鳥類の進化の複雑さ
科の水準でのゲノム解析から鳥類の進化の複雑を示した研究(Stiller et al., 2024)が公表されました。鳥類の主要な系統間の関係については、過去数十年にわたる多大な努力にも関わらず、明確な解決策がないまま、依然として激しい議論が続いています。こうした見解の相違は、標本種の多様性、系統発生学的な方法、ゲノム領域の選択に起因するとされています。
本論文はこの問題に取り組むために、鳥類の218科に属する363種(全体の92%)のゲノムを解析しました。遺伝子間領域と合着(合祖)に基づく方法を用いることにより、充分な裏づけはあるものの、顕著な不一致も見られる系統樹が得られました。この系統樹から、新鳥上目が、白亜紀–古第三紀境界あるいはその近くで急速な放散を経た、と確認されたまし。位置づけが難しい節(ノード)を解明するには、広範な分類群の標本抽出よりも充分な数の座位の方が効果的でした。
残りの決定が難しい節には、きょくたんなDNA組成、さまざまな置換率、不完全な系統分類、太古の雑種形成などの複雑な進化的事象のために、モデル化の困難な種が関わっていました。ゲノムのさまざまな領域の影響を評価したところ、ゲノム全体にわたって不均一性が高い、と示されました。有効個体群規模、置換率、相対的な脳の大きさは、白亜紀–古第三紀の絶滅事象後に急速に増大したことが分かり、新たな生態学的機会が現生鳥類の多様化を促進した、という仮説が裏づけられました。結果として得られた系統発生学的な推定は、現生鳥類の急速な放散について新たな洞察をもたらすとともに、今後の比較研究のための豊富な分類群から構成される基盤となる系統樹(backbone tree)を示しています。
参考文献:
Stiller J. et al.(2024): Complexity of avian evolution revealed by family-level genomes. Nature, 629, 8013, 851–860.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07323-1
本論文はこの問題に取り組むために、鳥類の218科に属する363種(全体の92%)のゲノムを解析しました。遺伝子間領域と合着(合祖)に基づく方法を用いることにより、充分な裏づけはあるものの、顕著な不一致も見られる系統樹が得られました。この系統樹から、新鳥上目が、白亜紀–古第三紀境界あるいはその近くで急速な放散を経た、と確認されたまし。位置づけが難しい節(ノード)を解明するには、広範な分類群の標本抽出よりも充分な数の座位の方が効果的でした。
残りの決定が難しい節には、きょくたんなDNA組成、さまざまな置換率、不完全な系統分類、太古の雑種形成などの複雑な進化的事象のために、モデル化の困難な種が関わっていました。ゲノムのさまざまな領域の影響を評価したところ、ゲノム全体にわたって不均一性が高い、と示されました。有効個体群規模、置換率、相対的な脳の大きさは、白亜紀–古第三紀の絶滅事象後に急速に増大したことが分かり、新たな生態学的機会が現生鳥類の多様化を促進した、という仮説が裏づけられました。結果として得られた系統発生学的な推定は、現生鳥類の急速な放散について新たな洞察をもたらすとともに、今後の比較研究のための豊富な分類群から構成される基盤となる系統樹(backbone tree)を示しています。
参考文献:
Stiller J. et al.(2024): Complexity of avian evolution revealed by family-level genomes. Nature, 629, 8013, 851–860.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07323-1
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