森恒二『創世のタイガ』第12巻(講談社)
2024年3月に刊行されました。第11巻は、現生人類(Homo sapiens)側の王であるナクムが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)側(とはいっても、その指導者は第二次世界大戦のドイツとフランスの国境付近の戦場から来たドイツ人将校ですが)との戦いで負傷し、タイガを王とするよう、遺言を残して没したところから始まります。タイガが現生人類側の新たな王となり、話が大きく動いていきますが、これまでの掲載誌である『イブニング』が休刊となったため、白泉社の『ヤングアニマル』誌に移籍しての連載となり、さらに『ヤングアニマル』誌での4話連載の後には、同じ白泉社の『ヤングアニマルZERO』誌に移っての連載続行となりました。ともかく、作品が継続して安心しています。
現生人類側は、鉄器の製作や城壁の建築やオオカミの家畜化など、この時代には本来なかった要素を取り入れ、分業も進んでいき、タイガたち「現代」からこの「太古」の世界に到来した7人は、自分たちが歴史を改変したことを改めて自覚し、この時代に生きていく覚悟を固めつつあるようです。撃退したネアンデルタール人が勢力を回復している、との報告を受けたアラタとタイガは、ネアンデルタール人側の軍人による本格的な作戦であることを悟ります。ネアンデルタール人側は狩猟場を奪おうとしている、と察したタイガたちは、防御ではなく攻勢に出る決断をします。タイガたちはネアンデルタール人の北の砦を陥落させます。
北の砦の補給隊が来ないことから、ネアンデルタール人側は「王族」の一人であるゲオルグを含めて4人が偵察に来ます。そこをタイガは飼い慣らしてきた「ウルフ」という名前の雄オオカミとともに襲撃し、捕虜とします。尋問されたゲオルグは、自分たちが「色つき」と呼んでいる現生人類側を滅ぼすまで戦いを止めない、と改めて言い、現生人類側では多くがゲオルグを殺すよう主張しますが、タイガは、戦いを終わらせるために、ゲオルグを仲介としてネアンデルタール人側の王と会うことに決めます。
ネアンデルタール人側の「王族」で遠征部隊を指揮しているデニスは、4人で来るとのタイガとの約束を破って多数の兵士とともに現れ、「雷の杖(銃)」を持ち出してタイガたちを脅迫し、「弟」であるゲオルグを解放するよう、タイガに要求します。タイガが停戦を打診しても、強硬派のデニスは応じず、タイガの前を歩かされている、ゲオルグともども射殺しようとして、ゲオルグは撃たれて重傷を負いますが、タイガは軽傷でした。ゲオルグはなおも銃撃を続けますが弾切れとなり、配下の兵士にタイガたちを殺すよう、命じます。人数で圧倒されているタイガは逃げますが、ネアンデルタール人側が追撃してきたところを、現生人類側の伏兵が現れて撃退します。
デニスはゲオルグを取り戻し、見舞います。ゲオルグは改めて「色つき」側に勝てないので和睦するよう提案しますが、デニスは、タイガ一人を殺せば勝てる、と主張し、策があることも伝えます。それは大型類人猿で、「色つき」を殺せば餌をもらえる、とデニスは調教していました。タイガは西の砦を奪還するべく出陣しますが、デニスはそこで罠を仕掛け、タイガは火に包囲された中で、大型類人猿と戦わざるを得なくなります。火に囲まれた中で、凶暴な大型類人猿相手苦戦するタイガを見て、ティアリが現生人類側で一番の怪力であるカイザに頼んで自分を飛ばしてもらい、槍でタイガを援護するところで、第11巻は終了となります。
第12巻は、タイガが現生人類側の新たな王となって新展開を迎え、ネアンデルタール人との戦いはさらに激化していきます。ネアンデルタール人側の「王族」であるデニスは強硬派で、とても現生人類側との和睦は考えられない状況ですが、ユカはネアンデルタール人側の「王族」の最年少であるヴォルフと親しくなっており、ヴォルフはユカを特別な存在と考えていますから、ユカとヴォルフが、現生人類とネアンデルタール人の敵対的な関係を変える契機になる可能性も考えられます。また、デニスがタイガ対策に用いた大型類人猿の正体が気になるところで、これは、本作の舞台の場所とも関わってくるように思われます。本作の舞台が後期更新世ならば、ヨーロッパにはすでに類人猿はおらず、アジア南西部にも大型類人猿はいないと思いますが、「現代人」が複数「太古」へと移動させられているわけで、「史実」とは異なる何らかの「超常的な」力が作用していることを表しているのかもしれません。連載が月刊誌へと移り、進行が以前よりも遅くなりましたが、私は相変わらず楽しめているので、完結まで見届けるつもりです。なお、第1巻~第11巻までの記事は以下の通りです。
第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html
第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html
第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html
第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html
第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html
第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html
第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html
第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html
第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html
第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html
第11巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_1.html
現生人類側は、鉄器の製作や城壁の建築やオオカミの家畜化など、この時代には本来なかった要素を取り入れ、分業も進んでいき、タイガたち「現代」からこの「太古」の世界に到来した7人は、自分たちが歴史を改変したことを改めて自覚し、この時代に生きていく覚悟を固めつつあるようです。撃退したネアンデルタール人が勢力を回復している、との報告を受けたアラタとタイガは、ネアンデルタール人側の軍人による本格的な作戦であることを悟ります。ネアンデルタール人側は狩猟場を奪おうとしている、と察したタイガたちは、防御ではなく攻勢に出る決断をします。タイガたちはネアンデルタール人の北の砦を陥落させます。
北の砦の補給隊が来ないことから、ネアンデルタール人側は「王族」の一人であるゲオルグを含めて4人が偵察に来ます。そこをタイガは飼い慣らしてきた「ウルフ」という名前の雄オオカミとともに襲撃し、捕虜とします。尋問されたゲオルグは、自分たちが「色つき」と呼んでいる現生人類側を滅ぼすまで戦いを止めない、と改めて言い、現生人類側では多くがゲオルグを殺すよう主張しますが、タイガは、戦いを終わらせるために、ゲオルグを仲介としてネアンデルタール人側の王と会うことに決めます。
ネアンデルタール人側の「王族」で遠征部隊を指揮しているデニスは、4人で来るとのタイガとの約束を破って多数の兵士とともに現れ、「雷の杖(銃)」を持ち出してタイガたちを脅迫し、「弟」であるゲオルグを解放するよう、タイガに要求します。タイガが停戦を打診しても、強硬派のデニスは応じず、タイガの前を歩かされている、ゲオルグともども射殺しようとして、ゲオルグは撃たれて重傷を負いますが、タイガは軽傷でした。ゲオルグはなおも銃撃を続けますが弾切れとなり、配下の兵士にタイガたちを殺すよう、命じます。人数で圧倒されているタイガは逃げますが、ネアンデルタール人側が追撃してきたところを、現生人類側の伏兵が現れて撃退します。
デニスはゲオルグを取り戻し、見舞います。ゲオルグは改めて「色つき」側に勝てないので和睦するよう提案しますが、デニスは、タイガ一人を殺せば勝てる、と主張し、策があることも伝えます。それは大型類人猿で、「色つき」を殺せば餌をもらえる、とデニスは調教していました。タイガは西の砦を奪還するべく出陣しますが、デニスはそこで罠を仕掛け、タイガは火に包囲された中で、大型類人猿と戦わざるを得なくなります。火に囲まれた中で、凶暴な大型類人猿相手苦戦するタイガを見て、ティアリが現生人類側で一番の怪力であるカイザに頼んで自分を飛ばしてもらい、槍でタイガを援護するところで、第11巻は終了となります。
第12巻は、タイガが現生人類側の新たな王となって新展開を迎え、ネアンデルタール人との戦いはさらに激化していきます。ネアンデルタール人側の「王族」であるデニスは強硬派で、とても現生人類側との和睦は考えられない状況ですが、ユカはネアンデルタール人側の「王族」の最年少であるヴォルフと親しくなっており、ヴォルフはユカを特別な存在と考えていますから、ユカとヴォルフが、現生人類とネアンデルタール人の敵対的な関係を変える契機になる可能性も考えられます。また、デニスがタイガ対策に用いた大型類人猿の正体が気になるところで、これは、本作の舞台の場所とも関わってくるように思われます。本作の舞台が後期更新世ならば、ヨーロッパにはすでに類人猿はおらず、アジア南西部にも大型類人猿はいないと思いますが、「現代人」が複数「太古」へと移動させられているわけで、「史実」とは異なる何らかの「超常的な」力が作用していることを表しているのかもしれません。連載が月刊誌へと移り、進行が以前よりも遅くなりましたが、私は相変わらず楽しめているので、完結まで見届けるつもりです。なお、第1巻~第11巻までの記事は以下の通りです。
第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html
第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html
第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html
第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html
第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html
第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html
第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html
第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html
第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html
第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html
第11巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_1.html
この記事へのコメント