最終氷期極大期に現在より深かった北大西洋亜熱帯循環
最終氷期極大期(Last Glacial Maximum、略してLGM)において北大西洋亜熱帯循環は現在よりも深かったことを報告した研究(Wharton et al., 2024)が公表されました。亜熱帯循環(Subtropical gyre、略してSTG)の深さと強度は、風応力カールと海面浮力強制により制御されています。現在の海洋観測データから、STGは北西大西洋で深さ約1kmまで広がっており、その最大深度は亜熱帯水温躍層底部によって定義されている、と明らかになっています。LGMには風応力カールと表面浮力損失が大きかった、と考えられていますが、これまでの研究では氷期のSTGの深さの変化は最小だった、と示唆されています。
本論文は、北緯33度と36度の間に明瞭な氷期の水塊境界が存在し、現在よりもおよそ1km深い、2.0~2.5kmまで広がっていたことを示します。この発見は、北西大西洋のハッテラス岬(北緯36度~39度)とブレークアウターリッジ(北緯29度~34度)の2つの深度横断区で採取した堆積物コアの底生有孔虫の酸素同位体(δ¹⁸O)特性から得られました。この結果は、メキシコ湾流を含むSTGはLGMには現在よりも深く強かったことを示唆しており、それは気候モデル模擬実験によって裏づけられているように、氷期の風応力カールが増大していたばかりでなく、氷期に密度の大きい亜熱帯モード水(subtropical mode waters、略してSTMW)の生産がより大きかったことに起因します。
本論文のデータは、(1)おそらく亜熱帯水が、これまで氷期北西大西洋中層水(Glacial North Atlantic Intermediate Water、略してGNAIW)として同定されてきた地球化学的特徴に寄与していること、(2)STGは氷期の北大西洋で、浮力損失の継続、水塊の転換、および北向きの南北熱輸送(meridional heat transport、略してMHT)を維持していた、と示唆しています。LGMは現生人類(Homo sapiens)の拡散や絶滅や置換に大きく影響したと考えられるので、その点でも注目される研究です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古気候学:最終氷期極大期により深く強かった北大西洋循環
古気候学:最終氷期極大期に今よりも深かった北大西洋亜熱帯循環
北大西洋亜熱帯循環の一部であるメキシコ湾流は、現在は深さ約1 kmに到達している。今回、最終氷期極大期の間は、海流はこれまで考えられていたよりもかなり深い、2.5 kmもの深さまで到達していたことが示されている。
参考文献:
Wharton JH. et al.(2024): Deeper and stronger North Atlantic Gyre during the Last Glacial Maximum. Nature, 632, 8023, 95–100.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07655-y
本論文は、北緯33度と36度の間に明瞭な氷期の水塊境界が存在し、現在よりもおよそ1km深い、2.0~2.5kmまで広がっていたことを示します。この発見は、北西大西洋のハッテラス岬(北緯36度~39度)とブレークアウターリッジ(北緯29度~34度)の2つの深度横断区で採取した堆積物コアの底生有孔虫の酸素同位体(δ¹⁸O)特性から得られました。この結果は、メキシコ湾流を含むSTGはLGMには現在よりも深く強かったことを示唆しており、それは気候モデル模擬実験によって裏づけられているように、氷期の風応力カールが増大していたばかりでなく、氷期に密度の大きい亜熱帯モード水(subtropical mode waters、略してSTMW)の生産がより大きかったことに起因します。
本論文のデータは、(1)おそらく亜熱帯水が、これまで氷期北西大西洋中層水(Glacial North Atlantic Intermediate Water、略してGNAIW)として同定されてきた地球化学的特徴に寄与していること、(2)STGは氷期の北大西洋で、浮力損失の継続、水塊の転換、および北向きの南北熱輸送(meridional heat transport、略してMHT)を維持していた、と示唆しています。LGMは現生人類(Homo sapiens)の拡散や絶滅や置換に大きく影響したと考えられるので、その点でも注目される研究です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古気候学:最終氷期極大期により深く強かった北大西洋循環
古気候学:最終氷期極大期に今よりも深かった北大西洋亜熱帯循環
北大西洋亜熱帯循環の一部であるメキシコ湾流は、現在は深さ約1 kmに到達している。今回、最終氷期極大期の間は、海流はこれまで考えられていたよりもかなり深い、2.5 kmもの深さまで到達していたことが示されている。
参考文献:
Wharton JH. et al.(2024): Deeper and stronger North Atlantic Gyre during the Last Glacial Maximum. Nature, 632, 8023, 95–100.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07655-y
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