ライオンの歯に挟まっていた毛から得られた獲物のDNA

 ライオンの歯に挟まっていた毛から得られた獲物のDNA解析結果を報告した研究(Flamingh et al., 2024)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、ケニアの1890年代にツァボライオン(Tsavo lion)の歯に挟まっていた獲物の毛のDNA解析から、キリンやヒトやウォーターバックやヌーやシマウマを特定しています。こうした古代DNA研究の進展によって、肉食動物の狩猟行動や食性や生態も解明できるようになり、時空間的に広範囲のさまざまな分類群への応用が期待されます。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。


●要約

 最近の進歩によって、系統ゲノム解析のための核ゲノムデータが、ごく少量のDNA[1]および100万年以上前の標本[2]から配列できます。毛髪のDNA解析は、法医学や野生動物の保護で広く用いられている、充分に確立された手法です。毛髪標本は効率的に除染でき、毛髪が抜け落ちた哺乳類種を特定するために使用できます。本論文は、ケニアで1890年代に生きていたツァボライオン2頭の歯に密集した毛から食餌の獲物を系統的に特定するため、分解したDNAに最適化された進歩の使用を目指します。毛のDNAの解析はキリンやヒトやオリックスやウォーターバックやヌーやシマウマを獲物として特定し、ライオンに由来する毛も特定されました。

 DNAの保存によって、シマウマとキリンとライオンの完全なミトコンドリアゲノム特性の分析が可能となりました。キリンのミトコンドリアゲノムは系統地理的に区分されており、ライオンはケニア南東部で通常見られるマサイキリン(Giraffa tippelskirchi tippelskirchi)の亜種に属する少なくとも2個体を食べていた、と分かりました。毛の標本から得られたライオンのミトコンドリアゲノムはツァボライオンの内在性ミトコンドリアゲノム度同一で、ケニアとタンザニアの他のアフリカ東部ライオンと最も密接に一致しました。本論文の手法は、歴史的個体群や集団や種の狩猟行動と食性と生態のより深い理解を可能とし、絶滅した集団や種についても期待されます。以下は本論文の要約図です。
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●歯腔の毛から得られた古代DNA

 毛から得られた核DNAの先行研究は通常、無傷で分解されていない小胞細胞およびその関連するDNAに依拠します。しかし、分子方法論の進歩によって今や、無傷の毛包のない毛幹からのDNA解析が可能です。ツァボライオン両個体は歯の損傷を示し、部分的に犬歯が損なわれており、獲物の毛が蓄積された歯腔を示します。たとえば、ライオンFMNH 23970には、ひどく損なわれた右側下顎犬歯があります。これらの歯腔の個々の毛幹と毛の塊(毛の断片の塊)から、DNAの抽出に成功しました(図1)。以下は本論文の図1です。
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 4点の毛のうち3点とすべての毛の塊で、獲物かもしれない種のDNA配列が生成され(図2)、古代/歴史時代の分解されたDNAに典型的な損傷パターンがありました。ヒトのミトコンドリアゲノムにマッピング(多少の違いを許容しつつ、ゲノム配列内の類似性が高い処理を同定する情報処理)された毛標本4号と、ライオンの全ゲノムにマッピングされた毛標本5号と、キリンの全ゲノムにマッピングされた毛標本6号から、DNA配列読み取りで古代DNAに典型的なヌクレオチドの脱アミノ化(5’末端でのシトシンからチミンへの置換と、3’末端でのグアニンからアデニンへの置換)が確証されました。限定的なDNA配列データおよび/もしくは特徴酒足られ参照ゲノムの欠如のため、すべての獲物種で脱アミノ化パターンが検証されたわけではありません。古代DNAの結果は、微視的に特定された毛で補完して、分析されました。以下は本論文の図2です。
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●メタゲノミクスと顕微鏡検査と歴史的記録の使用による21点の獲物とライオンかもしれないミトコンドリアゲノムで構成されるmtDNA参照データベースに含まれる分類群の判断

 ミトコンドリアDNA(mtDNA)が核DNAより高い網羅率で毛から回収され、毛は外部供給源からのDNA汚染の影響を受けにくいため、種同定のためのmtDNA特有の参照データベースの開発に焦点が当てられました。毛のメタゲノム特性と毛の顕微鏡検査と種の範囲の歴史的説明が含まれる補完的手法を通じて、潜在的な獲物種の一覧が編集されました。メタゲノム分類では潜在的な27種が、顕微鏡検査分析では潜在的な16種が得られました。既知の種と範囲および歴史的記録を用いて、この一覧が1890年代にツァボ地域でライオンに食べられた潜在的な22の獲物種に絞られました。ショットガン配列決定データをmtDNA参照データベースに配置すると、毛標本1号と負の制御ではどの種でもマッピングは10読み取り未満でしたが(図2)、他の全ての毛標本では個々の種(2~4号)もしくは種の集合(5~7号)に相当するDNAが得られました。

 その後の分析では、mtDNA参照データベースの他種よりも網羅率の幅(%)と深度(倍)のある種に焦点が当てられました。読み取り整列、つまり配列決定読み取りが位置づけられる獲物のミトコンドリアゲノム全体にわたる領域は、標的種のミトコンドリアゲノム全体にわたって一貫した網羅率を示しました。このパターンは、獲物の同定が保存されたミトコンドリアゲノム領域もしくは哺乳類の分類群全体の遺伝子の結果ではなかったことを示唆します(たとえば、図3)。個々の毛標本(2~4号)について単一の獲物種が、複数の毛標本(塊5号および6号)で構成される毛塊について複数の獲物種が特定され、毛標本の汚染率が低いことと一致します。以下は本論文の図3です。
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●毛はキリンやヒトやライオンやオリックスやウォーターバックやヌーやシマウマと一致します

 mtDNA参照データベースにおける他の種と比較しての各種についての網羅率の深度(倍)と幅(%)の包括的に基づいて、ツァボライオンはキリンやヒトやオリックスやウォーターバックやヌーやヌーやシマウマを消費した、と推測されました。ツァボライオンはヒトを捕食した、と知られています。毛標本4号はヒトのミトコンドリアゲノムと一致し、古代/歴史時代の分解したDNAに典型的な特徴的脱アミノ化パターンを示しました。毛標本4号についてコンセンサス配列が生成され、MITOMASTERを用いて、ミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループ(mtHg)K2a(K2a2a1)と予測されました。それらの部位にマッピングされた個々の読み取りを調べることで、ハプログループ予測に用いられる多様体部位が検証されました。

 この計画でヒト遺骸が確証されたので、この手法を用いて、この毛が属する個人の祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)および関連する民族の推測は控えられます。第一に、このデータ分析はこの個体の多くの祖先の一つのみ(直接的な母系)をたどります。第二に、mtHg-Kはアフリカ東部のヒト集団で確認されてきましたが、アフリカにおける標本抽出は疎らで、この地域のほとんどの研究は、古代の人口統計学的事象をより深く理解するために先住民共同体を対象とし、より新しい植民地期の移動に由来するmtDNAの差異を見落とす傾向にあります。第三に、現在この地域には依然として子孫がいるかもしれず、責任ある科学の実行のためには、この計画のヒトの側面を拡張しようと、共同体に基づく方法を用いつつあります。人類学的手法は、この計画についての地元の機関や集団との議論と、本論文の範囲外である、この地理的地域の詳細なヒトの植民の歴史の報告を必要とします。

 毛標本6号のDNA配列決定読み取りについて、個々の読み取りがベイサオリックス(Oryx beisa)かオグロヌー(Connochaetes taurinus)のどちらかのミトコンドリアゲノムとのみと位置づけられるのかどうか、調べられました。関連する種間もしくは哺乳類および脊椎動物全体の機能的特徴と関連する保存された遺伝子領域間で保存された遺伝的距離のため、一部の読み取りは複数の種のミトコンドリアゲノムと一致するかもしれません。遺伝子銀行のNCBI(National Center for Biotechnology Information、アメリカ国立生物工学情報センター)非冗長ヌクレオチドデータベースとのBLAST(Basic Local Alignment Search Tool 、基礎局所配列探索手法)比較を用いて、オリックスとヌー両方のミトコンドリアゲノム、および新規変異(de novo変異、親の生殖細胞もしくは受精卵や早期の胚で起きた変異)と分類された残りの読み取りと一致する読み取りが除外されました。その後、遺伝子銀行で識別された最上位の的中(最も近い一致)が記録されました。元々はヌーのミトコンドリアゲノムのみと一致する読み取りの70%以上は、遺伝子銀行において最も骨折に一致するヌー(ヌー属)として規定された新規変異でもあり、元々はオリックスと一致する読み取りの72%以上は、遺伝子銀行において最も密接に一致するオリックス(オリックス属)としても同定されました。ほとんどのオリックスの読み取りはアフリカ東部のオリックスであるベイサオリックスと一致し、DNAの信頼性をさらに裏づけます。

 獲物種としてのヌーの同定は、1890年代における歴史的分布を考えると興味深く、ツァボライオンの範囲が以前に考えられていたよりも大きな地理的領域だったか、ヌーが1890年代にはツァボ地域内に存在したことを示唆します。ツァボの「人喰い」が1898年に殺害されたツァボ・アティ(Tsavo-Athi)合流点のフーにとって最も近い草を食べる生息地は西方と北西と南方に約90kmの場所でした(ツァボ川の源流、アティ川流域、ケニアとタンザニアの国境)。鉄道建設と関連するヒトへの攻撃は1898年4月に始まり、2頭のライオンは1898年5月~11月の間のこの地域を放棄しました。6ヶ月間の不在時に、ライオン23969号がヌーとシマウマの移動する群を利用出来るより生産的な環境へと90km移動したかもしれません。


●内在性のライオンのDNAとの毛塊6号の比較から示唆される自己もしくは他個体との毛づくろい

 毛塊6号からのDNA読み取りは、ライオンのミトコンドリアの参照ゲノムと一致しました。歯腔のライオンの毛は自己毛づくろいもしくは、同盟の形成が知られているライオン2個体間の他個体との毛づくろい(相互の毛づくろい)あるいは共食いに起因するかもしれません。しかし、種内殺害(たとえば、乳児殺し)はライオンでは一般的ですが、共食いは稀です。これを調べるため、骨と歯の粉末の内在性DNA(以後、「内在性ミトコンドリアゲノム」と呼ばれます)を用いて、各ライオンについて独立してミトコンドリアゲノム特性が生成されました。この毛塊6号のミトコンドリアゲノムと各ライオンの内在性ミトコンドリアゲノムが、118頭歴史時代および現在のライオンの大陸規模のデータセットと比較されました。

 毛塊6号のミトコンドリアゲノムは内在性のミトコンドリアゲノム(FMNH 23970)と正確に一致し、他の内在性ミトコンドリアゲノム(毛塊6号を含む歯の断片を有するライオンである、FMNH 23969)とはわずか2ヶ所のヌクレオチド塩基のみが異なっていました。ツァボライオンのミトコンドリアゲノム間の違いは、塩基転位(transition、略してTi、ピリミジン塩基間もしくはプリン塩基間の置換)を有する2ヶ所の部位に限定されています。DNA分解中における塩基の脱アミノ化に起因する塩基転位は古代/力士的DNAに特徴的で、DNA断片の5’末端におけるシトシンからチミンおよび3’末端におけるグアニンからアデニンの予測されるパターンの検査によってDNAの信頼性が確証されます。内在性DNAにおけるDNAの脱アミノ化が、定量化されて確証されました。7389ヶ所の部位がFMNH 23969におけるシトシンヌクレオチドとFMNH 23970および毛塊6号におけるチミンヌクレオチドとして、9476ヶ所の部位がFMNH 23969におけるアデニンヌクレオチドとFMNH 23970および毛塊6号におけるチミンヌクレオチドとして特定されました。

 これらの塩基の違いは異質性(heteroplasmy、個体ごとの複数のミトコンドリアゲノムの存在)を示唆しているかもしれませんが、本論文の結果から、脱アミノ化はツァボライオンがDNA分解に起因する違いのある同じ母系継承のミトコンドリアゲノムを共有していた、と示されます。共有されているミトコンドリアゲノムは、ツァボライオンが母親から同じミトコンドリアゲノムを継承したキョウダイであることと一致します。したがって、本論文の結果から、ツァボライオンの毛は毛づくろいを通じてツァボライオン1頭からFMNH 23969の歯腔へと伝わった、と示唆されますが、自己毛づくろいもしくは他個体との毛づくろいを区別するのにmtDNA解析が必要でしょう。

 大陸規模のミトコンドリアゲノムと比較して、ツァボライオンのミトコンドリアゲノムはケニアとタンザニアのライオンと最も密接に一致し、アフリカ東部のハプロタイプとクラスタ化します(まとまります)。毛塊6号とFMNH 23970で共有されるミトコンドリアゲノムと、ツァボの毛および内在性ミトコンドリアゲノムとアフリカ東部のライオンとのクラスタ化は、さらに毛のDNAが本物と証明します。この研究の範囲はライオンの獲物種の方法論的同定に焦点を当てていますが、ツァボライオンのmtDNAの抽出成功は、その核ゲノムの将来の分析を有望とします。


●系統発生分析によって明らかになるツァボ地域に典型的なマサイキリンの亜種2個体との一致

 ゼブラ(毛塊5号)とキリン(毛塊6号)のほぼ完全な(97%超)網羅率のミトコンドリアゲノムが生成されました(図2)。毛のDNAの最終的なコンセンサスミトコンドリアゲノム配列は、遺伝子銀行のサバンナシマウマと最も密接に一致します。サバンナシマウマの亜種はmtDNAのみを用いては区別できませんが、大陸のデータが利用可能なシマウマのミトコンドリアゲノムの309塩基対領域とのBLAST比較は、毛のDNA配列と最も密接に一致するものとして、西ツァボの1個体(TW528)を特定しました(毛のDNAの読み取り網羅率は309塩基対領域の256塩基対で3倍以上)。

 対照的に、キリンの分類群はmtDNAクレード(単系統群)の地理的構造化を示します。最尤系統樹推定を含めてキリン4種の完全なミトコンドリアゲノムで系統地理分析が実行され、このキリン4種には、地理的範囲で限定的に重なる9亜種が集合的に含まれます(図4)。ミナミキリン(Giraffa giraffa)はアフリカ南部にしか存在しませんが、マサイキリン(Giraffa tippelskirchi)とキタキリン(Giraffa camelopardalis)とアミメキリン(Giraffa reticulata)はケニアにおいて側所性で存在します。ゲノム解析は、これらの種間の限定的な交雑を論証してきました。キリンの分類群では、マサイキリン亜種(Giraffa tippelskirchi tippelskirchi)は現時点で(および歴史的に)ケニアのツァボ地域で見られます(図4)。この分布と一致して、毛塊6号と毛塊7号のミトコンドリアゲノムはマサイキリン亜種と一致する、と分かりました(図4)。これらのミトコンドリアゲノムは系統発生では別々の枝を構成し、毛塊7号とマサイキリン亜種の参照ゲノムは毛塊6号と姉妹クレードを形成します。このパターンは、マサイキリン亜種内の歴史的もしくは既存の遺伝的差異を表しているかもしれず、追加の歴史的および現在の個体群でのさらなる分析が必要です。以下は本論文の図4です。
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 マサイキリン亜種にマッピングされた毛塊6号の読み取りについて、異なる二つの遺伝的多様体特性が観察されました。多様体特性はハプロタイプ配列の重複する一式のようである複数の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism、略してSNP)で構成されており、この毛塊が異なるキリン2個体に由来し、ツァボライオンは同じ分類群のキリンを少なくとも2頭食べており、各キリンは異なるハプロタイプを有している、と示唆されます。同じ毛塊内のこの異なるパターンが異質性を表しているかもしれない可能性もあります。


●まとめと示唆

 本論文で提示された手法は、歴史時代の個体群や集団や種の狩猟行動や食性や生態の理解に寄与します。限定的な獲物の利用可能性のような要因に加えて、ライオンの歯の損傷はヒトおよびその家畜動物の獲物のへの切り替わりの駆動体として提案されてきました。本論文では、ツァボライオンの食性にはグレーザー(おもに草本を採食する動物で、たとえばシマウマ)とブラウザー(低木の葉や果実を食べる採食動物で、たとえばキリン)両方が含まれていた、と示唆され、少なくとも1頭のライオン(FMNH 23970)はヒトを獲物としていました。獲物への切り替わりは、歯腔の毛髪の層序のゲノム解析を通じてさらに調査でき、歯腔の底部の毛は生涯の初期に捕獲した獲物を、歯腔の表面の毛はより新しい獲物を表しています。

 本論文で使用された技術は、最近の歴史的および古代の集団における捕食者と獲物の動態の記録についての見込みを示します。たとえば、歴史時代もしくは古代の同様の歯腔からの毛の分析は捕食者と獲物の相互作用に光を当てるかもしれず、層序的手法と組み合わせるならば、個体の生涯における獲物の選好の変化を明らかにできます。古代DNA手法は毛の分析にとくに役立ち、それは、毛の分析が低品質で分解されたDNA含有量に最適化されているからです。さらに、毛の標本は歴史時代の標本での研究にとってDNAの貴重な供給源です。

 本論文では、博物館標本の肉食動物の歯腔の古代DNA解析は、毛が由来する獲物種の特定に使用できる、と示されました。先行研究では、スイギュウやキリンやサバンナシマウマやウォーターバックがツァボ地域の現在のライオンによって消費される生物量の70%以上を構成する、と推定されました。これと一致して本論文は、現在のツァボライオンが食べる獲物の大半をまとめて構成する4種のうち3種(キリンとサバンナシマウマとウォーターバック)を特定し、歴史時代の集団および種の食べる獲物と狩猟行動の理解への可能性を論証します。たとえば、本論文のゲノム結果のスイギュウのDNAの欠如と、顕微鏡検査を通じて特定された1点だけのスイギュウの毛は、1890年代におけるアフリカへの牛疫の侵入に起因するかもしれず、この牛疫はウシのヤク90%を殺し、スイギュウには同様の影響を及ぼしました。

 メタゲノムおよび顕微鏡検査手法は補完的と分かりましたが、それぞれ独自に、最終mtDNA参照データベースに含まれる種の少なくとも一部を特定しました。たとえば、メタゲノム解析ではなく顕微鏡検査分析は、ライオンにとって高位選好獲物種であるエランドを、ツァボライオンの潜在的な獲物種として特定しましたが、顕微鏡検査ではなくメタゲノム解析は、ツァボライオンの潜在的な獲物種としてヌーを特定しました。したがって、mtDNAの獲物識別データベースに含まれる分類群一覧を作成しようとする研究者は複数の手法を用い、その中には先住民の地域を考慮しているかもしれない、種の範囲の歴史的記録の取り込みが含まれる、と提案されます。異なる毛の標本がメタゲノム解析および顕微鏡検査で使用されましたが、この2手法間には重複する結果があり、それは、両手法がウマ属やウォーターバック属やオリックス属やヒョウ属や現生人類(Homo sapiens)を特定したからです。これらの結果は、博物館学の新たな分野の一部としての、メタゲノムおよびミトコンドリアゲノム手法の有用性を物語っています。


参考文献:
Flamingh A. et al.(2024): Compacted hair in broken teeth reveals dietary prey of historic lions. Current Biology, 34, 21, 5104–5111.E4.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.09.029

[1]Essel E. et al.(2023): Ancient human DNA recovered from a Palaeolithic pendant. Nature, 618, 7964, 328–332.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06035-2
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[2]Valk T. et al.(2021): Million-year-old DNA sheds light on the genomic history of mammoths. Nature, 591, 7849, 265–269.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03224-9
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