イラン大統領選結果
エブラヒム・ライシ前大統領が搭乗していたヘリコプターの墜落により先々月(2024年5月)19日に死亡したため、イランでは急遽大統領選が行なわれ、先月18日に投票が、今月5日に決選投票が行なわれました。とくに独自の知見を提示できるわけではありませんし、イラン政治を日頃から熱心に追いかけているわけでもありませんが、当ブログを開設してからイラン大統領選を毎回取り上げてきたので、今回も言及することにしました。ライシ前大統領の死亡について、アメリカ合衆国やイスラエルの陰謀を主張する人がおり、それは分からないでもありませんが、ライシ前大統領の死に陰謀があったとしたら、ライシ前大統領は次期最高指導者の有力候補とも言われていたので、むしろ国内の権力闘争の方が可能性は高そうです。まあ実際は、アメリカ合衆国などの制裁による技術的問題や、イラン政府の油断などによる事故なのでしょうが。
大統領選には最終的に、保守強硬派とされるサイード・ジャリリ氏とモハンマド・バゲル・ガリバフ氏、保守派とされるモスタファ・プルモハマディ氏、改革派とされるマスード・ペゼシュキアン氏が立候補し、10415991票(得票率44.36%)のマスード・ペゼシュキアン氏と9473298票(得票率40.35%)サイード・ジャリリ氏の上位2人が決選投票に進出しました。投票率は1979年のイスラム教体制成立後の大統領選挙では最低となる39.93%で、護憲評議会による事前審査で有力者も含む多くの立候補者が失格となり、少なからぬ国民が冷めていたこともあるのでしょうが、体制の弛緩を表しているのかもしれず、今後のイラン情勢が注目されます。
決選投票では保守派が1人なので、サイード・ジャリリ氏が有利かというと、そう単純な話でもないようで、過去最低だった投票率が決選投票ではどのくらい上がるのかも注目されました(まあ当然、下がる可能性もないわけではありませんが)が、投票率は上昇して49.68%でした。改革派とされるマスード・ペゼシュキアン氏が立候補でき、決選投票まで進んだことで、現体制に不満を抱く国民が投票した、ということでしょうか。決選投票の結果は、マスード・ペゼシュキアン氏が16384403票(得票率54.76%)で13538179票(得票率45.24%)のサイード・ジャリリ氏を破り、大統領選では2001年のモハンマド・ハータミー氏以来久々となる、改革派とされる大統領候補の勝利となります。
マスード・ペゼシュキアン氏はヨーロッパやアメリカ合衆国との対話重視を訴えていますが、イランの最高指導者は強硬派のアリー・ハーメネイー氏(と安易に断定はできないかもしれず、長期間最高指導者の地位にいるのは、強硬派を主要な基盤としつつ、諸勢力を上手く競わせているからでしょうか)ですし、議会など主要機関は強硬派が掌握しているため、とくにアメリカ合衆国との関係改善は難しそうで、マスード・ペゼシュキアン氏は2ヶ月後(2024年9月29日)には70歳になるので(因みに、3代前の大統領であるマフムード・アフマディーネジャード氏より2歳年上)、1期で退陣する可能性も低くないように思います。とくに、アメリカ合衆国では次期大統領にドナルド・トランプ前大統領が返り咲きそうな情勢なので、アメリカ合衆国との関係改善はかなり難しそうです。それでも、何とか中東情勢が安定し、大規模な戦争に至らないよう、願っていますが。なお、過去のイラン大統領選に関する記事は以下の通りです。
2009年
https://sicambre.seesaa.net/article/200906article_14.html
2013年
https://sicambre.seesaa.net/article/201306article_18.html
2017年
https://sicambre.seesaa.net/article/201705article_23.html
2021年
https://sicambre.seesaa.net/article/202106article_23.html
大統領選には最終的に、保守強硬派とされるサイード・ジャリリ氏とモハンマド・バゲル・ガリバフ氏、保守派とされるモスタファ・プルモハマディ氏、改革派とされるマスード・ペゼシュキアン氏が立候補し、10415991票(得票率44.36%)のマスード・ペゼシュキアン氏と9473298票(得票率40.35%)サイード・ジャリリ氏の上位2人が決選投票に進出しました。投票率は1979年のイスラム教体制成立後の大統領選挙では最低となる39.93%で、護憲評議会による事前審査で有力者も含む多くの立候補者が失格となり、少なからぬ国民が冷めていたこともあるのでしょうが、体制の弛緩を表しているのかもしれず、今後のイラン情勢が注目されます。
決選投票では保守派が1人なので、サイード・ジャリリ氏が有利かというと、そう単純な話でもないようで、過去最低だった投票率が決選投票ではどのくらい上がるのかも注目されました(まあ当然、下がる可能性もないわけではありませんが)が、投票率は上昇して49.68%でした。改革派とされるマスード・ペゼシュキアン氏が立候補でき、決選投票まで進んだことで、現体制に不満を抱く国民が投票した、ということでしょうか。決選投票の結果は、マスード・ペゼシュキアン氏が16384403票(得票率54.76%)で13538179票(得票率45.24%)のサイード・ジャリリ氏を破り、大統領選では2001年のモハンマド・ハータミー氏以来久々となる、改革派とされる大統領候補の勝利となります。
マスード・ペゼシュキアン氏はヨーロッパやアメリカ合衆国との対話重視を訴えていますが、イランの最高指導者は強硬派のアリー・ハーメネイー氏(と安易に断定はできないかもしれず、長期間最高指導者の地位にいるのは、強硬派を主要な基盤としつつ、諸勢力を上手く競わせているからでしょうか)ですし、議会など主要機関は強硬派が掌握しているため、とくにアメリカ合衆国との関係改善は難しそうで、マスード・ペゼシュキアン氏は2ヶ月後(2024年9月29日)には70歳になるので(因みに、3代前の大統領であるマフムード・アフマディーネジャード氏より2歳年上)、1期で退陣する可能性も低くないように思います。とくに、アメリカ合衆国では次期大統領にドナルド・トランプ前大統領が返り咲きそうな情勢なので、アメリカ合衆国との関係改善はかなり難しそうです。それでも、何とか中東情勢が安定し、大規模な戦争に至らないよう、願っていますが。なお、過去のイラン大統領選に関する記事は以下の通りです。
2009年
https://sicambre.seesaa.net/article/200906article_14.html
2013年
https://sicambre.seesaa.net/article/201306article_18.html
2017年
https://sicambre.seesaa.net/article/201705article_23.html
2021年
https://sicambre.seesaa.net/article/202106article_23.html
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