言語の機能
言語の機能に関する研究(Fedorenko et al., 2024)が公表されました。言語はヒトを定義づける特徴ですが、言語が果たす機能(あるいは複数の機能)については何世紀にもわたり議論が続いています。本論文は、神経科学と関連分野から得られた最近の証拠を提示し、ヒトは言語を思考のために使うという有力な考えに反して、現生人類(Homo sapiens)の言語は意思疎通・情報伝達の手段である、と主張します。
本論文はまず、ヒトの言語能力を支える脳ネットワークを示し、次に、言語と思考の間の二重乖離の証拠を再検討して、言語がコミュニケーションのために最適化されていることを示唆する言語の複数の特性について考察します。言語の出現がヒトの文化を変容させたことに議論の余地はありませんが、言語は象徴的思考などの複雑な思考の必要条件ではないと見られる、というのが本論文の結論です。むしろ、言語は文化的知識を伝達するための強力な手段であり、ヒトの思考力や推論能力と共進化したと考えるのが妥当で、ヒトの認知の特徴である精緻化を生み出すのではなく、それを反映しているにすぎません。
言語の起源や進化については古くから関心が高く、それは言語こそヒトの決定的な特徴と考えられているからなのでしょう。現生人類以外の人類の言語能力についても色々と議論がありますが、現生人類との遺伝的混合が確認されているネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)については、技術の伝播も想定されることから、言語を介した少なくとも一定水準以上の意思疎通が可能だったのではないか、と考えています。
参考文献:
Fedorenko E, Piantadosi ST, and Gibson EA.(2024): Language is primarily a tool for communication rather than thought. Nature, 630, 8017, 575–586.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07522-w
本論文はまず、ヒトの言語能力を支える脳ネットワークを示し、次に、言語と思考の間の二重乖離の証拠を再検討して、言語がコミュニケーションのために最適化されていることを示唆する言語の複数の特性について考察します。言語の出現がヒトの文化を変容させたことに議論の余地はありませんが、言語は象徴的思考などの複雑な思考の必要条件ではないと見られる、というのが本論文の結論です。むしろ、言語は文化的知識を伝達するための強力な手段であり、ヒトの思考力や推論能力と共進化したと考えるのが妥当で、ヒトの認知の特徴である精緻化を生み出すのではなく、それを反映しているにすぎません。
言語の起源や進化については古くから関心が高く、それは言語こそヒトの決定的な特徴と考えられているからなのでしょう。現生人類以外の人類の言語能力についても色々と議論がありますが、現生人類との遺伝的混合が確認されているネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)については、技術の伝播も想定されることから、言語を介した少なくとも一定水準以上の意思疎通が可能だったのではないか、と考えています。
参考文献:
Fedorenko E, Piantadosi ST, and Gibson EA.(2024): Language is primarily a tool for communication rather than thought. Nature, 630, 8017, 575–586.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07522-w
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