喫煙開始年齢と脳容量の関係
取り上げるのが遅れてしまいましたが、喫煙開始年齢と脳容量の関係についての研究(Xiang et al., 2023)が公表されました。青年期におけるタバコの喫煙は差し迫った公衆衛生上の問題です。喫煙は世界的に成人の死亡原因の第1位で、全世界の喫煙に関連した死者数は2030年の時点で年間800万人に達する、と予測されています。これまでの研究で、喫煙の開始は脳の発達にとって重要な時期である青年期に最も起こりやすく、毎日喫煙する人の大半18歳までにニコチン依存症を発症する、と示唆されていました。しかし、青年期における喫煙開始と継続の根底にある神経の機序、とくに変化した脳発達と喫煙こうどうとの間の潜在的因果関係は、理解しづらいままです。
本論文では、より具体的には、大規模な縦断的思春期デジタル画像処理の遺伝的コホート(特定の性質が一致する個体で構成される集団)を用いて、左側腹内側前頭前野(ventromedial prefrontal cortex、略してvmPFC)の腹内側前頭前野(ventromedial prefrontal cortex、略してvmPFC)の灰白質容量(gray matter volume、略してGMV)と、その後の自己申告による喫煙開始との間、および右側vmPFCのGMVと喫煙行動維持との間の関連を確認します。対象となったのはIMAGEN計画に参加した807人の健康な青年で、14歳と19歳と23歳だった時の脳画像データと質問票データが解析されたわけです。生涯に2回以上喫煙したことがあると自己報告した参加者は、喫煙者と見なされました。
規則違反行動は、縦断的交差遅延分析とメンデル無作為化に基づいて、より小さな左側vmPFCのGMVと喫煙行動との間の関連を媒介します。対照的に、右側vmPFCのGMVの喫煙行動関連縦断的共変動と感覚追及(とくに快楽経験)は、常習性行動維持の潜在的な報酬に基づく機序を浮き彫りにします。まとめると、本論文の調査結果は、ニコチン中毒の初期段階の潜在的な生物標識としてのvmPFCのGMVを明らかにし、その予防と治療への示唆を提供します。こうした脳領域の容積の違いが、新奇性追求や刺激追求といった性格特性にも関連している可能性も指摘されており、進化的観点からも注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
神経科学:10代の若者における脳領域のサイズと喫煙行動の関連性
青年期の男女の縦断的観察データに基づいた研究から、10代の若者において、脳の前頭葉領域が喫煙行動の開始と継続に関連している可能性があることが示唆された。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、この脳領域が、ニコチン嗜癖の初期段階を示すバイオマーカーとなる可能性があり、その予防と治療に影響を及ぼすことになるかもしれないと述べている。
喫煙は、世界的に成人の死亡原因の第1位であり、全世界の喫煙に関連した死者数は、2030年の時点で年間800万人に達すると予測されている。これまでの研究で、喫煙の開始は、脳の発達にとって重要な時期である青年期に最も起こりやすく、毎日喫煙する人の大部分が、18歳までにニコチン依存症を発症することが示唆されていた。しかし、青年期の喫煙の開始と継続の根底にある神経機構、特に脳の発達の変調と喫煙行動との間の相互作用の可能性については、解明が進んでいない。
今回、Tianye Jiaらは、IMAGENプロジェクトに参加した807人の健康な青年男女が14歳、19歳、23歳だった時の脳画像データと質問票データを解析した。それぞれの年齢で、生涯に2回以上喫煙したことがあると自己報告した参加者は喫煙者と見なされた。Jiaらは、腹内側前頭前野という脳領域が喫煙の開始と継続に関連しているという見解を示している。今回の研究で、左の腹内側前頭前野の灰白質の容積の減少が、喫煙が開始する可能性の増加に関連していると考えられること、また、右の腹内側前頭前野の灰白質の容積の減少が、喫煙の継続に関連していると考えられることも明らかになった。Jiaらは、こうした脳領域の容積の違いは、新奇性追求や刺激追求という性格特性にも関連しているかもしれないと考えている。
参考文献:
Xiang S. et al.(2023): Association between vmPFC gray matter volume and smoking initiation in adolescents. Nature Communications, 14, 4684.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-40079-2
本論文では、より具体的には、大規模な縦断的思春期デジタル画像処理の遺伝的コホート(特定の性質が一致する個体で構成される集団)を用いて、左側腹内側前頭前野(ventromedial prefrontal cortex、略してvmPFC)の腹内側前頭前野(ventromedial prefrontal cortex、略してvmPFC)の灰白質容量(gray matter volume、略してGMV)と、その後の自己申告による喫煙開始との間、および右側vmPFCのGMVと喫煙行動維持との間の関連を確認します。対象となったのはIMAGEN計画に参加した807人の健康な青年で、14歳と19歳と23歳だった時の脳画像データと質問票データが解析されたわけです。生涯に2回以上喫煙したことがあると自己報告した参加者は、喫煙者と見なされました。
規則違反行動は、縦断的交差遅延分析とメンデル無作為化に基づいて、より小さな左側vmPFCのGMVと喫煙行動との間の関連を媒介します。対照的に、右側vmPFCのGMVの喫煙行動関連縦断的共変動と感覚追及(とくに快楽経験)は、常習性行動維持の潜在的な報酬に基づく機序を浮き彫りにします。まとめると、本論文の調査結果は、ニコチン中毒の初期段階の潜在的な生物標識としてのvmPFCのGMVを明らかにし、その予防と治療への示唆を提供します。こうした脳領域の容積の違いが、新奇性追求や刺激追求といった性格特性にも関連している可能性も指摘されており、進化的観点からも注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
神経科学:10代の若者における脳領域のサイズと喫煙行動の関連性
青年期の男女の縦断的観察データに基づいた研究から、10代の若者において、脳の前頭葉領域が喫煙行動の開始と継続に関連している可能性があることが示唆された。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、この脳領域が、ニコチン嗜癖の初期段階を示すバイオマーカーとなる可能性があり、その予防と治療に影響を及ぼすことになるかもしれないと述べている。
喫煙は、世界的に成人の死亡原因の第1位であり、全世界の喫煙に関連した死者数は、2030年の時点で年間800万人に達すると予測されている。これまでの研究で、喫煙の開始は、脳の発達にとって重要な時期である青年期に最も起こりやすく、毎日喫煙する人の大部分が、18歳までにニコチン依存症を発症することが示唆されていた。しかし、青年期の喫煙の開始と継続の根底にある神経機構、特に脳の発達の変調と喫煙行動との間の相互作用の可能性については、解明が進んでいない。
今回、Tianye Jiaらは、IMAGENプロジェクトに参加した807人の健康な青年男女が14歳、19歳、23歳だった時の脳画像データと質問票データを解析した。それぞれの年齢で、生涯に2回以上喫煙したことがあると自己報告した参加者は喫煙者と見なされた。Jiaらは、腹内側前頭前野という脳領域が喫煙の開始と継続に関連しているという見解を示している。今回の研究で、左の腹内側前頭前野の灰白質の容積の減少が、喫煙が開始する可能性の増加に関連していると考えられること、また、右の腹内側前頭前野の灰白質の容積の減少が、喫煙の継続に関連していると考えられることも明らかになった。Jiaらは、こうした脳領域の容積の違いは、新奇性追求や刺激追求という性格特性にも関連しているかもしれないと考えている。
参考文献:
Xiang S. et al.(2023): Association between vmPFC gray matter volume and smoking initiation in adolescents. Nature Communications, 14, 4684.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-40079-2
この記事へのコメント