ホラアナライオンの進化史

 ホラアナライオン(Panthera spelaea)の進化史に関する概説(Nedoluzhko et al., 2024)が公表されました。ホラアナライオンはヒョウ属の絶滅種で、同じヒョウ属の現生種であるライオン(Panthera leo)やトラ(Panthera tigris spelaea)への一般的関心が高いこともあり、絶滅した更新世大型動物相の象徴的な1種として注目を集めています。ヒョウ属の絶滅種としては、他にはアメリカライオン(Panthera atrox)も知られています。ホラアナライオンは現生ライオン系統と50万年前頃に分岐し、その後の両系統間の遺伝子流動はなかった、と推測されています。当ブログでも、本論文で引用されているホラアナライオンについての研究を取り上げたことがありますが、ホラアナライオンに関する多くの研究は読んでいないので、本論文は私にとってたいへん有益な概説でした。


●要約

 ヒョウ属はアフリカに起源があり、その後でユーラシアや北アメリカ大陸や南アメリカ大陸に広がりました。ヒョウ属内の種は生態系や食物連鎖において支配的地位を占めていますが、気候変動や生態系およびさまざまな他の生態学的要因のため、いくつかのヒョウ属種は絶滅しました。ホラアナライオンは更新世大型動物相の象徴的な1種で、その遺伝学的研究は20万年前頃に始まりました。これまでに利用可能な情報にも関わらず、この頂点捕食者について、分類や個体群の微小進化の過程や更新世と完新世の境界における絶滅原因は不明なままです。この概説は、ホラアナライオンの遺伝学に関する利用可能なデータを体系化し、この動物の研究のための新たな方向性を打ち出すことや、完新世におけるライオンの生存に関する遺伝学的展望の考察を目的としています。


●研究史

 ホラアナライオンは現代のライオンの近縁種で、更新世の全北区の生態系において頂点捕食者でした。ホラアナライオンはアラスカとカナダ北西部からヨーロッパ西部までの地域に広く分布していました。驚くべきことに、ホラアナライオンは14500~12000年前頃に同時に絶滅しました。分布範囲のさまざまな場所で見つかっているホラアナライオン化石数の多さにも関わらず、完全な骨格は、多くは発見されておらず、ホラアナライオンの分類学的位置についての議論につながってきました。まず、ホラアナライオンの骨格と現代のトラとの間の顕著な形態学的類似性から、両者は密接に関連している、との仮定につながりました。さらに、ロシアの古動物学の古典であるニコライ・K・ベラシチジン(Nikolai K. Vereshchagin)の研究では、ホラアナライオンがトラ・ライオン(tigrolev)と命名されました。同時に現在では、ホラアナライオンは現代のライオンの亜種(Panthera leo spelaea)か、絶滅したアメリカライオンとともに独立した種である、と考えられています。ホラアナライオンの種決定における分類学的困難に基づいて、古生物学的研究への分子遺伝学的手法の広範な導入には、ヒョウ属の系統分類学の問題を解決できる大きな可能性があります。ホラアナライオンの分布範囲からの古生物学的資料は、骨や歯や皮膚の断片やミイラ化した遺骸を含めて、系統分類学と系統発生および集団遺伝学的研究両方の可能性を判断します。


●最初の研究と個体のDNA標識

 初めてホラアナライオン標本から抽出された古代DNAの解析の結果が刊行されたのは、20年前でした。研究者は複雑なDNAプライマー体系を用いて、ドイツとオーストリアで発見された、年代がそれぞれ47000年前頃と32000年前頃のホラアナライオンの骨2点からミトコンドリア遺伝子であるcytB(cytochrome b、シトクロームb、1051塩基対)の断片を増幅し、配列決定できました。絶滅したホラアナライオンおよびヒョウ属の他の現代の種のcytBヌクレオチド配列の分析から、ヌクレオチド配列における顕著な違いにも関わらず、現代のライオンはホラアナライオンと最も近い種である、と初めて確証されました。分子時計に基づく手法を用いて、ホラアナライオンは現代のライオンと60万年前頃に共通の祖先を有しており、それはクローマリアン間氷期(Cromerian Interglacial)3もしくは4の前のことだった、と分かりました。

 5年後に、ライオン52個体のミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異性に関するより詳細な分析が行なわれました。この分析には、アフリカとインドの現代のライオンの標本や【絶滅した】ホラアナライオンおよびアメリカライオンの標本が含まれていました。ミトコンドリアゲノムデータを用いて初めて、ヨーロッパ西部およびベーリンジア(ベーリング陸橋)におけるホラアナライオンの個体群間で遺伝的連続性が示されました。ATP(adenosine triphosphate、アデノシン三リン酸)合成酵素8(ATP8)遺伝子およびmtDNAのHVR1(hypervariable region 1、超可変領域1)の配列に基づく系統発生分析によって、ユーラシアのホラアナライオンとアメリカライオンから現代のライオンを区別できるようになりました。系統樹から、ホラアナライオンはアメリカライオンの姉妹群と示唆され、古生物学的データと一致して、アメリカライオンはホラアナライオンに由来する、と仮定されます。

 さらに、アメリカライオンは337000年前頃にホラアナライオンと最終的に分離した、と結論づけられました。ホラアナライオンのミトコンドリアゲノムのヌクレオチド多様性の分析は、48000~46000年前頃の間氷期における遺伝的多様性の顕著な減少を示しました。とくに、この時期以後、調べられた標本間のハプログループの多様性が減少しており、おそらくはホラアナライオンが遺伝的ボトルネック(瓶首効果)を経たことと関連しています。最終氷期極大期(Last Glacial Maximum、略してLGM)後のホラアナライオンの絶滅は、環境変化とヒトの狩猟活動と更新世大型動物相の絶滅と関連する他の要因によって引き起こされた、とこの研究の著者は示唆しています。論証された遺伝的の減少は、後期更新世においてユーラシアとベーリンジアで発見されたホラアナライオンの化石の年代測定と一致します。

 ホラアナライオンと現代のトラおよびジャガー(Panthera onca)との間のミトコンドリアゲノム配列の顕著な違いは、これらの種間の交雑の欠如を示唆しています。これらの種の以前の分布範囲が南北アメリカ大陸(アメリカライオンとジャガー)やアジア中央部および東部(ホラアナライオンとトラ)で交差していたことを考えると、この記述は明らかに追加の研究を必要とします。さらに、ネコ科の種間交雑はかなり一般的な減少で、自然界と動物園の両方で起きます。アメリカライオンの遺伝的起源も核ゲノムの標識を含めて追加の研究を必要としており、それは、ホラアナライオンの姉妹的位置づけが、とくに古典的な動物学者の間で依然として議論になっているからです。

 mtDNAの制御領域とATP8遺伝子の変異関に関するデータが、以前に刊行されたデータ(34点の標本)へのホラアナライオン標本の拡張標本で研究され、14点以上の標本が15500年前頃から最古で55000年以上前となる広範な年代のユーラシアのさまざまな地域から追加されました。制御領域のヌクレオチド配列とATP8遺伝子の断片に基づいて、中央結合網が構築されました。ユーラシアとベーリンジアのホラアナライオンの標本は、2集団に区分できます。一方の集団には37000年以上前の標本が、もう一方の集団には「より古い」標本と「より新しい」標本の両方が含まれます。この知見から、ハプロタイプの一つは37000年前頃以降にホラアナライオン個体群から完全に除去された、と結論づけることができます。

 ホラアナライオンの標本ほとんどはシベリアの領域(ロシア)から分析されたので、ヌクレオチド多様性(π)の分析はこの地域で行なわれ、33000~14000年前頃まで、ホラアナライオンの局所的個体群の遺伝的多様性は62000~48000年前頃の同様の期間より顕著に低かった、と示されました。この筋書きは、更新世動物相の多くの哺乳類標本で記載されてきたことと類似しています。この筋書きは、40000~35000年前頃のシベリアにおけるホラアナライオンの化石記録の間隙、および以前に刊行されたデータとも一致しています。

 さらに、古ゲノム手法が用いられ、個々のホラアナライオン標本の種が特定されました。とくに、チュコート半島(Chukotka Peninsula)のマリー・アニュイ(Malyi Anyui)川の岸で発見された捕食者の毛皮の分析は、3万年前頃までさかのぼり、ホラアナライオンと同定されました。cytB遺伝子配列およびATP8ヌクレオチド配列の比較分析から、この標本は、先行研究で記載され、37000年前頃以前のベーリンジアのホラアナライオン個体群では除去されている、ミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループ(mtHg)Iに属する、と示されました。その後、この動物の毛皮標本を用いて、ミトコンドリアゲノムが再構築されました。


●ホラアナライオンのミトコンドリアゲノム

 分解されたDNAを抽出するための手法とDNAの配列決定と新たに生体情報学的分析手法の発達によって、古生物学的資料が完全なミトコンドリアゲノム、さらには核ゲノムの分析にますます関わるようになっています。これによって、自然では入手がきわめて困難な標本の収集による、絶滅もしくは絶滅危惧種の進化と系統発生の解明のための、新たな機会が開かれます。最初の成功した試みは、ベーリンジア地域に生息していたホラアナライオンのミトコンドリアゲノム2点の刊行に至り、ユーコン(Yukon)準州のクォーツ・クリーク(Quartz Creek)遺跡およびロシアのチュコート半島のマリー・アニュイ川で発見された2点の動物遺骸で実行され、後者の年代は3万年前頃までさかのぼります。ヒョウ属の現代の標本と絶滅したホラアナライオンの完全なミトコンドリアゲノムの比較分析を用いて、絶滅したホラアナライオンの種一が提案され、これは多くの古生物学者の見解と一致します。さらに、ライオンとホラアナライオンとの間の姉妹関係が確証されました。同時に、較正された分子時計を用いて、これら2種は189万年前頃に分岐した、と推定され、その年代は以前に得られた年代大きく異なります。

 13500年前頃と62000年以上前までさかのぼる、分布域のさまざまな地点(現代のロシアとカナダとドイツとオランダとベルギーとオーストリア)のホラアナライオンから得られた部分的なミトコンドリアゲノム配列(7929塩基対)31点を含む、より広範な研究も実行されました(Stanton et al., 2020)。これらのミトコンドリアゲノム配列の比較分析は、ホラアナライオンにおける深く分岐し、よく維持された単系統性の遺伝的な2系統を明らかにしました。これらのうち1系統は、ロシアの古生物学者によってホラアナライオンの明確なベルギー亜種(Panthera spelaea vereshchagini)と同定されたベルギーの標本に相当し、これは上述の古動物学者であるニコライ・K・ベラシチジンに因んで命名され、もう一方の系統はユーラシアのミトコンドリア系統です(Stanton et al., 2020)。さらに、以前に刊行されたベルギーの領域から得られた標本1点は、別のクレード(単系統群)を形成しました。

 分子時計手法を用いて、ホラアナライオンとライオンの祖先の分岐の新たな年代が提案されました。これらの種は185万年前頃に共通祖先を有していた、と仮定されました。ホラアナライオン内では、少なくとも2亜種を特定できることも主張され、それは(1)ユーラシアのホラアナライオンと(2)ベーリンジアのホラアナライオンで、現代のライオンの亜種よりもずっと早い起源となります(Stanton et al., 2020)。

 別の研究は、絶滅したホラアナライオン24個体とアメリカライオン15個体のミトコンドリアゲノムのほぼ完全な配列を再構築しました。これら39点のミトコンドリア配列と先行研究の2点の配列が、中期および後期更新世のヒョウ属のこれら絶滅種の系統発生および系統地理的研究に用いられました。全般的に、得られた結果はホラアナライオンとアメリカライオンの姉妹起源を確証しました。同時に、この研究はエドモントン(Edmonton)の北側(ユーコン準州、北緯64度)のアメリカライオンのハプロタイプのある標本1点を初めて記録し、それはホラアナライオンとアメリカライオンの同所性の確証として役立つかもしれません。放射性炭素(¹⁴C)年代測定によると、この標本の地質年代は5万年以上前で、ベイズ分析によって67000年前頃との推定が可能になりました。さらに、この研究では、ホラアナライオンとアメリカライオンとの間の進化的分岐時期(337000~165000年前頃)が以前に提案されたように修正されました。ユーラシアから北アメリカ大陸までの絶滅したホラアナライオンと他の捕食者(たとえば、ヒグマ)の拡散は同じ波で起きており、氷期極大期と関連する世界的な海洋の推移の変動に依存していた、と仮定されました。

 さらに、多数のライオンおよび先行研究で生成された標本から得られたミトコンドリアゲノム標識の比較分析に基づく別の研究では、ホラアナライオンの系統は175000±8500年前に起源があり、その後で2種、つまりホラアナライオン(131000±3500年前)とアメリカライオン(81000±8000年前)へと分岐した、と示唆されました。


●最初ではあるもの最後ではないホラアナライオンの核ゲノム

 mtDNAと比較して、核ゲノムデータはずっと多くの情報を提供します。核ゲノム解析によって、絶滅種の個体群の歴史の詳細な評価、古代の遺伝子移入の可能性や種の適応と絶滅の原因や動物の家畜化の方向性についての推測などが可能となります(Dehasque et al., 2024、Librado et al., 2024)。残念ながらこれまで、ホラアナライオンのゲノム多様性と個体群動態の歴史について、ほとんど分かっていません。ホラアナライオンはマンモス動物相の頂点捕食者でしたが、ベーリンジアのホラアナライオンの2点のゲノムデータセット(放射性炭素年代では3万年前頃)のみが利用可能で、両者は同じ亜種(Panthera spelaea vereshchagini)に属しています(de Manue et al., 2020)。

 比較ゲノム規模研究では、ロシア(シベリア)とアメリカ大陸北西部(ユーコン準州)のホラアナライオン2個体の網羅率は、それぞれ5.3倍と1.6倍でした。同時に、ライオンは15世紀~1959年の間に収集された12点の歴史時代の標本によって表され、網羅率の範囲は0.16~16.2倍ですが、アフリカとインドの現代の8個体群の網羅率の範囲は4.73~27.26倍でした。ヒョウ属の個体間のゲノムデータに基づく系統発生再構築は、ホラアナライオンの単系統性およびライオンとの共通祖先からの進化的分岐に関する以前の提案を確証します。同じ再構築に基づくと、アフリカとアジアに生息していた現代のライオンは、北部(アジアとアフリカ西部とアフリカ北部の個体群が含まれます)と南部(アフリカ東部とアフリカ南部とアフリカ中央部の個体群が含まれます)の主要な2系統に区分できます。これら2系統は7万年前頃に分岐しました。しかし、これらの個体群間のその後の遺伝子流動が持続し、ライオンの分布範囲の断片化とアジアおよびアフリカ北部における絶滅のため、中断されました。インドのギル森林国立公園(Gir Forest National Park)の唯一残っている個体群は、近親交配による衰退ときょくたんに低い有効個体群規模が論証されました(de Manue et al., 2020)。

 長期にわたるライオンとホラアナライオンとの間の分岐時期に関する議論(Stanton et al., 2020)を考えると、核ゲノムデータによってこの問題を解明できるようになりました。この問題を解決するため、3通りの独立した手法が同時にもちられ、それは、(1)PSMC(pairwise sequentially Markovian coalescent、対での逐次マルコフ合着)、(2)プリン-ピリミジンDNA変異に基づく核ゲノム配列の分岐評価、(3)ホラアナライオンに由来するかもしれない現代のライオンのゲノムにおける異型接合的なアレル(対立遺伝子)の数(約15%)に依拠していました。この研究は、5年間の以前に説明された世代媒介変数や、1世代あたり4.5 × 10⁻⁹の変異頻度も使用しました。これら3通りの手法から、この2種【ライオンとホラアナライオン】の分岐年代は50万年前頃と示唆されました(de Manue et al., 2020)。

 この研究のもう一つの要点は、D統計の使用によるホラアナライオンと現代のライオンの祖先との間の、この2種の分岐後の遺伝子流動の可能性の推定です。この分析では、ライオンのさまざまな個体群のすべての利用可能なゲノムデータセットが組み合わされ、それは、アフリカと中東にかつて生息していた12点の歴史時代の標本、アフリカとインドの現代のライオンの6点の標本、シベリアと北アメリカ大陸のホラアナライオンの2点のゲノムデータセット、外群としてのウンピョウ(Neofelis nebulosa)です。その結果、現代のライオンとシベリアのホラアナライオンとの間では遺伝子流動がなかったか最小限だった一方で、北アメリカ大陸のユーコン準州のホラアナライオンは現代の南アフリカ共和国のライオン個体群と顕著な数のアレルを共有しており、これは明らかに北アメリカ大陸のホラアナライオンの古代ゲノムの低網羅率に起因する、と示されました(de Manue et al., 2020)。

 2017~2018年には、「ボリス(Boris)」および「スパルタ(Sparta)」と命名された化石化したホラアナライオンの幼獣が、ロシアのヤクーチア(Yakutia、サハ共和国)のセミュエリャーク川(Semyuelyakh River)の岸で発見されました。これら2点の新たな標本は、放射性炭素年代測定法を用いて、較正年代で48752~44163年前頃と推定されました。予備的なゲノム解析が実行され、これら標本2点の分子特定が決定されましたが、ゲノムデータはまだ刊行されていません。


●まとめ

 ホラアナライオンは更新世大型動物相の象徴的な1種で、その多数の化石化した遺骸が、これまでユーラシアと北アメリカ大陸で発見されてきました。同時に、蓄積された遺伝学的資料は更新世動物相のもう一つの重要な要素であるケナガマンモス(Mammuthus primigenius)には匹敵しません(Dehasque et al., 2024)。これら2種【ホラアナライオンとケナガマンモス】は最上位で、いくつかの例外があるものの、その分布範囲全体で両者ともほぼ同時に絶滅した更新世から完新世にかけての移行期まで、環境と生物群集を大きく形成しました。

 ホラアナライオンについてのミトコンドリアゲノム標識のデータの相対的多さにも関わらず、ミトコンドリアゲノム標識を用いてのホラアナライオンの分岐の年代測定は大きく異なります。ホラアナライオンの分布のさまざまな地域の個体間の遺伝的クラスタ化(まとまり)は、群を形成する可能性が高いことと、ミトコンドリアゲノム標識の母系での敬称を考えると、完全に正しいわけではありません。ホラアナライオンおよびその祖先と現代のライオンとの間の進化的分岐の年代は不明なままで、放射性炭素年代測定と古代DNAの抽出および配列決定の追加の信頼できる標本が必要です。

 これまでに、ホラアナライオンについては2点の核ゲノムのみが刊行されて利用可能です。この2点は両方ともベーリンジア地域で発見され、年代は3万年前頃です。シベリアの1点の標本のみが、深い網羅率です(de Manue et al., 2020)。それにも関わらず、このゲノムデータセットは、長期のホラアナライオンの個体群動態の歴史、もしくは他の更新世種とともに起きたあり得る絶滅原因の理解に充分ではありません。

 アジア中央部および東部の分布端に生息していたホラアナライオン標本のゲノム規模研究も重要な分野で、アジア中央部および東部では、現代のアジアのライオンの祖先とホラアナライオンとの間遺伝子移入交雑の可能性があり、これら2種間の交雑に対する既存の障壁は、ホラアナライオンの有効個体群規模が急激に14500~12000年前頃に急激に減少した時期に破れました。

 最後に、ホラアナライオン(アメリカライオンも同様です)に関する新たな古ゲノムデータが、全北区地域のヒョウ属の現代および絶滅構成員の分子進化に関する今後の研究や、更新世大型動物相の大量絶滅および短期の絶滅の原因の理解にひじょうに重要です。


参考文献:
de Manuel M. et al.(2020): The evolutionary history of extinct and living lions. PNAS, 117, 20, 10927–10934.
https://doi.org/10.1073/pnas.1919423117
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Dehasque M. et al.(2024): Temporal dynamics of woolly mammoth genome erosion prior to extinction. Cell, 187, 14, 3531–3540.E13.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2024.05.033
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Librado P. et al.(2024): Widespread horse-based mobility arose around 2,200 BCE in Eurasia. Nature, 631, 8022, 819–825.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07597-5
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Nedoluzhko A. et al.(2024): 20th anniversary of the history of genetic research on cave lions: A short review. Earth History and Biodiversity, 2, 100013.
https://doi.org/10.1016/j.hisbio.2024.100013

Stanton DWG. et al.(2020): Early Pleistocene origin and extensive intra-species diversity of the extinct cave lion. Scientific Reports, 10, 12621.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-69474-1
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