大河ドラマ『光る君へ』第34回「目覚め」

 今回は、紫式部(まひろ、藤式部)と藤原道長(三郎)を中心とした宮中の人間模様を中心に、興福寺の強訴への対応も描かれました。本作前半は、紫式部と道長の身分の違いから活動舞台が大きく異なり、2人の視点で貴族の下層と上層とが描かれていました。紫式部が道長の娘で一条帝の中宮である彰子に仕えることで、2人の身分の違いは変わらないものの、2人の視点が大きく重なるようになり、終盤に向けて物語が統合されてきた感もあります。ただ、その分、描かれる範囲が狭くなった感もあります。

 興福寺の強訴への対応は意外と長く描かれ、道長の失態も示されました。平安時代の貴族は遊び惚けているだけだった、との通俗的な印象を覆すことに貢献するのではないか、と期待されます。無気力な感じだった彰子は、一条帝と定子との間に生まれた敦康親王の養育を通じて成長も見せており、一条帝と心はまだ通じていませんが、敦康親王との間には確たる信頼関係が築かれつつあるようです。彰子は紫式部を信用するようになったのか、紫式部には本音を見せつつあり、この点でも成長が窺えます。今回の表題である「目覚め」とは、彰子のことを指しているのでしょう。

 後に『源氏物語』と呼ばれることになる紫式部が描いている物語は宮中で話題になり、一条帝がわざわざ訪ねてくるくらいです。一条帝は、紫式部が自身に忖度せず物語を書いていることを気に入っているようで、これは一条帝と彰子との仲が深まらないことともつながっているのでしょう。紫式部が指摘したように、彰子が一条帝に心を開いていないので、一条帝も彰子にどう対応してよいのか分からないところもあるのかな、と思います。彰子は紫式部とのやり取りを通じて、一条帝との接し方を変えようと考えているようで、彰子と一条帝の関係の変化も注目されます。藤原頼通は今回から成人役となり、まだかなり頼りない感じですが、意欲のある人物として描かれるようです。

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