大河ドラマ『光る君へ』第13回「進むべき道」

 前回、紫式部(まひろ)と藤原道長(三郎)は完全に訣別したようにも思えましたが、道長の妻となった源倫子は紫式部が困窮していることを知り、紫式部を呼び出します。紫式部はそこで倫子から、自身が道長に送った手紙を、道長がまだ持っている、と聞き、最後に紫式部と道長が再開し、本作の主題が紫式部と道長の関係である、と改めて思わされました。倫子は、道長が保管していた手紙を、紫式部が送ったとはまだ気づいていないようですが、本作の倫子は感が鋭いようなので、そのうち気づくのではないか、と予想しています。そうだとしても、本作の倫子なら、凄みを見せつつ、軽く紫式部を牽制するに留めるように思いますが、紫式部と倫子とのやり取りがどう描かれるのか、今回初登場となった彰子にどのような経緯で紫式部が仕えるのかなど、今後の楽しみが増えました。

 前回から4年経過して990年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)となり、藤原兼家はすっかり老いてしまい、認知症が進んでいる感もあります。兼家の後継をめぐって道隆と道兼の確執は深まり、藤原氏の兄弟間ではよくあることで、「兄弟は他人の始まり」とはよく言ったものだと思います。老いた兼家は間もなくその地位を息子の道隆に譲り、その後すぐに死亡するわけですが、死が近いことを自覚しているようで、それだけに子孫の繁栄に執着しているところもあるのでしょうか。また、死期を強く自覚しているため、それだけ呪詛を恐れているのはこの時代の人物らしいと思います。兼家の退場は近そうですが、強欲でありつつ器の大きいところも臆病なところも見せており、業の深い人物として上手い人物造形になっている、と思います。道隆の繁栄は、今回が成人役での初登場となる娘の定子と一条天皇の良好な関係とともに印象深く描かれました。

 定子は、配役からも子役時代に目立つ場面があったことからも、本作では扱いが大きいのではないか、と予想していましたが、今回の描写からも、やはり本作でかなり重要な役割を担うのではないか、と改めて思いました。定子は明るく教養豊かな人物として描かれるようで、今後仕えることになる清少納言(ききょう)とのやり取りがどう描かれるのかも、注目しています。その清少納言は、後に紫式部の夫となる藤原宣孝を『枕草子』で揶揄しており、そのため紫式部は日記で清少納言を腐したのではないか、とも推測されていますが、今回はその元ネタになりそうな話も描かれており、こうした逸話も取り入れていくところや、紫式部を庶民と絡ませ、朝廷の貴族社会だけではなく、多面的な描写が見られることなども、本作の魅力になっているように思います。

この記事へのコメント