カンブリア紀の真節足動物の幼生化石

 カンブリア紀の真節足動物の幼生化石を報告した研究(Smith et al., 2024)が公表されました。カンブリア紀の真節足動物の放散は適応性のあるボディープランに起因する、と考えられます。その複雑な脳と特殊化した摂食用付属肢は、連続的な繰り返し構造を持つ器官系と関節のある付属肢がより精緻化したもので、真節足動物の広範な生態学的環境における優位性を下支えしています。真節足動物のボディープランの起源が、水力学的な葉足型の付属肢を有する蠕虫型動物分類群のグレード(葉足動物)に由来するとする根拠は、バージェス頁岩型の化石のデータです。しかし、そうした保存に伴う圧縮によって、内部の解剖学的構造は不明瞭化になっています。リン酸塩化した微化石からは初期のクラウン群真節足動物について補完的な三次元像が得られていますが、葉足動物の報告例はきわめて少なくなっています。

 本論文は、葉足と中腸腺と複雑な頭部を有する、三次元的に保存された真節足動物の幼生に関して、内部および外部の解剖学的構造を報告します。神経系の構造から、真節足動物の脳とそれに関連する付属肢および感覚器官の初期的な配置について情報が得られ、汎節足動物全体にわたる相同性が明らかになりました。新属新種であるヨウティ・ユアンシ(Youti yuanshi)の深い進化的位置は、節足動物進化における形質獲得の順序について情報を与え、複雑な血リンパ循環系の古い起源を示すとともに、永続的な成功を収めているこの動物群の繁栄と多様化を推進した、体内の解剖学的構造の変化を明らかにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:カンブリア紀の真節足動物の幼生の器官系

古生物学:体内の構造が保存された真節足動物の幼生化石

 今回、中国で発見されたカンブリア紀の極めて保存状態が良好な「うじ虫」の化石によって、脱皮動物(昆虫をはじめとする節足動物および「脱皮する」動物)の進化を巡る議論に、貴重な情報が与えられた。



参考文献:
Smith MR. et al.(2024): Organ systems of a Cambrian euarthropod larva. Nature, 633, 8028, 120–126.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07756-8

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