山室恭子『中世のなかに生まれた近世』
講談社学術文庫の一冊として、2013年5月に講談社より刊行されました。本書の親本は、1991年に吉川弘文館より刊行されました。日本各地の戦国大名の文書の統計的処理から、各大名の支配体制の性格、年代・地域による各大名の比較、さらには中世から近世へと移行する日本の大きな動きを概観した一冊で、戦国大名の文書の分類という細かい個々の問題から、たいへん大きな見通しを提示した、歴史学の面白さを味わえる良書になっているのではないか、と思います。著者は、歴史学の研究者としてだけではなく、著述家としても優秀なのでしょう。
ただ、著者自身も懸念を述べているように、日本各地の大名の膨大な文書を対象としているので、類型化・単純化という側面は否めませんが、それを考慮に入れても、読みごたえのある一冊になっています。本書は、文書の統計的処理から見えてくる、戦国大名の統治体制の東西での違い(非人格的・官僚制的な支配体制の東日本と、人格的・個人的で緩やかな支配体制の西日本)について、その要因をはっきりと解明できたわけではありませんし、日本の近世は戦国時代の東日本の(一部の)大名の統治体制に始まる、との本書の仮説も、さらに緻密な検証が必要なのでしょうが、細かな研究から一定以上の説得力のある壮大な見通しが提示されているのは、本書の大きな魅力になっているのではないか、と思います。
ただ、著者自身も懸念を述べているように、日本各地の大名の膨大な文書を対象としているので、類型化・単純化という側面は否めませんが、それを考慮に入れても、読みごたえのある一冊になっています。本書は、文書の統計的処理から見えてくる、戦国大名の統治体制の東西での違い(非人格的・官僚制的な支配体制の東日本と、人格的・個人的で緩やかな支配体制の西日本)について、その要因をはっきりと解明できたわけではありませんし、日本の近世は戦国時代の東日本の(一部の)大名の統治体制に始まる、との本書の仮説も、さらに緻密な検証が必要なのでしょうが、細かな研究から一定以上の説得力のある壮大な見通しが提示されているのは、本書の大きな魅力になっているのではないか、と思います。
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