哺乳類の顎関節の起源
哺乳類の顎関節の起源に関する研究(Rawson et al., 2024)が公表されました。荷重を支える歯骨–鱗状骨間の顎関節の獲得は、哺乳類進化における重要な段階の一つでした。この新機軸は数十年にわたって研究されてきましたが、哺乳類様の頭蓋–顎間接触が進化した時期や頻度に関しては不明な点が残っており、その解明は、非哺乳型類のキノドン類(犬歯類)から哺乳型類への移行期を網羅する三次元データの不足によって妨げられています。非哺乳型類キノドン類である派生的なプロバイノグナトゥス類が南アメリカ大陸で新たに複数発見されたことは、この議論に大きく寄与する、と考えられます。
本論文はこの課題に取り組むため、マイクロCT(コンピューター断層撮影)スキャンを用いて、重要な3種のプロバイノグナトゥス類キノドン類、つまり哺乳型類の姉妹群に属するブラジロドン・クアドラングラリス(Brasilodon quadrangularis)、トリテレドン類に近縁なリオグランディア・グアイベンシス(Riograndia guaibensis)、トリティロドン類のオリゴキフス・メジャー(Oligokyphus major)の顎関節の構造を復元しました。
その結果、哺乳型類への移行の過程において顎関節に同形形質的な進化が見いだされ、イクチドサウルス類(リオグランディアおよびトリテレドン類)が、歯骨–鱗状骨間の接触を、この特徴が後期三畳紀の哺乳型類で最初に出現する約1700万年前に独自に進化させた、と明らかになりました。また、ブラジロドン・クアドラングラリスは、以前の報告とは異なり、初期的な歯骨の関節丘および鱗状骨の関節窩を欠き、その顎は原始形質的な方形骨–関節骨間の接合のみを用いて連結されていました。
こうした顎関節はプロバイノグナトゥス類キノドン類において顕著な進化的変化を遂げた、と考えられます。プロバイノグナトゥス類の一部のクレード(単系統群)は独自に頭蓋–下顎間の「二重」の接触を獲得し、哺乳型類は後期三畳紀において、明確な歯骨関節丘と鱗状骨関節窩を有する歯骨–鱗状骨関節をまったく独自に獲得しました。したがって、これまで典型的な哺乳類の特徴と考えられてきた歯骨–鱗状骨間の接触は、複数回進化した、従来想定されていたより進化的に柔軟な特徴となります。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化:哺乳類の顎関節の起源を調査する
哺乳類に似た顎関節は、哺乳類に現れた時期よりも約1,700万年も前に、哺乳類の親戚の中で独自に進化した可能性があることが、2億2,500万年前の化石の分析から示唆されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。この発見は、化石記録におけるこの種類の顎関節の最古の例であり、この重要な構造の起源を解明する手がかりとなるかもしれない。
哺乳類の重要な特徴のひとつは蝶番のような顎関節であり、下顎の歯骨と頭蓋底の鱗状骨の接触部である。この関節はこれまでにも広く研究されてきたが、哺乳類におけるその進化については疑問が残っている。現生哺乳類はシノドント類と呼ばれるより大きな動物グループから進化したことが知られており、その初期の形では、下顎の関節骨と頭蓋骨の方形骨という、全く異なる2つの骨から顎関節が構成されていた。この進化の変遷は、哺乳類の進化を理解する上で重要である。
James Rawsonらは、ブラジルの三畳紀におけるシノドント類の化石であるBrasilodon quadrangularisおよびRiograndia guaibensisの顎関節の解剖学的構造を再構築するために、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCTスキャン)を使用した。R. guaibensisの顎関節は、B. quadrangularisよりも現生哺乳類の顎関節とより類似しており、歯骨・鱗状骨の接触がはっきりしているものの、B. quadrangularisの方が現生哺乳類により近縁である。この発見は、Riograndiaの歯骨・鱗状骨の接触は、標準的な哺乳類の歯骨・鱗状骨の関節とは完全に独立して進化した(約1,700万年前に)に違いないことを示唆している。
著者らは、この関節が哺乳類の祖先の関節とは独立して進化したと示唆しており、この特徴は一度以上進化していることを示している。
古生物学:ブラジルの化石から明らかになった、最古の哺乳類型顎関節におけるホモプラシー
古生物学:哺乳類型の顎関節の予想以上に古い起源
哺乳類の主要な特徴の1つは、蝶番のような顎関節に関するものである。今回、哺乳類型の顎関節は、それが哺乳類で現れるより約2000万年早い時期に、キノドン類(犬歯類)と呼ばれる哺乳類の近縁動物で全く独自に進化したことが明らかにされた。
参考文献:
Rawson JRG. et al.(2024): Brazilian fossils reveal homoplasy in the oldest mammalian jaw joint. Nature, 634, 8033, 381–388.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07971-3
本論文はこの課題に取り組むため、マイクロCT(コンピューター断層撮影)スキャンを用いて、重要な3種のプロバイノグナトゥス類キノドン類、つまり哺乳型類の姉妹群に属するブラジロドン・クアドラングラリス(Brasilodon quadrangularis)、トリテレドン類に近縁なリオグランディア・グアイベンシス(Riograndia guaibensis)、トリティロドン類のオリゴキフス・メジャー(Oligokyphus major)の顎関節の構造を復元しました。
その結果、哺乳型類への移行の過程において顎関節に同形形質的な進化が見いだされ、イクチドサウルス類(リオグランディアおよびトリテレドン類)が、歯骨–鱗状骨間の接触を、この特徴が後期三畳紀の哺乳型類で最初に出現する約1700万年前に独自に進化させた、と明らかになりました。また、ブラジロドン・クアドラングラリスは、以前の報告とは異なり、初期的な歯骨の関節丘および鱗状骨の関節窩を欠き、その顎は原始形質的な方形骨–関節骨間の接合のみを用いて連結されていました。
こうした顎関節はプロバイノグナトゥス類キノドン類において顕著な進化的変化を遂げた、と考えられます。プロバイノグナトゥス類の一部のクレード(単系統群)は独自に頭蓋–下顎間の「二重」の接触を獲得し、哺乳型類は後期三畳紀において、明確な歯骨関節丘と鱗状骨関節窩を有する歯骨–鱗状骨関節をまったく独自に獲得しました。したがって、これまで典型的な哺乳類の特徴と考えられてきた歯骨–鱗状骨間の接触は、複数回進化した、従来想定されていたより進化的に柔軟な特徴となります。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化:哺乳類の顎関節の起源を調査する
哺乳類に似た顎関節は、哺乳類に現れた時期よりも約1,700万年も前に、哺乳類の親戚の中で独自に進化した可能性があることが、2億2,500万年前の化石の分析から示唆されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。この発見は、化石記録におけるこの種類の顎関節の最古の例であり、この重要な構造の起源を解明する手がかりとなるかもしれない。
哺乳類の重要な特徴のひとつは蝶番のような顎関節であり、下顎の歯骨と頭蓋底の鱗状骨の接触部である。この関節はこれまでにも広く研究されてきたが、哺乳類におけるその進化については疑問が残っている。現生哺乳類はシノドント類と呼ばれるより大きな動物グループから進化したことが知られており、その初期の形では、下顎の関節骨と頭蓋骨の方形骨という、全く異なる2つの骨から顎関節が構成されていた。この進化の変遷は、哺乳類の進化を理解する上で重要である。
James Rawsonらは、ブラジルの三畳紀におけるシノドント類の化石であるBrasilodon quadrangularisおよびRiograndia guaibensisの顎関節の解剖学的構造を再構築するために、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCTスキャン)を使用した。R. guaibensisの顎関節は、B. quadrangularisよりも現生哺乳類の顎関節とより類似しており、歯骨・鱗状骨の接触がはっきりしているものの、B. quadrangularisの方が現生哺乳類により近縁である。この発見は、Riograndiaの歯骨・鱗状骨の接触は、標準的な哺乳類の歯骨・鱗状骨の関節とは完全に独立して進化した(約1,700万年前に)に違いないことを示唆している。
著者らは、この関節が哺乳類の祖先の関節とは独立して進化したと示唆しており、この特徴は一度以上進化していることを示している。
古生物学:ブラジルの化石から明らかになった、最古の哺乳類型顎関節におけるホモプラシー
古生物学:哺乳類型の顎関節の予想以上に古い起源
哺乳類の主要な特徴の1つは、蝶番のような顎関節に関するものである。今回、哺乳類型の顎関節は、それが哺乳類で現れるより約2000万年早い時期に、キノドン類(犬歯類)と呼ばれる哺乳類の近縁動物で全く独自に進化したことが明らかにされた。
参考文献:
Rawson JRG. et al.(2024): Brazilian fossils reveal homoplasy in the oldest mammalian jaw joint. Nature, 634, 8033, 381–388.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07971-3
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