社会的協力の維持

 社会的協力の維持に関する研究(Michel-Mata et al., 2024)が公表されました。評判はヒト社会においてきわめて重要で、個々人はその社会的地位に応じて異なる扱いを受けます。たとえば、他者を助けて良い評判を獲得すると、その人は第三者から見返りを受ける可能性が高くなります。このように広範な協力を得るには、評判が行動を正確に反映していなければならず、個々人が互いの地位について同意している必要があります。少数の例外はありますが、理論研究ではこれまで情報が限定的と仮定されていたため、共感や噂、公的機関といった合意を強要する機構がない限り、意見の一致は阻まれると考えられてきました。そうした機構は、共感や効果的な意思疎通や機関への信頼が損なわれた世界では、課題に直面します。しかし、他者に関する情報は現在、特にソーシャルメディアを通じて豊富かつ容易に入手可能です。

 本論文は、悪い行為に対してある程度寛容である場合、ある人に関する複数の観察結果を統合し、私的な評判を決めることで、行動を正確に把握し、強制的な機構がなくても新しい合意を促し、協力を維持できようになる、と実証します。この知見は、判断の一次規範と二次規範の両方に対して成り立ち、集団内で規範が異なる場合も堅牢です。この統合規則自体の進化が可能な場合に、選択は実際に複数の観察と寛容な判断を優先します。ただ、情報が自由に得られる場合でも、人々は通常その全てを使うようには進化しません。評判を見積もる本論文の方法は、簡潔に表現すると「二度見て、一度許す」というもので、ヒト社会の初期に誕生したほど充分に単純である一方で、社会的な経験則の基本要素として維持されるほど充分に強力なものです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


社会進化学:情報が豊富な状況における私的評判の進化

社会進化学:「二度見て、一度許す」という解決策

 情報が氾濫する中で、他者に対する評判を正確に判断するにはどうすれば良いだろうか。今回、その人について得られる情報のほんの一部を調べるだけで評価は可能だが、一度だけなら悪い行為を許す心構えも必要であることが示された。



参考文献:
Michel-Mata S. et al.(2024): The evolution of private reputations in information-abundant landscapes. Nature, 634, 8035, 883–889.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07977-x

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