デニソワ人とアジア東部のホモ属の系統関係

 ヒト進化研究ヨーロッパ協会第14回総会で、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)とアジア東部のホモ属の系統関係についての研究(Gousset et al., 2024)が報告されました。本論文は、デニソワ人とアジア東部で発見された中期~後期更新世の分類に議論があるホモ属遺骸との系統関係を検証しています。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P68)。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。

 アジア東部大陸部には、少なくとも3種の人類が居住しており、それは、ホモ・エレクトス(Homo erectus)と現生人類(Homo sapiens)と少なくとも1種の年代的に両者(ホモ・エレクトスと現生人類)の中間の分類群で、この分類群の単一性や帰属や他種との系統発生的関係は、激しく議論されています。問題の化石標本は、以下の1か2か3集団へとさまざまに分類されており、それは、(1)分子データを通じて特定された、稀で断片的な化石であるデニソワ人(関連記事)、(2)とくに完全な頭蓋に基づいて最近記載された[2]種であるホモ・ロンギ(Homo longi)、(3)分類学的に非公式な「古代型ホモ・サピエンス」です。

 歯はこれら3集団で共通する主要な解剖学的要素です。したがって、これらの集団の地位をより深く理解するため、歯(歯冠と歯根)の形態に基づいて系統分析が行なわれました。この分析は、歯の形態学的特徴を記載する、標準化された体系を利用しました(ASUDAS)。分類群内の高度な変異性は、特徴と分類群の基盤における分類群による特徴状態頻度の実装によって考慮されました。連続した特徴は、TNTソフトウェアの使用などで分析されました。

 その結果、デニソワ人とホモ・ロンギとアジア東部の「古代型ホモ・サピエンス」は単系統性群を形成する、と示唆されます。驚くべきことに、このクレード(単系統群)はネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とは姉妹分類群として現れません。この結果は形態に基づく別の系統発生的分析によって見つかりましたが[5]、デニソワ人とネアンデルタール人との間の系統発生的つながりを論証した分子分析とは矛盾します。分子データから分かっている系統発生を考慮して追加の分析が実行され、再び、デニソワ人とホモ・ロンギとアジア東部の「古代型ホモ・サピエンス」が単系統性群として回収されました。各分析において、クレード安定性の指標(Bremer support)に基づくと、このクレードは最も安定したクレードの一つでした。

 まとめると、この結果はこれら3群の単系統性を裏づけます。地理的および年代的データと現在の人口集団におけるデニソワ人祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)の分布に基づいて、本論文ではこれら3群の同義性が提案されます。しかし、形態に基づく系統発生的関係が分子データに基づく系統発生的関係と繰り返し矛盾する理由を理解するためには、追加の研究が必要です。現在、他の解剖学的要素(つまり、身体の他の部分)が、この問題にさらなる光を当てるために、研究中です。


参考文献:
Gousset P, Détroit F, and Bardin J.(2024): Denisovans, Homo longi and East Asian “archaic Homo sapiens”: one or multiple clade(s)? The 14th Annual ESHE Meeting.

[2]Ji Q. et al.(2021): Late Middle Pleistocene Harbin cranium represents a new Homo species. The Innovation, 2, 3, 100132.
https://doi.org/10.1016/j.xinn.2021.100132
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[5]Ni X. et al.(2021): Massive cranium from Harbin in northeastern China establishes a new Middle Pleistocene human lineage. The Innovation, 2, 3, 100130.
https://doi.org/10.1016/j.xinn.2021.100130
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