために、広範な模擬実験が実行されました。少なくとも0.2倍の網羅率の標本では、admixfrogはショットガンゲノムと古代型混合配列については確実に機能するものの、古代型の情報をもたらす標識が少ない124万捕獲配列では、検出力がより低い、と分かりました。多くの人口集団と関連する遺伝子移入したデニソワ人とは遠い関係のデニソワ人1個体のみのゲノムが利用可能だったので[25]、デニソワ人祖先系統を確実に検出する能力は限定的です。したがって、ネアンデルタール人祖先系統のみに焦点が当てられました。Admixfrogを用いて、非アフリカ人祖先系統の全個体(古代人58個体と現代人231個体)で、ネアンデルタール人祖先系統の確かな証拠が得られました(図1B)。現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の供給源と時期と機能を推測するため、このデータに焦点が当てられました(図1D・E)。
●ネアンデルタール人祖先系統の時空間的パターン
人口集団間のネアンデルタール人祖先系統の分布は、現生人類とネアンデルタール人との間の歴史的相互作用への洞察を提供します。最初の遺伝子流動後に、ネアンデルタール人由来のアレル(対立遺伝子)の差異のパターンは、遺伝的浮動とボトルネック(瓶首効果)と二次的な遺伝子流動事象を含めて、現生人類集団の人口史によって形成されるでしょう。同じ遺伝子移入事象に由来するネアンデルタール人由来の断片は子孫人口集団によって共有されるので、その共有パターンはゲノムにおける無作為の中立部位で観察される関連性を反映しているでしょう。個体における固有のネアンデルタール人祖先系統の量は、同様に少ないでしょう。対照的に、二次的なネアンデルタール人からの遺伝子流動(一部の人口集団に固有)は新たなゲノム位置に祖先系統をもたらすので、ほぼ相関しない祖先系統パターンおよび固有の祖先系統水準の増加の人口集団につながるでしょう[26]。さらに、遺伝的に分化したネアンデルタール人集団[27]からの遺伝子流動事象は、遺伝子移入した断片と参照ネアンデルタール人ゲノムとの間の分岐推定値の違いをもたらすでしょう[25]。
主成分分析(principal component analysis、略してPCA)を用いて、ネアンデルタール人祖先系統断片人口構造が調べられました。その結果、主成分1(PC1)はアジア東部とヨーロッパの個体群を、主成分2(PC2)はオセアニアと他の世界規模の集団を区別する、と分かりました(図2A)。PCAで観察された区別は、人口集団間のネアンデルタール人断片の有無ではなく、頻度の違いによってもたらされます。1000人ゲノム計画の個体群を用いてのこの分析の繰り返しによって、データセット全体にわたるこのパターンの堅牢性が示されました。このパターンが現代の人口集団の人口統計学的歴史によって説明できるのかどうか、判断するため、ネアンデルタール人祖先系統断片で共有されているゲノムが、現代の人口集団内で分離している部位のパターンと比較されました。その結果、共有されているネアンデルタール人祖先系統断片の相関行列は、個体間のゲノム規模のアレル共有を測定する、f₃浮動行列(124万ヶ所の部位を用いての推定)と一致する、と分かりました(図2C)。注目すべき例外は、ウスチイシム個体やPO個体やバチョキロ洞窟個体群やズラティクン個体を含めて初期の出アフリカ(out of Africa、略してOoA)のクラスタ(まとまり)で、有意により弱い相関となります。以下は本論文の図2です。
個体間のネアンデルタール人祖先系統断片の共有の比較後に、現在の個体群を含めて最終氷期極大期(Last Glacial Maximum、略してLGM)の後の個体群は約6%の固有のネアンデルタール人祖先系統を有しており、人口集団クラスタ間の違いはほとんどない、と分かりました。LGMに先行する個体群はより多い量の固有のネアンデルタール人祖先系統を有しており、初期OoA個体群において最高の割合で、296 Mb(100万塩基対)もしくは34%です。この結果は、標本規模の制御後も有意なままです(図2B)。固有のネアンデルタール人祖先系統の一部はある人口集団において低頻度かもしれないので、1000人ゲノム計画データセットを用いて分析が繰り返され、定性的に同様の結果が得られました。
LGM後の個体群では、固有のネアンデルタール人祖先系統は、ユーラシア東部人の方が約20%多くネアンデルタール人祖先系統を有している、つまり、アジア東部人における固有の祖先系統が22Mbなのに対して、ユーラシア西部人では19Mbであるにも関わらず、東西のユーラシア人の間で有意には違わない、と分かりました。標本規模がひじょうに小さいにも関わらず、アジア東部古代人(2個体)とLGM前後のユーラシア西部狩猟採集民(11個体)との間で有意な違いはありません。現在の個体間では、オセアニアのクラスタにおいて最大量の固有のネアンデルタール人祖先系統が見つかり、おそらくは一部の誤分類されたデニソワ人祖先系統断片[6]の寄与に起因します。個体あたり最も少ない量のネアンデルタール人祖先系統は、ジョージア西部のサツルブリア洞窟(Satsurblia Cave)で発見された13000年前頃の人類遺骸およびヤムナヤ(Yamnaya)文化個体群のクラスタで見られます。これらの人口集団クラスタにおけるコーカサス狩猟採集民祖先系統は現在の個体群に広がっており、本論文のデータではユーラシア西部人とアジア南部人に大きく寄与しています[29、30]。
次に、どのくらい多くのネアンデルタール人集団が遺伝子移入に寄与したのか、配列決定されたチャギルスカヤ洞窟のネアンデルタール人のゲノム(古代型混合配列の設計には使用されていません)との推定されるネアンデルタール人断片間の違いの数の計算によって調べられ、全クラスタで単峰形の分布が見つかりました(図2D)。これが示唆するのは、単一のネアンデルタール人集団もしくは複数の密接に関連した人口集団が現代人における推定された祖先系統の大半に寄与した、ということです。一つの例外は初期OoAクラスタで、二峰形分布を有しており、チャギルスカヤ洞窟のネアンデルタール人から顕著により分岐している約6%の祖先系統断片を有しています。一般化線形混合モデルを用いて推定された古代型人類の参照4個体のどれかから由来する遺伝子移入された断片の割合を比較すると、一貫した結果が見つかりました。
●ネアンデルタール人からの遺伝子流動の時期
現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統断片の長さは、遺伝子流動事象の時期と期間についての洞察を提供し、それは、これらの断片が組換えのため各世代で次第により短くなるからです。より短い断片を見逃すかもしれない、ネアンデルタール人断片における減衰を用いる代わりに、推定されるネアンデルタール人祖先系統のアレルの組み合わせ間でゲノム全体の祖先系統の共分散が測定されました。先行研究では模擬実験を用いて、この手法は低網羅率(1倍未満)でさえ1万年以上前の単一の古代人のゲノムで確実に機能する、と示されました。初期OoA個体群はごく近い過去のネアンデルタール人祖先系統と、おそらくは遺伝子流動事象の複数の波動の証拠[7~9]を有しているので、これらの個体は別々に分析されました。
遺伝子流動が1世代もしくは数世代以内に瞬時に起きた、IG(instantaneous gene flow、瞬時の遺伝子流動)モデルを仮定すると、各個体の祖先系統の共分散の減衰は指数分布に従う、と予測されます。4万~2万年前頃に生存していた古代人16個体のそれぞれについて祖先系統の共分散が測定され、ネアンデルタール人からの遺伝子流動はこれらの個体が生きていた321~950世代前の間に起きた、と推定されました。ネアンデルタール人からの遺伝子流動の年代と個体の標本抽出年代との間の線形関係を活用して、合同で平均世代間隔は28.4年(95.5%信頼区間では27~30年)、ネアンデルタール人からの遺伝子流動の共有波動の時期は46364年前頃(95.5%信頼区間では47045~45682年前)と推定されました。本論文の推定値は先行研究と一致しますが、本論文の方がより大きな標本規模のため、より正確です(図3A)。本論文の結果は、初期OoAクラスタの個体群を含めても堅牢である、と分かりました。以下は本論文の図3です。
先行研究では、アジア東部人におけるネアンデルタール人からの遺伝子流動の2回の異なる波動があったかもしれない、と示唆されてきました[10、14、15]。遺伝子流動の単一の波動モデルもしくは2回の波動モデルがデータにより良好に適合するのかどうか、調べることによって、アジア東部古代人2個体、つまり北京の南西56km にある田园(田園)洞窟(Tianyuan Cave)で発見された4万年前頃の男性個体とモンゴル北東部のサルキート渓谷(Salkhit Valley)で発見された34950~33900年前頃となる女性個体のゲノムで、この仮説が検証されました。尤度比検定の適用によって、最初の波動と比較して祖先系統の少なくとも10%に寄与した二次的な波動の充分な検出能力にも関わらず、アジア東部古代人のどちらかについて、単一の波動のモデルを却下できない、と分かりました。
ネアンデルタール人からの遺伝子流動の共有された波動の時期の推定は、混合が長期間にわたって起きた場合には異なるのかどうか、判断するため、次に、IGモデルがEP(extended pulse、拡張の波動)モデルと比較され、EPモデルでは、遺伝子流動が複数世代にわたって起きた、と仮定されます。IGおよびEPモデルの合同モデル化は、最古級の個体の標本抽出年代後に主要な遺伝子流動は起きていない、と仮定する(初期OoA個体群の標本抽出年代には大きな不確実性があるので、除外されました)ので、4万年前頃以降の個体群に焦点が当てられました。その結果、IGモデルよりもEPモデルの方で有意に良好な適合が得られ、遺伝子流動の平均年代は47124年前頃(47404~46872年前)で、遺伝子流動の期間は約6832年間(2044~9968年間)です。しかし、経時的な局所的組換え率および古代の個体群の標本抽出年代の不確実性が、期間の推定値の正確さに影響を及ぼします。
●ゲノム全体のネアンデルタール人祖先系統
ネアンデルタール人祖先系統はヒトの適応と疾患に大きな役割を果たしてきましたが[37、38]、ネアンデルタール人多様体の頻度が経時的にどのように変化したのか、追跡した研究はほとんどありません[39、40]。古代および現在の個体群におけるネアンデルタール人断片を用いて、常染色体の呼び出し可能ゲノムの61.7%(1551Mb)でネアンデルタール人祖先系統が回収されました。X染色体上では、ゲノムのわずか20.2%(144.86Mbのうち29Mb)でネアンデルタール人祖先系統が見つかりました。X染色体上のネアンデルタール人祖先系統断片は均一ではなく、無作為に分布しておらず、ネアンデルタール人断片の欠如した大きなゲノム領域があります(図4A)。じっさい、X染色体上の低下を測定すると、X染色体上の分布は常染色体上よりも有意に整然としている、と分かりました。以下は本論文の図4です。
先行研究では、現在の個体群におけるネアンデルタール人祖先系統の景観は組換え率および背景選択の尺度であるB統計量と相関している、と示されてきました[12]。個体が四つの年代間隔に分類され、それは、非アフリカ系現代人個体群(231個体)、1万年前頃未満の古代の個体群(25個体)、3万~1万年前頃の古代の個体群(13個体)、3万年以上前の古代の個体群(20個体)です。初期OoAクラスタの個体群のみでも検証されました。その結果、局所的な組換え率は古代と現在の個体群においてネアンデルタール人祖先系統と正に相関しており、例外は検出力を欠いている初期OoAである、と分かりました。年代間隔全体にわたって、進化的に制約された領域(低いB得点)は一貫して、ゲノムの残りの領域よりもネアンデルタール人祖先系統が少ないことも分かりました。たとえば、3万年以上前の個体群では、最小B得点区分における平均ネアンデルタール人祖先系統は3.2%で、最高B得点区分では6.2%となり、最初の遺伝子流動が現生人類において5%超だった可能性を示唆しています。X染色体については、詳細な規模で組換え率との弱い相関が見つかりましたが、この相関は限定的な検出力のためより大きな距離では有意ではありません。
自然選択の候補領域を特定するために、ネアンデルタール人断片の頻度が経時的にどのように変化してきたのか、調べられました。有益なアレルを有する断片は、正の選択もしくは適応的遺伝子移入の結果として頻度が上昇するかもれませんが、有害なアレルを有する断片はすぐに一掃され、ネアンデルタール人砂漠につながります[12]。そこで、ネアンデルタール人祖先系統の頻度がとゲノム規模の平均推定値と比較して予想外に高い(もしくは低い)領域についてゲノムが検査され、頻度が経時的にどのように変化したのかも調べられました(図4B)。古代型祖先系統増加の領域は自然選択の可能性が高い候補ですが、人口構造もしくは強い創始者事象といった特定の人口統計学的事象も、遺伝的浮動のみに起因する局所的な頻度上昇につながるかもしれません。人口階層化の影響を最小限にするため、ユーラシア西部関連祖先系統の現在および古代の個体群に焦点が当てられ、これには古代人45個体と現代人101個体が含まれます。
現在と古代両方の個体群で、高頻度であり(Z得点が4.5超、正規分布を仮定すると、百分位数で約99.9番目)、直接の適応の候補かもしれない、86ヶ所の領域(347個の遺伝子)が特定されました(図4B・C)。順列遺伝子オントロジー(gene ontology、略してGO)を用いて、これらの候補領域は、同様のゲノムの特徴のある遺伝子一式と比較して、皮膚の色素沈着や代謝や免疫と関連する経路で豊富である、と分かりました。これらの経路は現在の個体群の調査でも特定されてきており[12、13]、現生人類はアフリカ外の新たな環境圧に遭遇したため、これらの遺伝子の多くが現生人類にとって有益だった、と示唆されます。
現在の個体群では高頻度で、古代の個体群では高頻度ではない91ヶ所の候補領域(169個の遺伝子)が見つかり、これらの領域にはその後に適応的になった(維持されている遺伝子移入された変異での選択)多様体を含んでいるかもしれない、と示唆されます(図4B・D)。古代の個体群では高頻度で、現在の個体群では高頻度ではない32ヶ所の候補領域(102個の遺伝子)も見つかりました(図4B・E)。これらの領域の多く(約44%)は1Mbの候補適応領域内に位置しており、これらのハプロタイプは有益な変異に便乗し、組換えが起こるにつれて頻度は減少した、と示唆されます。
複数の調査[12、13、15]で推測された、現在のヨーロッパ人口集団で見つかった適応的遺伝子移入の以前に刊行された11ヶ所の候補領域を調べると、この兆候の72%が再現され、これには、直接的に適応的だったかもしれない7ヶ所の領域と、維持されている変異での選択の1ヶ所の候補領域が含まれます。これらの領域のうち、顕著な例外は2番染色体上の2Mb猟奇で、ここでは最高の割合のネアンデルタール人祖先系統があり、古代の個体群では64%、現在の個体群では67%です。この領域には、神経信号伝達と神経系で役割を果たすTANC1およびBAZ2B など、12個の遺伝子が含まれています。別の事例は、皮膚の色素沈着で役割を果たし、3万年以上前の個体群では約22%、現在の個体群では約65%の頻度の遺伝子であるBNC2(Basonuclin-2、ヒト亜鉛含有DNA結合タンパク2)です(図4C)。これが示唆するのは、おそらくはより早い時間規模での限定的な標本に起因して、この遺伝子座における直接的な選択を却下した以前の報告とは異なり、この遺伝子座の多様体は直接的に有益で、現生人類において経時的に増加する、ということです。
ネアンデルタール人砂漠の起源を理解するために、先行研究[13、15]で特定された限定的な(もしくは存在しない)ネアンデルタール人祖先系統の5ヶ所の領域で、経時的なネアンデルタール人祖先系統が調べられました。その結果、最初期の年代間隔(3万年以上前)の個体群も含めて、砂漠は時間区分全体で古代型祖先系統のゲノム規模の実証的分布の0.1番目の百分位数にある、と分かりました。注目すべきことに、古代もしくは現在の個体群において、5ヶ所の砂漠のうち4ヶ所の境界内で、ほぼまったくネアンデルタール人からの遺伝子移入のない断片が見つかり、これはアジア南部人での最近の研究と同様で、1番染色体上の砂漠は再現されませんでした。これが示唆するのは、砂漠が最初の遺伝子流動後急速に形成されることで、理論的予測[18]と一致します。
3万年以上前の個体群を含めて、X染色体上のネアンデルタール人祖先系統は常染色体と比較して大きく枯渇している、と分かり、常染色体に対するX染色体の比は経時的に安定したままです(女性では0.216~0.409、男性では0.239~0.288)。それと一致して、本論文の最初期の年代間隔においてネアンデルタール人祖先系統が枯渇し、経時的に持続した大きな領域が見つかりました。X染色体上で以前に特定された2ヶ所の砂漠のうち、1ヶ所のみで完全にネアンデルタール人祖先系統がなかった(X染色体上の62,000,000~78,000,000)のに対して、他の領域(X染色体上の109,000,000-143,000,000)ではかなりのネアンデルタール人祖先系統が見つかりました。興味深いことに、ほとんどの砂漠は非アフリカ人において以前に報告された推定される選択的一掃(もしくは拡張共通ハプロタイプ)と重なっており[50]、これら19ヶ所のハプロタイプのうち1ヶ所を除いて、本論文のデータではネアンデルタール人祖先系統が存在しません。枯渇が本論文の最初期の標本にさえ存在していることから、これらのハプロタイプへの選択はネアンデルタール人からの遺伝子流動の期間およびその直後に急速に起きた、と示唆されます。
●考察
本論文は、古代と現在両方の個体群から得られたデータを統合し、過去5万年間の現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の差異の包括的研究を提示します。最近開発された手法を用いて、ヒトゲノムのほぼ1.6Gb(10億塩基対)を網羅する(常染色体上の1551MbとX染色体上の29Mb)、ネアンデルタール人から遺伝子移入された断片の目録が生成されました。現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の大半は、非アフリカ人の共通祖先への単一の共有された長い期間の遺伝子流動に起因する、と分かりましたが、一部の人口集団が追加のネアンデルタール人祖先系統のわずかな寄与を受け取った可能性は除外できません。
PO個体やウスチイシム個体やバチョキロ洞窟個体群といった最初期の現生人類個体群は、かなりの固有のネアンデルタール人祖先系統、配列決定されたネアンデルタール人とは異なる一致特性、他の古代もしくは現在の個体群との遺伝子移入された断片の位置の最も弱い相関を有しています。これが示唆するのは、これら初期現生人類個体群における一部のネアンデルタール人祖先系統は4万年前頃以後の現生人類とは共有されていない、ということです。先行研究[6]と一致して、アジア東部現代人はユーラシア西部現代人より約20%多くネアンデルタール人祖先系統を有する、と分かりました。しかし、この違いはアジア東部古代人(田園個体とサルキート個体)をLGM前のユーラシア西部古代人と比較すると、観察されませんでした。さらに、単一のネアンデルタール人からの遺伝子流動のモデルは、二次的な遺伝子流動事象を含むモデルと比較すると、アジア東部古代人において祖先系統の共分散曲線に最良に適合する、と分かりました。これらの結果はすべて、ユーラシア人における一部の違いがより新しい年代に起きたかもしれない可能性を示唆していますが、本論文の調査結果は、アジア東部古代人のゲノムの限定的な利用可能性のため、暫定的なままです。
現生人類におけるネアンデルタール人からの主要な遺伝子流動は50500~43500年前頃に起きた、と推測され、これは、ヨーロッパにおける現生人類とネアンデルタール人の重複についての考古学的証拠[51、52]と一致します。これらの年代は、出アフリカ事象後の現生人類の拡大について、いくつかの意味を有しています。現在、ほとんどの非アフリカ人の祖先系統の1~2%はネアンデルタール人に由来するので、非アフリカ系現代人の共通祖先へのこの遺伝子流動の時期は、出アフリカ移住およびアフリカ外の地域における定着の時期の下限を提供します。たとえば、これは主要な出アフリカ移住が43500年前頃以降に起きたことを示唆します。さらに、ネアンデルタール人祖先系統を受け取った人口集団は、遺伝子流動事象の間に高度に構造化されていたかもしれません。アフリカ外の人々の多様化は、ネアンデルタール人からの遺伝子流動の間もしくは直後に始まったかもしれず、これは、非アフリカ系現代人集団間のネアンデルタール人祖先系統のさまざまな水準を部分的に説明でき、本論文の年代を47000年前頃までのアジア南東部およびオセアニアの現生人類の存在[17、53]と一致させるかもしれません。さらに、本論文の結果は、遺伝学と考古学の年代の比較における注意の必要性を強調し、それは、遺伝子流動のような家庭はひじょうに複雑であるかもしれないからで、したがって、点推定値への依存は限定的で不完全な理解を提供する可能性があります。ユーラシアとオセアニアからり古代人ゲノムの研究を含めてさらなる分析が、ユーラシアおよび太平洋地域にわたるヒトの拡散時期の推測には重要でしょう。
最後に、ゲノム全体のネアンデルタール人祖先系統の景観は遺伝子流動後急速に形成された、と論証されます。正負どちらであれネアンデルタール人祖先系統多様体へのほとんどの自然選択は遺伝子流動後約100世代以内に置き、初期OoA個体群でも明らかでした。注目すべきことに、非アフリカ人におけるX染色体上のネアンデルタール人祖先系統の枯渇と強い一掃は急速に置きた、と分かりました。まとめると、古代人および現代人のゲノムにおけるネアンデルタール人から遺伝子移入された断片の本論文の目録によって、現生人類におけるネアンデルタール人からの遺伝子流動の進化史の解明が可能となり、ヒトの起源と適応についての新たな洞察が提供されます。
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ネアンデルタール人からの遺伝子流動は、現生人類における遺伝と表現型の差異を形成してきました。ほとんどの非アフリカ系現代人は、その祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)の約1~2%がネアンデルタール人に由来します。ゲノムでは、一部の領域に高頻度のネアンデルタール人多様体があり、「適応的遺伝子移入の候補」と特定されていますが、一方で、ネアンデルタール人祖先系統が存在しない領域もあり、「砂漠」と呼ばれています。しかし、時期と進化の過程、たとえば、ネアンデルタール人祖先系統の景観を形成してきた遺伝的浮動もしくは自然選択は、分かりにくいままです。先行研究のほとんどは、過去の人口動態と選択の影響の分離が困難である、現在の個体群のゲノムに焦点を当ててきました。古代DNA解析は、過去に存在した遺伝的差異のパターンの直接的観察を可能とすることによって、ヒトの進化史への研究を一変させてきました。
本論文では、45000~2200年前頃の間で標本抽出された古代人59個体と多様な現代人275個体から得られたゲノムデータが分析され、経時的なネアンデルタール人祖先系統の進化史が調べられました。経時的なネアンデルタール人祖先系統断片の頻度と長さと分布が調べられたのは、以下の3点の問題に答えるためで、それは、(1)ネアンデルタール人の祖先系統は地理と年代によって個体間でどのように共有されていましたか?(2)ネアンデルタール人からの遺伝子流動はいつ起きて、どのくらいの期間続きましたか?(3)現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の機能的遺産は何ですか?
古代人と現代人におけるネアンデルタール人祖先系統の目録が生成され、ネアンデルタール人祖先系統断片の大半は人口集団間で共有されており、ネアンデルタール人祖先系統断片の共有は非アフリカ人における人口構造を反映している、と分かりました。配列決定されたネアンデルタール人、たとえばヴィンディヤ洞窟やデニソワ洞窟やチャギルスカヤ洞窟の個体との比較から、遺伝子流動は単一もしくは複数の密接に関連するネアンデルタール人集団から起きた、と示唆されます。対照的に、POやウスチイシムやズラティクンやバチョキロ洞窟で発見された最初期の現生人類は、かなりの固有のネアンデルタール人祖先系統と、配列決定されたネアンデルタール人との独特な一致する特性を有しており、これら初期現生人類個体群における一部のネアンデルタール人祖先系統は4万年前頃以後の現生人類とは共有されない、と示唆されます。古代の現生人類個体群におけるネアンデルタール人祖先系統断片の分布と長さを調べることによって、47000年前頃に起きて約7000年間続いた、単一の長期のネアンデルタール人からの遺伝子流動の証拠が見つかりました。これは、ヨーロッパにおける初期現生人類とネアンデルタール人の重複の可能性に関する考古学的証拠と一致します。
最後に、現生人類のゲノム全体と経時的なネアンデルタール人祖先系統の頻度が調べられました。適応的な遺伝子移入の新たな候補が明らかになり、それには、現生人類にとってすぐに適応的になった領域や、遺伝子移入された維持されている変異からより新しい年代に適応的になった一部の領域が含まれます。常染色体とX染色体上のほとんどのネアンデルタール人砂漠は遺伝子流動後急速に形成され、最初期現生人類のゲノムでも明らかでした。注目すべきことに、X染色体はネアンデルタール人祖先系統の均一ではなく無作為でもない分布を示し、大きなネアンデルタール人祖先系統の砂漠は、非アフリカ人において以前に特定された一掃の兆候と重なっています。
本論文は、ネアンデルタール人から現生人類への遺伝子流動の複雑な歴史への洞察を提供します。50500~43500年前頃の間に起きた、単一の長期間にわたるネアンデルタール人から非アフリカ系現代人全員の共通祖先への遺伝子流動の強い裏づけが見つかりました。これらの年代は、出アフリカおよびアフリカ外の地域の移住と居住の年代について下限を提供します。ネアンデルタール人祖先系統への正負どちらであれ自然選択の大半は遺伝子流動後にすぐ起き、アフリカ外の最古級の現生人類の多様性に明確な兆候を残しました。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。
●要約
ネアンデルタール人からの遺伝子流動は、現生人類における遺伝と表現型の差異を形成してきました。本論文は、過去5万年間にわたる300点以上のゲノムにおけるネアンデルタール人祖先系統の目録を生成しました。ネアンデルタール人祖先系統が経時的に個体間でどのように共有されているのか、調べられました。分析の結果、ネアンデルタール人からの遺伝子流動の大半は、祖先系統の相関、現生人類個体群のネアンデルタール人断片の共局在、配列決定されたネアンデルタール人からの分岐によって証明されたように、50500~43500年前頃に起きた、遺伝子流動の単一の共有された長い期間に起因する、と明らかになりました。正負どちらであれ、ネアンデルタール人由来の多様体へのほとんどの自然選択は、遺伝子流動後急速に起きました。本論文の調査結果は、ネアンデルタール人との接触が現生人類の起源と適応をどのように形成したのかについて、新たな洞察を提供します。以下は本論文の要約図です。
●研究史
配列決定されたネアンデルタール人[1~4]および種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)[5、6]のゲノムの配列決定は、現代人の祖先と古代型人類【非現生人類ホモ属】との間の広範な遺伝子流動を明らかにしてきました。結果として、ほとんどの非アフリカ系現代人は1~2%のネアンデルタール人祖先系統を有しており、アジア東部現代人はユーラシア西部現代人よりも20%ほど多くのネアンデルタール人祖先系統を有しています[6]。この遺伝子流動は54000~41000年前頃の間に起きた、と推定されてきましたが、ネアンデルタール人と初期現生人類(たとえば、POやバチョキロ洞窟やウスチイシムの個体)との間に二次的な相互作用があったのかどうか、アジア東部現代人とユーラシア西部現代人との間の人口集団の違いの原因は何だったのか(たとえば、アジア東部現代人の祖先における二次的な交雑の波動や、ユーラシア西部現代人の祖先におけるネアンデルタール人祖先系統の希釈や、他の人口統計学的事象)、まだ議論となっています(7~11)。
さらに、先行研究では、ネアンデルタール人祖先系統の分布はゲノム全体で均一ではない、と特定されてきており、一部の領域はネアンデルタール人祖先系統が顕著に枯渇している(これは「古代型砂漠」と呼ばれています)のに対して、他の領域には異常に高頻度でネアンデルタール人由来の多様体が含まれており、おそらくそうした領域が有益な変異(これは、「適応的遺伝子移入の候補」と呼ばれています)を含んでいるからです(12~17)。これらのパターンを形成してきた進化の力、たとえば、遺伝的浮動や自然選択は、まだ完全には理解されていません。
ほとんどの先行研究は現在の個体群のゲノムに焦点を当ててきており、過去の人口動態と選択の影響を分離することは困難です[18]。本論文では、古代と現在の現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の目録が生成され、時空間を通じたネアンデルタール人祖先系統の体系的分析が提供されます。ネアンデルタール人から継承された多様体の起源と軌跡が復元され、それによって、いつ遺伝子流動が起きたのかに関する推定値[7、9]の改良と、選択がゲノム全体の祖先系統のパターンをどのように形成してきたのか[18、20]、直接的に観察することが可能となります。これらの分析はまとめて、現生人類におけるネアンデルタール人からの遺伝子流動の人口史と遺産の特徴づけに役立ちます。
●現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の位置の特定
古代と現在の個体群を含めて、現生人類334個体から得られたゲノムデータが用いられました。本論文のデータセットには、1万年以上前の33個体など45000~2200年前頃の標本年代のある古代人59個体と、SGDP(Simons Genome Diversity Project、サイモンズゲノム多様性計画)の一部である世界規模の人口集団から得られた現在の多様な275個体[21]のゲノムが含まれます。これらのデータは、全ゲノム配列と、2点の異なるSNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)捕獲配列、つまり「124万(現代人で分離している約120万ヶ所の部位)」と古代型混合配列(約170万ヶ所のネアンデルタール人およびデニソワ人祖先系統の情報をもたらす部位)[8]を用いた、標的部位で濃縮された多様体の組み合わせです。古代の個体群については、全ゲノム配列決定されたか、古代型混合配列で捕獲された古代人59個体のゲノムに分析が限定され、それは、124万配列ではこだいがたの情報をもたらす多様体の数が限定的である、と分かったからです。124万配列のデータを用いて、地理的位置と年代によって階層化された14の人口集団群へと個体群がまとめられました(図1A)。以下は本論文の図1です。
単一の対象である現生人類のゲノムにおけるネアンデルタール人祖先系統の断片を推測するため、隠れマルコフモデルに基づく手法である、admixfrog[23]が用いられました。0.005 cM(センチモルガン)となる各ゲノム区画における対象の各二倍体個体について、admixfrogは3通りの可能性から2祖先系統の組み合わせを推定し、それは、(1)参照として高網羅率の3個体[2~4]を用いてネアンデルタール人か、(2)高網羅率のデニソワ洞窟の個体[6]を用いたデニソワ人か、(3)最小限のネアンデルタール人祖先系統を有するサハラ砂漠以南のアフリカ人関連祖先系統の個体群のパネル[24]を用いた現生人類です。admixfrogは遺伝子型の尤度と汚染を共推定するので、古代DNAの解析によく適しています(図1C)。
admixfrogの性能を検証するために、広範な模擬実験が実行されました。少なくとも0.2倍の網羅率の標本では、admixfrogはショットガンゲノムと古代型混合配列については確実に機能するものの、古代型の情報をもたらす標識が少ない124万捕獲配列では、検出力がより低い、と分かりました。多くの人口集団と関連する遺伝子移入したデニソワ人とは遠い関係のデニソワ人1個体のみのゲノムが利用可能だったので[25]、デニソワ人祖先系統を確実に検出する能力は限定的です。したがって、ネアンデルタール人祖先系統のみに焦点が当てられました。Admixfrogを用いて、非アフリカ人祖先系統の全個体(古代人58個体と現代人231個体)で、ネアンデルタール人祖先系統の確かな証拠が得られました(図1B)。現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の供給源と時期と機能を推測するため、このデータに焦点が当てられました(図1D・E)。
●ネアンデルタール人祖先系統の時空間的パターン
人口集団間のネアンデルタール人祖先系統の分布は、現生人類とネアンデルタール人との間の歴史的相互作用への洞察を提供します。最初の遺伝子流動後に、ネアンデルタール人由来のアレル(対立遺伝子)の差異のパターンは、遺伝的浮動とボトルネック(瓶首効果)と二次的な遺伝子流動事象を含めて、現生人類集団の人口史によって形成されるでしょう。同じ遺伝子移入事象に由来するネアンデルタール人由来の断片は子孫人口集団によって共有されるので、その共有パターンはゲノムにおける無作為の中立部位で観察される関連性を反映しているでしょう。個体における固有のネアンデルタール人祖先系統の量は、同様に少ないでしょう。対照的に、二次的なネアンデルタール人からの遺伝子流動(一部の人口集団に固有)は新たなゲノム位置に祖先系統をもたらすので、ほぼ相関しない祖先系統パターンおよび固有の祖先系統水準の増加の人口集団につながるでしょう[26]。さらに、遺伝的に分化したネアンデルタール人集団[27]からの遺伝子流動事象は、遺伝子移入した断片と参照ネアンデルタール人ゲノムとの間の分岐推定値の違いをもたらすでしょう[25]。
主成分分析(principal component analysis、略してPCA)を用いて、ネアンデルタール人祖先系統断片人口構造が調べられました。その結果、主成分1(PC1)はアジア東部とヨーロッパの個体群を、主成分2(PC2)はオセアニアと他の世界規模の集団を区別する、と分かりました(図2A)。PCAで観察された区別は、人口集団間のネアンデルタール人断片の有無ではなく、頻度の違いによってもたらされます。1000人ゲノム計画の個体群を用いてのこの分析の繰り返しによって、データセット全体にわたるこのパターンの堅牢性が示されました。このパターンが現代の人口集団の人口統計学的歴史によって説明できるのかどうか、判断するため、ネアンデルタール人祖先系統断片で共有されているゲノムが、現代の人口集団内で分離している部位のパターンと比較されました。その結果、共有されているネアンデルタール人祖先系統断片の相関行列は、個体間のゲノム規模のアレル共有を測定する、f₃浮動行列(124万ヶ所の部位を用いての推定)と一致する、と分かりました(図2C)。注目すべき例外は、ウスチイシム個体やPO個体やバチョキロ洞窟個体群やズラティクン個体を含めて初期の出アフリカ(out of Africa、略してOoA)のクラスタ(まとまり)で、有意により弱い相関となります。以下は本論文の図2です。
個体間のネアンデルタール人祖先系統断片の共有の比較後に、現在の個体群を含めて最終氷期極大期(Last Glacial Maximum、略してLGM)の後の個体群は約6%の固有のネアンデルタール人祖先系統を有しており、人口集団クラスタ間の違いはほとんどない、と分かりました。LGMに先行する個体群はより多い量の固有のネアンデルタール人祖先系統を有しており、初期OoA個体群において最高の割合で、296 Mb(100万塩基対)もしくは34%です。この結果は、標本規模の制御後も有意なままです(図2B)。固有のネアンデルタール人祖先系統の一部はある人口集団において低頻度かもしれないので、1000人ゲノム計画データセットを用いて分析が繰り返され、定性的に同様の結果が得られました。
LGM後の個体群では、固有のネアンデルタール人祖先系統は、ユーラシア東部人の方が約20%多くネアンデルタール人祖先系統を有している、つまり、アジア東部人における固有の祖先系統が22Mbなのに対して、ユーラシア西部人では19Mbであるにも関わらず、東西のユーラシア人の間で有意には違わない、と分かりました。標本規模がひじょうに小さいにも関わらず、アジア東部古代人(2個体)とLGM前後のユーラシア西部狩猟採集民(11個体)との間で有意な違いはありません。現在の個体間では、オセアニアのクラスタにおいて最大量の固有のネアンデルタール人祖先系統が見つかり、おそらくは一部の誤分類されたデニソワ人祖先系統断片[6]の寄与に起因します。個体あたり最も少ない量のネアンデルタール人祖先系統は、ジョージア西部のサツルブリア洞窟(Satsurblia Cave)で発見された13000年前頃の人類遺骸およびヤムナヤ(Yamnaya)文化個体群のクラスタで見られます。これらの人口集団クラスタにおけるコーカサス狩猟採集民祖先系統は現在の個体群に広がっており、本論文のデータではユーラシア西部人とアジア南部人に大きく寄与しています[29、30]。
次に、どのくらい多くのネアンデルタール人集団が遺伝子移入に寄与したのか、配列決定されたチャギルスカヤ洞窟のネアンデルタール人のゲノム(古代型混合配列の設計には使用されていません)との推定されるネアンデルタール人断片間の違いの数の計算によって調べられ、全クラスタで単峰形の分布が見つかりました(図2D)。これが示唆するのは、単一のネアンデルタール人集団もしくは複数の密接に関連した人口集団が現代人における推定された祖先系統の大半に寄与した、ということです。一つの例外は初期OoAクラスタで、二峰形分布を有しており、チャギルスカヤ洞窟のネアンデルタール人から顕著により分岐している約6%の祖先系統断片を有しています。一般化線形混合モデルを用いて推定された古代型人類の参照4個体のどれかから由来する遺伝子移入された断片の割合を比較すると、一貫した結果が見つかりました。
●ネアンデルタール人からの遺伝子流動の時期
現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統断片の長さは、遺伝子流動事象の時期と期間についての洞察を提供し、それは、これらの断片が組換えのため各世代で次第により短くなるからです。より短い断片を見逃すかもしれない、ネアンデルタール人断片における減衰を用いる代わりに、推定されるネアンデルタール人祖先系統のアレルの組み合わせ間でゲノム全体の祖先系統の共分散が測定されました。先行研究では模擬実験を用いて、この手法は低網羅率(1倍未満)でさえ1万年以上前の単一の古代人のゲノムで確実に機能する、と示されました。初期OoA個体群はごく近い過去のネアンデルタール人祖先系統と、おそらくは遺伝子流動事象の複数の波動の証拠[7~9]を有しているので、これらの個体は別々に分析されました。
遺伝子流動が1世代もしくは数世代以内に瞬時に起きた、IG(instantaneous gene flow、瞬時の遺伝子流動)モデルを仮定すると、各個体の祖先系統の共分散の減衰は指数分布に従う、と予測されます。4万~2万年前頃に生存していた古代人16個体のそれぞれについて祖先系統の共分散が測定され、ネアンデルタール人からの遺伝子流動はこれらの個体が生きていた321~950世代前の間に起きた、と推定されました。ネアンデルタール人からの遺伝子流動の年代と個体の標本抽出年代との間の線形関係を活用して、合同で平均世代間隔は28.4年(95.5%信頼区間では27~30年)、ネアンデルタール人からの遺伝子流動の共有波動の時期は46364年前頃(95.5%信頼区間では47045~45682年前)と推定されました。本論文の推定値は先行研究と一致しますが、本論文の方がより大きな標本規模のため、より正確です(図3A)。本論文の結果は、初期OoAクラスタの個体群を含めても堅牢である、と分かりました。以下は本論文の図3です。
先行研究では、アジア東部人におけるネアンデルタール人からの遺伝子流動の2回の異なる波動があったかもしれない、と示唆されてきました[10、14、15]。遺伝子流動の単一の波動モデルもしくは2回の波動モデルがデータにより良好に適合するのかどうか、調べることによって、アジア東部古代人2個体、つまり北京の南西56km にある田园(田園)洞窟(Tianyuan Cave)で発見された4万年前頃の男性個体とモンゴル北東部のサルキート渓谷(Salkhit Valley)で発見された34950~33900年前頃となる女性個体のゲノムで、この仮説が検証されました。尤度比検定の適用によって、最初の波動と比較して祖先系統の少なくとも10%に寄与した二次的な波動の充分な検出能力にも関わらず、アジア東部古代人のどちらかについて、単一の波動のモデルを却下できない、と分かりました。
ネアンデルタール人からの遺伝子流動の共有された波動の時期の推定は、混合が長期間にわたって起きた場合には異なるのかどうか、判断するため、次に、IGモデルがEP(extended pulse、拡張の波動)モデルと比較され、EPモデルでは、遺伝子流動が複数世代にわたって起きた、と仮定されます。IGおよびEPモデルの合同モデル化は、最古級の個体の標本抽出年代後に主要な遺伝子流動は起きていない、と仮定する(初期OoA個体群の標本抽出年代には大きな不確実性があるので、除外されました)ので、4万年前頃以降の個体群に焦点が当てられました。その結果、IGモデルよりもEPモデルの方で有意に良好な適合が得られ、遺伝子流動の平均年代は47124年前頃(47404~46872年前)で、遺伝子流動の期間は約6832年間(2044~9968年間)です。しかし、経時的な局所的組換え率および古代の個体群の標本抽出年代の不確実性が、期間の推定値の正確さに影響を及ぼします。
●ゲノム全体のネアンデルタール人祖先系統
ネアンデルタール人祖先系統はヒトの適応と疾患に大きな役割を果たしてきましたが[37、38]、ネアンデルタール人多様体の頻度が経時的にどのように変化したのか、追跡した研究はほとんどありません[39、40]。古代および現在の個体群におけるネアンデルタール人断片を用いて、常染色体の呼び出し可能ゲノムの61.7%(1551Mb)でネアンデルタール人祖先系統が回収されました。X染色体上では、ゲノムのわずか20.2%(144.86Mbのうち29Mb)でネアンデルタール人祖先系統が見つかりました。X染色体上のネアンデルタール人祖先系統断片は均一ではなく、無作為に分布しておらず、ネアンデルタール人断片の欠如した大きなゲノム領域があります(図4A)。じっさい、X染色体上の低下を測定すると、X染色体上の分布は常染色体上よりも有意に整然としている、と分かりました。以下は本論文の図4です。
先行研究では、現在の個体群におけるネアンデルタール人祖先系統の景観は組換え率および背景選択の尺度であるB統計量と相関している、と示されてきました[12]。個体が四つの年代間隔に分類され、それは、非アフリカ系現代人個体群(231個体)、1万年前頃未満の古代の個体群(25個体)、3万~1万年前頃の古代の個体群(13個体)、3万年以上前の古代の個体群(20個体)です。初期OoAクラスタの個体群のみでも検証されました。その結果、局所的な組換え率は古代と現在の個体群においてネアンデルタール人祖先系統と正に相関しており、例外は検出力を欠いている初期OoAである、と分かりました。年代間隔全体にわたって、進化的に制約された領域(低いB得点)は一貫して、ゲノムの残りの領域よりもネアンデルタール人祖先系統が少ないことも分かりました。たとえば、3万年以上前の個体群では、最小B得点区分における平均ネアンデルタール人祖先系統は3.2%で、最高B得点区分では6.2%となり、最初の遺伝子流動が現生人類において5%超だった可能性を示唆しています。X染色体については、詳細な規模で組換え率との弱い相関が見つかりましたが、この相関は限定的な検出力のためより大きな距離では有意ではありません。
自然選択の候補領域を特定するために、ネアンデルタール人断片の頻度が経時的にどのように変化してきたのか、調べられました。有益なアレルを有する断片は、正の選択もしくは適応的遺伝子移入の結果として頻度が上昇するかもれませんが、有害なアレルを有する断片はすぐに一掃され、ネアンデルタール人砂漠につながります[12]。そこで、ネアンデルタール人祖先系統の頻度がとゲノム規模の平均推定値と比較して予想外に高い(もしくは低い)領域についてゲノムが検査され、頻度が経時的にどのように変化したのかも調べられました(図4B)。古代型祖先系統増加の領域は自然選択の可能性が高い候補ですが、人口構造もしくは強い創始者事象といった特定の人口統計学的事象も、遺伝的浮動のみに起因する局所的な頻度上昇につながるかもしれません。人口階層化の影響を最小限にするため、ユーラシア西部関連祖先系統の現在および古代の個体群に焦点が当てられ、これには古代人45個体と現代人101個体が含まれます。
現在と古代両方の個体群で、高頻度であり(Z得点が4.5超、正規分布を仮定すると、百分位数で約99.9番目)、直接の適応の候補かもしれない、86ヶ所の領域(347個の遺伝子)が特定されました(図4B・C)。順列遺伝子オントロジー(gene ontology、略してGO)を用いて、これらの候補領域は、同様のゲノムの特徴のある遺伝子一式と比較して、皮膚の色素沈着や代謝や免疫と関連する経路で豊富である、と分かりました。これらの経路は現在の個体群の調査でも特定されてきており[12、13]、現生人類はアフリカ外の新たな環境圧に遭遇したため、これらの遺伝子の多くが現生人類にとって有益だった、と示唆されます。
現在の個体群では高頻度で、古代の個体群では高頻度ではない91ヶ所の候補領域(169個の遺伝子)が見つかり、これらの領域にはその後に適応的になった(維持されている遺伝子移入された変異での選択)多様体を含んでいるかもしれない、と示唆されます(図4B・D)。古代の個体群では高頻度で、現在の個体群では高頻度ではない32ヶ所の候補領域(102個の遺伝子)も見つかりました(図4B・E)。これらの領域の多く(約44%)は1Mbの候補適応領域内に位置しており、これらのハプロタイプは有益な変異に便乗し、組換えが起こるにつれて頻度は減少した、と示唆されます。
複数の調査[12、13、15]で推測された、現在のヨーロッパ人口集団で見つかった適応的遺伝子移入の以前に刊行された11ヶ所の候補領域を調べると、この兆候の72%が再現され、これには、直接的に適応的だったかもしれない7ヶ所の領域と、維持されている変異での選択の1ヶ所の候補領域が含まれます。これらの領域のうち、顕著な例外は2番染色体上の2Mb猟奇で、ここでは最高の割合のネアンデルタール人祖先系統があり、古代の個体群では64%、現在の個体群では67%です。この領域には、神経信号伝達と神経系で役割を果たすTANC1およびBAZ2B など、12個の遺伝子が含まれています。別の事例は、皮膚の色素沈着で役割を果たし、3万年以上前の個体群では約22%、現在の個体群では約65%の頻度の遺伝子であるBNC2(Basonuclin-2、ヒト亜鉛含有DNA結合タンパク2)です(図4C)。これが示唆するのは、おそらくはより早い時間規模での限定的な標本に起因して、この遺伝子座における直接的な選択を却下した以前の報告とは異なり、この遺伝子座の多様体は直接的に有益で、現生人類において経時的に増加する、ということです。
ネアンデルタール人砂漠の起源を理解するために、先行研究[13、15]で特定された限定的な(もしくは存在しない)ネアンデルタール人祖先系統の5ヶ所の領域で、経時的なネアンデルタール人祖先系統が調べられました。その結果、最初期の年代間隔(3万年以上前)の個体群も含めて、砂漠は時間区分全体で古代型祖先系統のゲノム規模の実証的分布の0.1番目の百分位数にある、と分かりました。注目すべきことに、古代もしくは現在の個体群において、5ヶ所の砂漠のうち4ヶ所の境界内で、ほぼまったくネアンデルタール人からの遺伝子移入のない断片が見つかり、これはアジア南部人での最近の研究と同様で、1番染色体上の砂漠は再現されませんでした。これが示唆するのは、砂漠が最初の遺伝子流動後急速に形成されることで、理論的予測[18]と一致します。
3万年以上前の個体群を含めて、X染色体上のネアンデルタール人祖先系統は常染色体と比較して大きく枯渇している、と分かり、常染色体に対するX染色体の比は経時的に安定したままです(女性では0.216~0.409、男性では0.239~0.288)。それと一致して、本論文の最初期の年代間隔においてネアンデルタール人祖先系統が枯渇し、経時的に持続した大きな領域が見つかりました。X染色体上で以前に特定された2ヶ所の砂漠のうち、1ヶ所のみで完全にネアンデルタール人祖先系統がなかった(X染色体上の62,000,000~78,000,000)のに対して、他の領域(X染色体上の109,000,000-143,000,000)ではかなりのネアンデルタール人祖先系統が見つかりました。興味深いことに、ほとんどの砂漠は非アフリカ人において以前に報告された推定される選択的一掃(もしくは拡張共通ハプロタイプ)と重なっており[50]、これら19ヶ所のハプロタイプのうち1ヶ所を除いて、本論文のデータではネアンデルタール人祖先系統が存在しません。枯渇が本論文の最初期の標本にさえ存在していることから、これらのハプロタイプへの選択はネアンデルタール人からの遺伝子流動の期間およびその直後に急速に起きた、と示唆されます。
●考察
本論文は、古代と現在両方の個体群から得られたデータを統合し、過去5万年間の現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の差異の包括的研究を提示します。最近開発された手法を用いて、ヒトゲノムのほぼ1.6Gb(10億塩基対)を網羅する(常染色体上の1551MbとX染色体上の29Mb)、ネアンデルタール人から遺伝子移入された断片の目録が生成されました。現生人類におけるネアンデルタール人祖先系統の大半は、非アフリカ人の共通祖先への単一の共有された長い期間の遺伝子流動に起因する、と分かりましたが、一部の人口集団が追加のネアンデルタール人祖先系統のわずかな寄与を受け取った可能性は除外できません。
PO個体やウスチイシム個体やバチョキロ洞窟個体群といった最初期の現生人類個体群は、かなりの固有のネアンデルタール人祖先系統、配列決定されたネアンデルタール人とは異なる一致特性、他の古代もしくは現在の個体群との遺伝子移入された断片の位置の最も弱い相関を有しています。これが示唆するのは、これら初期現生人類個体群における一部のネアンデルタール人祖先系統は4万年前頃以後の現生人類とは共有されていない、ということです。先行研究[6]と一致して、アジア東部現代人はユーラシア西部現代人より約20%多くネアンデルタール人祖先系統を有する、と分かりました。しかし、この違いはアジア東部古代人(田園個体とサルキート個体)をLGM前のユーラシア西部古代人と比較すると、観察されませんでした。さらに、単一のネアンデルタール人からの遺伝子流動のモデルは、二次的な遺伝子流動事象を含むモデルと比較すると、アジア東部古代人において祖先系統の共分散曲線に最良に適合する、と分かりました。これらの結果はすべて、ユーラシア人における一部の違いがより新しい年代に起きたかもしれない可能性を示唆していますが、本論文の調査結果は、アジア東部古代人のゲノムの限定的な利用可能性のため、暫定的なままです。
現生人類におけるネアンデルタール人からの主要な遺伝子流動は50500~43500年前頃に起きた、と推測され、これは、ヨーロッパにおける現生人類とネアンデルタール人の重複についての考古学的証拠[51、52]と一致します。これらの年代は、出アフリカ事象後の現生人類の拡大について、いくつかの意味を有しています。現在、ほとんどの非アフリカ人の祖先系統の1~2%はネアンデルタール人に由来するので、非アフリカ系現代人の共通祖先へのこの遺伝子流動の時期は、出アフリカ移住およびアフリカ外の地域における定着の時期の下限を提供します。たとえば、これは主要な出アフリカ移住が43500年前頃以降に起きたことを示唆します。さらに、ネアンデルタール人祖先系統を受け取った人口集団は、遺伝子流動事象の間に高度に構造化されていたかもしれません。アフリカ外の人々の多様化は、ネアンデルタール人からの遺伝子流動の間もしくは直後に始まったかもしれず、これは、非アフリカ系現代人集団間のネアンデルタール人祖先系統のさまざまな水準を部分的に説明でき、本論文の年代を47000年前頃までのアジア南東部およびオセアニアの現生人類の存在[17、53]と一致させるかもしれません。さらに、本論文の結果は、遺伝学と考古学の年代の比較における注意の必要性を強調し、それは、遺伝子流動のような家庭はひじょうに複雑であるかもしれないからで、したがって、点推定値への依存は限定的で不完全な理解を提供する可能性があります。ユーラシアとオセアニアからり古代人ゲノムの研究を含めてさらなる分析が、ユーラシアおよび太平洋地域にわたるヒトの拡散時期の推測には重要でしょう。
最後に、ゲノム全体のネアンデルタール人祖先系統の景観は遺伝子流動後急速に形成された、と論証されます。正負どちらであれネアンデルタール人祖先系統多様体へのほとんどの自然選択は遺伝子流動後約100世代以内に置き、初期OoA個体群でも明らかでした。注目すべきことに、非アフリカ人におけるX染色体上のネアンデルタール人祖先系統の枯渇と強い一掃は急速に置きた、と分かりました。まとめると、古代人および現代人のゲノムにおけるネアンデルタール人から遺伝子移入された断片の本論文の目録によって、現生人類におけるネアンデルタール人からの遺伝子流動の進化史の解明が可能となり、ヒトの起源と適応についての新たな洞察が提供されます。
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