『卑弥呼』第136話「大博打」
『ビッグコミックオリジナル』2024年9月5日号掲載分の感想です。前回は、暈(クマ)国の夜萬加(ヤマカ)で、ヒルメがニニギ(ヤエト)に、両親の仇は山社(ヤマト)の女王である日見子(ヒミコ)、つまりヤノハと伝えたところで終了しました。ニニギはホデリとタマヨリに育てられていた、ヤノハとチカラオ(ナツハ)の姉弟間の息子です。今回は、ミマアキと恋仲だったクラトが殺害された(第48話)、回想場面から始まります。ヤノハはクラトを殺害したアカメに、この件は二人だけの秘密だ、と伝えます。ヤノハ一行は公孫淵の居城である遼東郡の襄平に到着しましたが、前回ヤノハが大鴻臚(ダイコウロ)を威嚇してから3日も留め置かれており、トメ将軍はゴリに意見を求めます。トメ将軍は、そろそろ殺害されるかもしれない、と覚悟していましたが、ゴリは、公孫淵は短気と聞いているので、自分たちを殺す気ならとっくにやっているだろうし、自分たちを殺すつもりがないので、屋敷で毎日豪華な食事を振舞うのだろう、と指摘します。ただ、東の果ての倭国をどの程度遇するのか、公孫淵は決めかねているので、3日も留め置かれているのだろう、とゴリは推測します。大胆に嘘をつくヤノハは面白くて最期まで付いていきたい方だろう、と問いかけるトメ将軍に、ゴリはどうします。そこへ、ヤノハと旧知の漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)である何(ハウ)が慌てた様子で現れ、公孫淵が倭からの使者に会うと言ってきた、と伝えます。
山社(ヤマト)では、ミマアキがクラトの墓前で、しばらく来なかったことを詫びていました。ミマアキは、ヤノハが朝鮮半島へ渡ってから不安な毎日を過ごしており、日下(ヒノモト)が再び挙兵した、との噂も案じていました。ミマアキは従者に、一人で行くところがあるので待っているよう命じ、クラトの死体が発見された現場に赴きます。そこに、近くに住む年老いた男性の杣人(ソマウド、林業従事者)が現れ、そこにあった死体(クラト)の知り合いか、と尋ねられたミマアキは、そうだと答え、ここにまだ友の魂がいるような気がする、と言います。すると杣人は、クラトが死んだのはそこではない、とミマアキに言って、その場所へとミマアキを案内します。杣人は、クラトが矢で射られた瞬間を見ていなかったものの、その近くでウサギの罠を仕掛けており、クラトが倒れたところを見ていました。矢は森から放たれており、猿のように木から木に飛び移る女性と童子の二人がクラトを発見された川まで運んでいったようだ、と杣人はミマアキに伝えます。その童子は最初人ではないように見え、身体の半分は顔から足まで黥が彫ってあった、と杣人はミマアキに教えます。ミマアキは、その二人がアカメとナツハ(チカラオ)だと気づきますが、とても信じられない様子で悩みます。
襄平では、ヤノハ一行が公孫淵に謁見していました。自分が日見子(ヒミコ)であることを隠し、倭国からの使者と偽っているヤノハは、日見子女王は長年、遼東太守の公孫淵に恭順の意を伝えたい、と思っていたが、その前に、公孫淵が真の王であること、つまり三国(魏と呉と蜀のことでしょう)ではなく四ヶ国のうちの一国であることが、倭国が遼東太守の公孫淵に正式な使節を送る条件で、もし魏からの独立にもっと兵が必要なら倭国の兵20万人を貸そう、と公孫淵に伝えようとします。通訳の何はさすがに慌てて、そんな大それた偽りを言うのは危険ではないか、と案じますが、ヤノハは何に、公孫淵は自分たちのことを何も知らないので、何を言っても平気だと言って、自分の発言をそのまま通訳するよう、何に命じます。公孫淵は有頂天になり、本国の魏への戦の準備を始めるだろう、と意図を明かすヤノハに、山社の兵は5000人たらずなのに、ここまでの大嘘は実にすがすがしい、とヌカデが呆れつつも感心し、トメ将軍がゴリに、ヤノハは面白い方だろう、と語るところで今回は終了です。
今回は、ヤノハの公孫淵に対する策略と、ミマアキの動揺が描かれました。ヤノハは、倭国というか山社連合がじっさいよりずっと強大だと偽り、公孫淵の野心を煽って、公孫淵を破滅に追い込もうと考えているようで、公孫淵がどう反応するのか、注目されます。公孫淵とどう対処するのかは、トメ将軍も考えていたようで(第117話)、公孫淵が魏から独立するよう、その野心を煽っていくつもりではないか、と予想していたので、今回のヤノハの提案はさほど意外ではありませんでした。今回が初登場となる公孫淵は、予想していたよりも迫力のある顔立ちではなく、その容貌だけでは有能なのか無能なのか、どのような人となりなのか、判断の難しいところです。ゴリによると、公孫淵は短気な人物とのことですが、第117話では策士にして野心家と評されているので、単に器の小さな人物として描かれるのではなさそうです。ミマアキが偶然クラトの死の真相に近づく展開はまったく予想できず、クラトを殺すよう、アカメに指示できるのはヤノハしかいない、とミマアキはすぐに気づいたでしょうから、これまでヤノハを日見子として崇めてきたミマアキの心境がどう変化し、それが今後のヤノハとの関係にどう影響するのか、注目されます。クラトの死がこのように作中で再度言及されるとは予想しておらず、しっかりとした構成の上で話が展開しているのだな、と改めて思います。今後の話がますます楽しみになってきました。
山社(ヤマト)では、ミマアキがクラトの墓前で、しばらく来なかったことを詫びていました。ミマアキは、ヤノハが朝鮮半島へ渡ってから不安な毎日を過ごしており、日下(ヒノモト)が再び挙兵した、との噂も案じていました。ミマアキは従者に、一人で行くところがあるので待っているよう命じ、クラトの死体が発見された現場に赴きます。そこに、近くに住む年老いた男性の杣人(ソマウド、林業従事者)が現れ、そこにあった死体(クラト)の知り合いか、と尋ねられたミマアキは、そうだと答え、ここにまだ友の魂がいるような気がする、と言います。すると杣人は、クラトが死んだのはそこではない、とミマアキに言って、その場所へとミマアキを案内します。杣人は、クラトが矢で射られた瞬間を見ていなかったものの、その近くでウサギの罠を仕掛けており、クラトが倒れたところを見ていました。矢は森から放たれており、猿のように木から木に飛び移る女性と童子の二人がクラトを発見された川まで運んでいったようだ、と杣人はミマアキに伝えます。その童子は最初人ではないように見え、身体の半分は顔から足まで黥が彫ってあった、と杣人はミマアキに教えます。ミマアキは、その二人がアカメとナツハ(チカラオ)だと気づきますが、とても信じられない様子で悩みます。
襄平では、ヤノハ一行が公孫淵に謁見していました。自分が日見子(ヒミコ)であることを隠し、倭国からの使者と偽っているヤノハは、日見子女王は長年、遼東太守の公孫淵に恭順の意を伝えたい、と思っていたが、その前に、公孫淵が真の王であること、つまり三国(魏と呉と蜀のことでしょう)ではなく四ヶ国のうちの一国であることが、倭国が遼東太守の公孫淵に正式な使節を送る条件で、もし魏からの独立にもっと兵が必要なら倭国の兵20万人を貸そう、と公孫淵に伝えようとします。通訳の何はさすがに慌てて、そんな大それた偽りを言うのは危険ではないか、と案じますが、ヤノハは何に、公孫淵は自分たちのことを何も知らないので、何を言っても平気だと言って、自分の発言をそのまま通訳するよう、何に命じます。公孫淵は有頂天になり、本国の魏への戦の準備を始めるだろう、と意図を明かすヤノハに、山社の兵は5000人たらずなのに、ここまでの大嘘は実にすがすがしい、とヌカデが呆れつつも感心し、トメ将軍がゴリに、ヤノハは面白い方だろう、と語るところで今回は終了です。
今回は、ヤノハの公孫淵に対する策略と、ミマアキの動揺が描かれました。ヤノハは、倭国というか山社連合がじっさいよりずっと強大だと偽り、公孫淵の野心を煽って、公孫淵を破滅に追い込もうと考えているようで、公孫淵がどう反応するのか、注目されます。公孫淵とどう対処するのかは、トメ将軍も考えていたようで(第117話)、公孫淵が魏から独立するよう、その野心を煽っていくつもりではないか、と予想していたので、今回のヤノハの提案はさほど意外ではありませんでした。今回が初登場となる公孫淵は、予想していたよりも迫力のある顔立ちではなく、その容貌だけでは有能なのか無能なのか、どのような人となりなのか、判断の難しいところです。ゴリによると、公孫淵は短気な人物とのことですが、第117話では策士にして野心家と評されているので、単に器の小さな人物として描かれるのではなさそうです。ミマアキが偶然クラトの死の真相に近づく展開はまったく予想できず、クラトを殺すよう、アカメに指示できるのはヤノハしかいない、とミマアキはすぐに気づいたでしょうから、これまでヤノハを日見子として崇めてきたミマアキの心境がどう変化し、それが今後のヤノハとの関係にどう影響するのか、注目されます。クラトの死がこのように作中で再度言及されるとは予想しておらず、しっかりとした構成の上で話が展開しているのだな、と改めて思います。今後の話がますます楽しみになってきました。
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