初期の四肢類の地理的分布
初期の四肢類の地理的分布に関する研究(Marsicano et al., 2024)が公表されました。四肢類の初期進化に関する現在の仮説では、石炭紀の古赤道の石炭を生成した、広範な湿地との密接な生態学的および生物地理的関係を前提としており、太古の四肢類群は後期石炭紀(約3億700万年前)に現代の羊膜類および平滑両生類の近縁動物によって急速に取って代わられた、とされています。こうした仮説の根拠となる四肢類の化石記録は、パンゲア超大陸の古赤道域(ユーラメリカ大陸)のものにほぼ完全に限定されています。
本論文は、そうした仮説に異を唱える、ナミビアの前期ペルム紀(約2億8000万年前)の高古緯度域(南緯約55度)の堆積層から出土した、新種の巨大なステム群四肢類ガイアシア・ジェンニャエ(Gaiasia jennyae)を報告します。ガイアシア・ジェンニャエは、関節が部分的につながった複数の大型の骨格から構成されており、幅広い菱形の副蝶形骨が支配的な緩く関節のつながった口蓋、後方に突出した後頭部、大型の相互にかみ合った歯骨の牙と鉤状骨の牙を伴う、やや骨化した頭蓋を特徴とします。
系統発生解析の結果、ガイアシア・ジェンニャエは四肢類ステム群内の、石炭紀のユーラメリカ大陸のコロステウス類の姉妹群に位置づけられました。ガイアシア・ジェンニャエは、記載済みの指趾を持つ全てのステム群四肢類より大型で、石炭紀~ペルム紀の退氷期の最終段階に、ゴンドワナ大陸の寒温帯緯度域に大陸性の四肢類が確実に定着していた証拠を示しています。これは、石炭紀からペルム紀への移行期に大陸性四肢類がより全球的に分布していたことを示すとともに、この時代の全球的な四肢類動物相の入れ替わりと分散に関する従来の仮説を見直す必要がある、と意味しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:巨大なステム群四肢類は後期古生代氷期のゴンドワナ大陸の頂点捕食者であった
Cover Story:広範囲に生息した巨大四肢類:サンショウウオに似た化石動物によって拡大された初期の四肢類の地理的分布
表紙は、約2億8000万年前に生息していたサンショウウオのような大型の生物Gaiasia jennyaeの想像図である。今回C Marsicanoたちによって記載報告されているGaiasiaは、四肢を持つ脊椎動物の初期進化史における空白を埋めるものである。Gaiasiaは、ナミビアで発見された、頭蓋の複数の破片とほぼ完全な脊柱を含む、少なくとも4点の不完全な化石標本に基づいて特定された。Gaiasiaは異常なほど大きく、おそらく体長は約2.5 mに達し、獲物を捕らえるための強力な咬合力を有していた。これらの化石は、初期の四肢類のものとしては最大級であるだけでなく、それまでの種よりもはるか南で発見されており、このため、Gaiasiaのような生物はこれまで考えられていたよりもはるかに広い範囲に生息していたことが示唆された。
参考文献:
Marsicano CA. et al.(2024): Giant stem tetrapod was apex predator in Gondwanan late Palaeozoic ice age. Nature, 631, 8021, 577–582.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07572-0
本論文は、そうした仮説に異を唱える、ナミビアの前期ペルム紀(約2億8000万年前)の高古緯度域(南緯約55度)の堆積層から出土した、新種の巨大なステム群四肢類ガイアシア・ジェンニャエ(Gaiasia jennyae)を報告します。ガイアシア・ジェンニャエは、関節が部分的につながった複数の大型の骨格から構成されており、幅広い菱形の副蝶形骨が支配的な緩く関節のつながった口蓋、後方に突出した後頭部、大型の相互にかみ合った歯骨の牙と鉤状骨の牙を伴う、やや骨化した頭蓋を特徴とします。
系統発生解析の結果、ガイアシア・ジェンニャエは四肢類ステム群内の、石炭紀のユーラメリカ大陸のコロステウス類の姉妹群に位置づけられました。ガイアシア・ジェンニャエは、記載済みの指趾を持つ全てのステム群四肢類より大型で、石炭紀~ペルム紀の退氷期の最終段階に、ゴンドワナ大陸の寒温帯緯度域に大陸性の四肢類が確実に定着していた証拠を示しています。これは、石炭紀からペルム紀への移行期に大陸性四肢類がより全球的に分布していたことを示すとともに、この時代の全球的な四肢類動物相の入れ替わりと分散に関する従来の仮説を見直す必要がある、と意味しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:巨大なステム群四肢類は後期古生代氷期のゴンドワナ大陸の頂点捕食者であった
Cover Story:広範囲に生息した巨大四肢類:サンショウウオに似た化石動物によって拡大された初期の四肢類の地理的分布
表紙は、約2億8000万年前に生息していたサンショウウオのような大型の生物Gaiasia jennyaeの想像図である。今回C Marsicanoたちによって記載報告されているGaiasiaは、四肢を持つ脊椎動物の初期進化史における空白を埋めるものである。Gaiasiaは、ナミビアで発見された、頭蓋の複数の破片とほぼ完全な脊柱を含む、少なくとも4点の不完全な化石標本に基づいて特定された。Gaiasiaは異常なほど大きく、おそらく体長は約2.5 mに達し、獲物を捕らえるための強力な咬合力を有していた。これらの化石は、初期の四肢類のものとしては最大級であるだけでなく、それまでの種よりもはるか南で発見されており、このため、Gaiasiaのような生物はこれまで考えられていたよりもはるかに広い範囲に生息していたことが示唆された。
参考文献:
Marsicano CA. et al.(2024): Giant stem tetrapod was apex predator in Gondwanan late Palaeozoic ice age. Nature, 631, 8021, 577–582.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07572-0
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