『卑弥呼』第128話「殺人鬼」
『ビッグコミックオリジナル』2024年4月20日号掲載分の感想です。前回は、馬韓の湖南(コナム)国の王から、倭人が扇動して叛乱を起こしたので、蘇塗(ソト)の邑を討伐するよう、ヤノハ一行が命じられたところで終了しました。今回は、馬韓の湖南国の郊外の蘇塗という邑に通ずる道をヤノハ一行が進んでいる場面から始まります。道には、多数の鳥の木彫りのような棒が突き刺さっており、天に向かって何か願い事をしているのだろうか、と推測するヌカデは不気味に感じています。蘇塗を包囲した、とトメ将軍に報告したイセキは、伊岐(イキ、現在の壱岐諸島でしょう)国の日守(ヒマモ)りでトメ将軍一行の伊岐から黒島までの航海で示齊を務めたアシナカの縁戚のようです。イセキの報告によると、蘇塗は無人のようです。襲撃のため全員で払っているのだろうか、と推測するトメ将軍に、万一、蘇塗に賊がいた場合、わずかな兵士で大丈夫だろうか、とヒホコは懸念します。日見子(ヒミコ)であるヤノハは豪気すぎるのではないか、というわけです。ヒホコは、目達(メタ)国のスイショウ王の指示により朝鮮半島に残った人々の子孫が暮らす邑の長です。
トメ将軍は、湖南王とのやり取りを回想していました。湖南王は、倭人は罪人を訓練し、邑々を襲ってすでに百人の民を殺しており、血も涙もない殺人鬼だ、と強く批判します。その倭人は、凶悪な罪人に弓の訓練をさせ、矢柄にフグ毒を用いている、とヤノハ一行に伝えた湖南王は、同じ倭人ならその者を殺す責任があるだろう、と厳しく指摘します。蘇塗に向かう途中、トメ将軍はヒホコに湖南王の話をどう思ったのか尋ね、できるなら戦を避けるべきだ、とヒホコは答えます。ヒホコは、自軍が負けるとは思っていないものの、倭人に率いられた賊が強力なら戦は長引き、この地で想像以上に厳しい冬を迎えることになる、と懸念していました。トメ将軍に判断を委ねられたヤノハは、賊を率いる倭人に会いたいので、明日蘇塗に行こう、と提案します。トメ将軍は、ヤノハには何か深い考えがあるのだろう、とヤノハを信頼していますが、まだヤノハと知り合って日の浅いヒホコは、ヤノハの命を危ぶみます。するとトメ将軍は、ここで死ぬなら自分には天分がない、とヤノハなら言うだろう、とヒホコを諭します。
蘇塗の邑の入口まで来たヤノハ一行は、まずアカメを中へと偵察に向かわせます。その様子を離れた場所で見ていたトメ将軍は、地面を鳴らすような奇妙な音に気づきます。ヒホコは地面に耳を当て、馬が全速力で近づいてくることに気づきます。アカメが蘇塗の邑には誰もいない、と報告すると、ヤノハはヌカデやオオヒコや兵士とともに邑の中に入りますが、鳥の木彫りの棒はありませんでした。邑の中央には広場があり、その真ん中には石積みがありました。石積みには自分だけで近づく、と言うヤノハは、その理由をオオヒコから尋ねられると、聖地のようだからだ、と答えます。ヤノハは、石積みが祭壇で、敵が非道でも祭壇を怪我してはならない、と考えていました。オオヒコは兵士に、広場の周囲に散るよう命じます。ヤノハは石積みの上にある人物像を見て、穏やかな微笑みだと思います。離れたところにいたトメ将軍とヒホコは、弓と靭を持った騎馬武者の男性が単独で近づいてきたことに気づきます。この騎馬武者をイセキは止めようとしますが、トメ将軍はそれを制止します。すると、大柄な騎馬武者は下馬して弓と靭を地面に置き、石積みの前にいるヤノハに近づいてきます。ヤノハは、一人で自分たちを襲う愚か者か見定めるため、様子を見ることにします。その騎馬武者は黥のある顔を曝し、自分と同じ倭人とお見受けした、とヤノハに語りかけます。頷くヤノハに、その騎馬武者がゴリと名乗るところで今回は終了です。
今回は、湖南国に叛いた人々を扇動したと思われる倭人と、ヤノハとの出会いまでが描かれました。この倭人が倭国のどこから来たのか、あるいはヒホコのように朝鮮半島に移住して何代か経っているのか、虐殺の目的は何なのか、蘇塗の邑はなぜ無人だったのか、ヤノハに単独で会ったのはなぜなのかなど、現時点では多くのことが不明です。また、蘇塗の邑の石積みの上にある人物像も気になるところで、西域系のように見えます。この時代の朝鮮半島の信仰に詳しくないので的外れな推測になりそうですが、あるいは仏像なのでしょうか。いよいよ朝鮮半島情勢が本格的に描かれるようになりましたが、どのように話が展開するのか、予想が難しく、その分だけ楽しみでもあります。遼東公孫氏の登場前も丁寧に描かれそうで、遼東公孫氏との直接のやり取り、さらには魏への遣使とも関わってきそうなだけに、蘇塗の邑をめぐる今後の展開には大いに期待しています。
トメ将軍は、湖南王とのやり取りを回想していました。湖南王は、倭人は罪人を訓練し、邑々を襲ってすでに百人の民を殺しており、血も涙もない殺人鬼だ、と強く批判します。その倭人は、凶悪な罪人に弓の訓練をさせ、矢柄にフグ毒を用いている、とヤノハ一行に伝えた湖南王は、同じ倭人ならその者を殺す責任があるだろう、と厳しく指摘します。蘇塗に向かう途中、トメ将軍はヒホコに湖南王の話をどう思ったのか尋ね、できるなら戦を避けるべきだ、とヒホコは答えます。ヒホコは、自軍が負けるとは思っていないものの、倭人に率いられた賊が強力なら戦は長引き、この地で想像以上に厳しい冬を迎えることになる、と懸念していました。トメ将軍に判断を委ねられたヤノハは、賊を率いる倭人に会いたいので、明日蘇塗に行こう、と提案します。トメ将軍は、ヤノハには何か深い考えがあるのだろう、とヤノハを信頼していますが、まだヤノハと知り合って日の浅いヒホコは、ヤノハの命を危ぶみます。するとトメ将軍は、ここで死ぬなら自分には天分がない、とヤノハなら言うだろう、とヒホコを諭します。
蘇塗の邑の入口まで来たヤノハ一行は、まずアカメを中へと偵察に向かわせます。その様子を離れた場所で見ていたトメ将軍は、地面を鳴らすような奇妙な音に気づきます。ヒホコは地面に耳を当て、馬が全速力で近づいてくることに気づきます。アカメが蘇塗の邑には誰もいない、と報告すると、ヤノハはヌカデやオオヒコや兵士とともに邑の中に入りますが、鳥の木彫りの棒はありませんでした。邑の中央には広場があり、その真ん中には石積みがありました。石積みには自分だけで近づく、と言うヤノハは、その理由をオオヒコから尋ねられると、聖地のようだからだ、と答えます。ヤノハは、石積みが祭壇で、敵が非道でも祭壇を怪我してはならない、と考えていました。オオヒコは兵士に、広場の周囲に散るよう命じます。ヤノハは石積みの上にある人物像を見て、穏やかな微笑みだと思います。離れたところにいたトメ将軍とヒホコは、弓と靭を持った騎馬武者の男性が単独で近づいてきたことに気づきます。この騎馬武者をイセキは止めようとしますが、トメ将軍はそれを制止します。すると、大柄な騎馬武者は下馬して弓と靭を地面に置き、石積みの前にいるヤノハに近づいてきます。ヤノハは、一人で自分たちを襲う愚か者か見定めるため、様子を見ることにします。その騎馬武者は黥のある顔を曝し、自分と同じ倭人とお見受けした、とヤノハに語りかけます。頷くヤノハに、その騎馬武者がゴリと名乗るところで今回は終了です。
今回は、湖南国に叛いた人々を扇動したと思われる倭人と、ヤノハとの出会いまでが描かれました。この倭人が倭国のどこから来たのか、あるいはヒホコのように朝鮮半島に移住して何代か経っているのか、虐殺の目的は何なのか、蘇塗の邑はなぜ無人だったのか、ヤノハに単独で会ったのはなぜなのかなど、現時点では多くのことが不明です。また、蘇塗の邑の石積みの上にある人物像も気になるところで、西域系のように見えます。この時代の朝鮮半島の信仰に詳しくないので的外れな推測になりそうですが、あるいは仏像なのでしょうか。いよいよ朝鮮半島情勢が本格的に描かれるようになりましたが、どのように話が展開するのか、予想が難しく、その分だけ楽しみでもあります。遼東公孫氏の登場前も丁寧に描かれそうで、遼東公孫氏との直接のやり取り、さらには魏への遣使とも関わってきそうなだけに、蘇塗の邑をめぐる今後の展開には大いに期待しています。
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