三畳紀のワニに似た小型爬虫類

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、三畳紀(約2億5200万年前~2億100万年前)のワニに似た小型爬虫類に関する研究(Müller., 2024)が公表されました。恐竜類や翼竜類の出現以前の三畳紀において、ワニ系統の爬虫類である偽鰐類が陸上生態系を支配していました。当時の四足爬虫類の一般的な形態だったこの系統は、いくつかのさほど包括的ではないクレード(単系統群)へと多様化し、中期~後期三畳紀(約2億3700万年前)には広範な生態形態学的多様性が生じ、当時最大の肉食動物も含まれていました。巨大偽鰐類には、栄養網の頂点を占めている系統も、防御機構として骨鎧を発達させたものもおり、後者は鳥中足骨類系統で後に収斂として進化しました。一方、軽量で体長1m未満の肉食肩で構成されていた、グラキリスクス類のような集団もいました。グラキリスクス類の化石記録は地理的に中国とアルゼンチンに限られており、ブラジルでは曖昧な記録が得られています。

 本論文は、ブラジルで発見された最初の明確なグラキリスクス類を記載します。新属新種のパルヴォスチュス・アウレリオイ(Parvosuchus aurelioi)は、ラディニアン(Ladinian)とカーニアン(Carnian)の境界と関連する、サンタマリア累層のディノドントサウルス(Dinodontosaurus)化石群地帯で発見されました。この化石は完全な頭蓋と胸椎と骨盤帯と後肢から構成され、頭蓋骨の長さは14.4cmで、細長い顎と後方に曲がった尖った歯に加えて、頭蓋骨のいくつかの開口部を特徴としています。骨格は華奢で、全長1m未満と推定されています。この化石は系統発生分析では、グラキリスクス・スティパニシコルム(Gracilisuchus stipanicicorum)およびマエハリー・ボナパルテイ(Maehary bonapartei)とともに分類されます。この発見は、ブラジルの偽鰐類動物相における分類学的間隙を埋め、ディノドントサウルス化石群地帯におけるこのクレードの既知の最小の構成員を明らかにし、恐竜の出現に先行する期間の偽鰐類の多様性を浮き彫りにします。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:ブラジルで発見されたワニに似た古代の小型爬虫類の新種

 ブラジルで発見された古代の捕食性爬虫類の新種について報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。この新種(Parvosuchus aurelioiと命名された)は、ワニに似た爬虫類系統群である偽鰐類に属している。この標本は、中~後期三畳紀(約2億3700万年前)のものと年代決定された。小型の捕食性爬虫類種がブラジルで発見されたのは、これが初めてだ。

 恐竜が優勢となる前の三畳紀(2億5200万年前~2億100万年前)において、偽鰐類は古代の四足爬虫類の一般的な形態であり、この系統群には、当時最大の肉食動物も含まれていた。この頂点捕食者のそばで暮らしていたのが小型の偽鰐類のグラキリスクスで、これまでに中国やアルゼンチンなどの地域で発見されている。

 今回、Rodrigo Müllerは、ブラジルのサンタマリア累層で発見された標本を基に、グラキリスクスの新種を発見したことを報告している。この部分骨格標本は、約2億3700万年前のものと年代決定され、下顎を含む完全な頭蓋骨、11個の胸椎、骨盤と、部分的に保存された四肢で構成されている。Müllerは、この新種をParvosuchus aurelioiと命名した。この名称は、parvus(小型)とsuchus(ワニ)に由来し、この化石試料を発見したアマチュア古生物学者Pedro Lucas Porcela Aurélioの栄誉をたたえている。

 頭蓋骨は、長さ14.4センチメートルで、細長い顎と後方に曲がった尖った歯に加えて、頭蓋骨のいくつかの開口部を特徴としている。骨格は、きゃしゃで細身で、全長1メートル未満と推定されている。これらの特徴から、P. aurelioiはグラキリスクスの一種に分類され、これによって、P. aurelioiはブラジルで初めて確認されたグラキリスクスとなった。Müllerは、今回の知見は、三畳紀の偽鰐類の多様性を浮き彫りにしていると付言している。



参考文献:
Müller RT.(2024): A new small-sized predatory pseudosuchian archosaur from the Middle-Late Triassic of Southern Brazil. Scientific Reports, 14, 12706.
https://doi.org/10.1038/s41598-024-63313-3

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