大河ドラマ『光る君へ』第23回「雪の舞うころ」

 今回も越前編となり、宋の見習い医師とされていた周明が、前回終盤で流暢な日本語を話したことで、その出自に注目していましたが、対馬生まれで、父親から海に捨てられたところを宋の舟に拾われ、奴隷のような扱いを受けたので、逃げだして医師の弟子になった、と周明は紫式部(まひろ)に打ち明けました。紫式部は周明から宋の言葉を学び、周明を通じて紫式部の宋への憧れが描かれる構成になっており、紫式部は周明に大きな影響を受けることになりそうです。ただ、庶民視点の媒介者になると考えられた直秀が予想外に早く退場したので、周明も登場期間は短いのではないか、と懸念しています。周明はかなり野心的なところもあるようなので、単に紫式部に大きな影響を及ぼすだけには終わらないようで、架空の人物でしょうから、早期に退場するとしても、かなり自由に動かせそうで、その動向はたいへん注目されます。

 越前の様子は詳しく描かれており、地方の視点も見られることは本作の魅力の一つになっているように思います。藤原宣孝が越前を訪れ、去るさいに紫式部に求婚し、いよいよ紫式部と宣孝との結婚が近いわけですが、正直なところ、私の読解力では、史実を知っているので、宣孝が紫式部を結婚相手として意識しているのかな、と思える描写もこれまであったものの、史実を知らなければ、宣孝が紫式部を結婚相手に考えているとは、本作の前回までの描写から読み取れなかったでしょう。大河ドラマのような歴史創作ものは、史実を知っていることで深く楽しめるとも言えますが、意外性という点での楽しみが減ずることも否定できず、ここが鑑賞の難しさでもあるとは思います。

 都というか宮中の政治情勢は藤原道長(三郎)を中心に描かれ、定子が出家したことで、一条天皇の後継をめぐる思惑も描かれていますが、まだ満年齢で10歳にも満たない彰子の入内は作中ではまったく話に出ていません。ただ、あるいは道長の妻である源倫子には、すでにそうした計画もあるのかな、と思わせる底知れない不気味さがあります。居貞親王(三条天皇)は、成人役としては今回が初登場となります。今回、居貞親王は快活な様子を見せていましたが、安倍晴明に定子が娘を産むよう祈祷させるなど、権力への執着の強さを窺わせます。後半は、道長と三条天皇の政争も見どころになりそうで、本作の楽しみがもう一つ増えました。

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