脊椎動物の黎明期の神経冠に起源がある交感神経系
交感神経系の起源に関する研究(Edens et al., 2024)が公表されました。神経冠は脊椎動物に固有の胚性幹細胞集団で、脊椎動物の進化は、その拡大と多様化により、新たな細胞の種類と顎や末梢神経節などの新規構造の出現が可能になったことで促進された、と考えられています。無顎脊椎動物にも感覚神経節はありますが、体幹の交感神経鎖については、有顎脊椎動物でのみ生じたとするのが通説です。
本論文は、そうした見解とは対照的に、体幹の交感神経細胞が、現生の無顎脊椎動物であるウミヤツメ(Petromyzon marinus)にも存在することを報告します。これらの神経細胞は、背側大動脈近傍の交感神経芽細胞群から生じ、顎口類で報告されているのと相同な転写プログラムに従って、ノルアドレナリン作動性の指定を受けます。ヤツメウナギの交感神経芽細胞は、心臓の外側の空間に存在し、左右両側の流れにより体幹全長にわたって広がり、カテコールアミン生合成経路の酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ–ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼを発現する、と分かりました。
また、CM-DiI細胞系譜追跡解析によって、これらの細胞が体幹の神経冠に由来する、と確認されました。単離したアンモシーテスの体幹交感神経芽細胞のRNA塩基配列解読からは、交感神経細胞の機能に特徴的な遺伝子特性が明らかになりました。これらの調査結果は、交感神経節は顎口類の新機軸であるとする定説に異議を唱えるもので、代わりに、後期に発生する祖先的な交感神経系が最初期の脊椎動物の特徴にあった可能性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
生物学:闘争・逃走系の起源
交感神経系は有顎脊椎動物に特有なものとこれまで考えられていたが、今週、Natureに掲載される論文で、無顎脊椎動物であるヤツメウナギに原始的な交感神経系が存在することを示す証拠が発表される。この知見は、無意識のうちに作動し、闘争・逃走反応を制御する交感神経系の起源を再考するきっかけになるかもしれない。
交感神経系は有顎脊椎動物で進化したと考えられており、ヤツメウナギには交感神経系がないと考えられていた。これに対して、Marianne Bronnerらは、ヤツメウナギの幼生の胴体に一対の交感神経ニューロンの束が鎖状に配置されていることを発見した。
Bronnerらは、この原始的な交感神経系が、神経堤細胞という胚性構造物に由来することを明らかにした。神経堤細胞は、遊走性を有する幹細胞の一過的な集団で、脊椎動物の数多くの重要な構造を生み出している。こうした特徴の多くは、無顎脊椎動物の祖先にも存在していたが、一部の特徴(顎や交感神経系など)は、その後、有顎脊椎動物において出現したと一般的に考えられている。今回の知見は、交感神経系が有顎脊椎動物に初めて出現したとする見解に異論を唱えるものであり、ヤツメウナギなどの無顎脊椎動物が、複雑な脊椎動物の特徴の出現を理解するための重要なモデルであることを明確に示している。
発生神経科学:交感神経ニューロンは脊椎動物の黎明期の神経冠に起源を持つ
発生神経科学:交感神経系の起源に新見解
交感神経系はこれまで、有顎脊椎動物の新機軸だと考えられてきた。しかし今回、M Bronnerたちによって、無顎類のヤツメウナギにも交感神経節が存在することが示され、原始的な交感神経系が最初期の脊椎動物の特徴であった可能性が示されている。
参考文献:
Edens BM. et al.(2024): Neural crest origin of sympathetic neurons at the dawn of vertebrates. Nature, 628, 8010, 121–126.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07297-0
本論文は、そうした見解とは対照的に、体幹の交感神経細胞が、現生の無顎脊椎動物であるウミヤツメ(Petromyzon marinus)にも存在することを報告します。これらの神経細胞は、背側大動脈近傍の交感神経芽細胞群から生じ、顎口類で報告されているのと相同な転写プログラムに従って、ノルアドレナリン作動性の指定を受けます。ヤツメウナギの交感神経芽細胞は、心臓の外側の空間に存在し、左右両側の流れにより体幹全長にわたって広がり、カテコールアミン生合成経路の酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ–ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼを発現する、と分かりました。
また、CM-DiI細胞系譜追跡解析によって、これらの細胞が体幹の神経冠に由来する、と確認されました。単離したアンモシーテスの体幹交感神経芽細胞のRNA塩基配列解読からは、交感神経細胞の機能に特徴的な遺伝子特性が明らかになりました。これらの調査結果は、交感神経節は顎口類の新機軸であるとする定説に異議を唱えるもので、代わりに、後期に発生する祖先的な交感神経系が最初期の脊椎動物の特徴にあった可能性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
生物学:闘争・逃走系の起源
交感神経系は有顎脊椎動物に特有なものとこれまで考えられていたが、今週、Natureに掲載される論文で、無顎脊椎動物であるヤツメウナギに原始的な交感神経系が存在することを示す証拠が発表される。この知見は、無意識のうちに作動し、闘争・逃走反応を制御する交感神経系の起源を再考するきっかけになるかもしれない。
交感神経系は有顎脊椎動物で進化したと考えられており、ヤツメウナギには交感神経系がないと考えられていた。これに対して、Marianne Bronnerらは、ヤツメウナギの幼生の胴体に一対の交感神経ニューロンの束が鎖状に配置されていることを発見した。
Bronnerらは、この原始的な交感神経系が、神経堤細胞という胚性構造物に由来することを明らかにした。神経堤細胞は、遊走性を有する幹細胞の一過的な集団で、脊椎動物の数多くの重要な構造を生み出している。こうした特徴の多くは、無顎脊椎動物の祖先にも存在していたが、一部の特徴(顎や交感神経系など)は、その後、有顎脊椎動物において出現したと一般的に考えられている。今回の知見は、交感神経系が有顎脊椎動物に初めて出現したとする見解に異論を唱えるものであり、ヤツメウナギなどの無顎脊椎動物が、複雑な脊椎動物の特徴の出現を理解するための重要なモデルであることを明確に示している。
発生神経科学:交感神経ニューロンは脊椎動物の黎明期の神経冠に起源を持つ
発生神経科学:交感神経系の起源に新見解
交感神経系はこれまで、有顎脊椎動物の新機軸だと考えられてきた。しかし今回、M Bronnerたちによって、無顎類のヤツメウナギにも交感神経節が存在することが示され、原始的な交感神経系が最初期の脊椎動物の特徴であった可能性が示されている。
参考文献:
Edens BM. et al.(2024): Neural crest origin of sympathetic neurons at the dawn of vertebrates. Nature, 628, 8010, 121–126.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07297-0
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