大河ドラマ『光る君へ』第33回「式部誕生」

 今回は、紫式部(まひろ)の宮仕えを中心に話が展開しました。紫式部は一条天皇の中宮である彰子に仕えるようになり、藤式部と呼ばれます。彰子のいる藤壺で後に『源氏物語』と呼ばれる物語の執筆を進めますが、彰子には多くの女房が仕えており、紫式部は何かと慌ただしい生活に慣れず、肝心の物語の執筆がままならず、彰子の父親である藤原道長(三郎)の猛反対を押し切って、自宅で物語を書こうとします。一条天皇が紫式部の物語を読もうと考えて、彰子を訪れるよう画策していた道長にとって、紫式部が藤壺から下がって自宅で物語を執筆すれば、せっかく上手くいきかけた計画が崩れる、というわけです。それでも紫式部は強引に自宅へと戻り、これまでに描かれてきた紫式部と道長との関係からは納得のいく展開です。

 これまで無口で無気力な感じだった彰子は、一条帝と定子との間に生まれた敦康親王を養育することになり、敦康親王を可愛がっているようで、敦康親王には笑顔も見せるようになりました。彰子は依然として一条帝との間に距離があるようですが、敦康親王の養育で成長してきたのか、紫式部にも本音を少し吐露しました。後に、道長の意向で敦康親王が皇太子に立てられなかったことで、彰子は道長を恨むようになったそうですが、彰子が父から自立していく過程は注目しています。平維衡の伊勢守任官をめぐる悶着が描かれたのは歴史ドラマとして興味深いところで、藤原隆家が朝廷も確たる武力を持つべきではないか、と見解を述べたところは、後に刀伊の入寇に対処したことの伏線かもしれません。この隆家の発言や、道長に後の武士の世の到来を予感させるような発言をさせたことなど、やや結果論的な話になっているかな、と思うところもありましたが、娯楽ドラマとして有でしょう。

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