ヒョウの古代ミトコンドリアDNA
ヒョウの古代ミトコンドリアDNA(mtDNA)を報告した研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。近年の古代DNA研究の進展は目覚ましく、やはりヒトを対象にした研究がとくに盛んですが、非ヒト動物の古代DNAデータも多数報告されるようになっています。本論文は、古代mtDNAデータからヒョウ(Panthera pardus)の進化史を推測しています。ヒョウ属については、最近同じトラ(Panthera tigris)の古代DNAデータが報告され、その進化史が推測されていますが(関連記事)、ライオン(Panthera leo)やジャガー(Panthera onca)も含まれるヒョウ属には絶滅が危惧されている分類群もおり、保護の観点からも古代DNA研究の進展が期待されます。
●分析と考察
中華人民共和国湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州永順(Yongshun)県の老司城(Laosicheng)遺跡は、ダイチン・グルン(大清帝国)中期(300年前頃)以前のこの地域の動物個体群の構成の解明に重要な役割を果たしています。この遺跡では、かなりの数の動物の骨が発見されており、そのうち11960点は種水準で同定されていて、古代の動物個体群の直接的な証拠として機能としています。とくに、老司城遺跡の2点の哺乳類頭骨は、老司城1号(10YLG10、101)および老司城2号(10YLG10、134)として命名され、特別な注目を集めており、老司城2号は上述の文献で表紙画像に選ばれました。当初、これらの頭骨はイヌ科として分類され、老司城1号はイヌとして、老司城2号はオオカミとして同定されました。しかし、これらの分類の正確さには疑問が呈されてきました。
この状況で包括的な分析が行なわれ、微細計算断層写真術(micro-computed tomography、略してmicro-CT)と古代DNA技術を用いての老司城遺跡の標本2点の正確な頭蓋形態調査とミトコンドリアゲノム配列決定が含まれ、分類学的再評価が促進されました。その結果、両方の頭蓋はキタシナヒョウ(Panthera pardus japonensis)に分類される、と明らかになりました。さらに、アジア東部に焦点を当てての、この研究と世界中のヒョウのデータセットのデータを用いての系統発生分析から、アジア東部のヒョウ、つまりチョウセンヒョウ(Panthera pardus orientalis)とキタシナヒョウとインドシナヒョウ(Panthera pardus delacouri)は異なる3個体群に属する、と強く示唆されました。これは、アジア東部のヒョウの母方の遺伝的歴史の理解を大きく進展させます。
当初、micro-CT検査(中国科学院高エネルギー物理学研究所)は2点の標本で実行され、種同定のため正確な頭蓋形態データが得られました。この過程も、遺伝学的分析の前に頭骨の元々の形態的特徴の保存を確実にしました。頭骨形態を記載するため、22点の頭骨計測が三次元モデルで行なわれ、これらの測定値の平均値と標準偏差(standard deviations、略してSD)は補足表1に示されています。頭骨の大きさは一般的にヒョウやユキヒョウと類似していましたが、ネコ族やウンピョウ属よりも著しく大きいものでした。注目すべきことに、頭骨の耳骨胞は膨らんでおり、外鼓膜室は比較的小さく、これはユキヒョウとは異なる特徴です。さらに、乳様突起は比較的弱く、遠位後眼窩骨圧縮はユキヒョウよりもヒョウの方への密接な類似性を裏づけました。
正確な種同定のため、現生のネコ科15種とヒョウ族6種と老司城遺跡の標本2点を含む頭骨の背面を示す写真が収集され、8点の指標測定値の分散共分散行列を用いた主成分分析(principal component analysis、略してPCA)のために用いられました。その結果、老司城遺跡の標本2点はゆるいクラスタ(まとまり)を形成し、ネコ族とヒョウ族の間に位置し、決定的な種同定を提供しない、と論証されました。形態学的証拠から、老司城遺跡の標本2点は明確な特徴により特徴づけられるネコ科に属すると、と示唆されましたが、頭骨の損傷状態は特定の種決定に課題をもたらしました。したがって、より正確な同定のため、内在性古代DNA配列の回収が試みられました。
先行研究では、古代の動物の分類群の同定における古代DNA解析の有効性が確立されてきており、遺伝的データは個体群の遺伝的歴史のより包括的な理解も可能とします。本論文では、老司城遺跡の標本2点について、高品質なミトコンドリアゲノム配列の取得に成功しました。老司城遺跡の標本2点をネコ科の全属を表す他の114個体と組み合わせたデータセットの使用により、対での遺伝的距離分析から、老司城遺跡の標本2点は他の分類群よりもヒョウ属と密接な遺伝的類似性を共有している、と示唆されました。
老司城遺跡の標本2点とヒョウ属内の79個体(ヒョウ50個体、ライオン5個体、ユキヒョウ15個体、ジャガー4個体、トラ5個体)との間のさらなる遺伝的距離比較は、老司城遺跡の標本2点をヒョウに最も近いと位置づけ、老司城遺跡の標本2点は遺伝的に他の亜種よりもキタシナヒョウと近縁でした(図1B)。種同定を証明し、アジア東部のヒョウの母方の遺伝的歴史へのさらなる洞察を得るため、同じデータセットが用いられ、系統樹が構築されました。その結果得られたベイズおよび最尤系統樹は、遺伝的距離の結果と一致しました。本論文はこれらの調査結果に基づいて、老司城遺跡の標本2点の分類をヒョウ、具体的にはキタシナヒョウと提案します。以下は本論文の図1です。
全てのヒョウ種の個体は2群に分類され(ユーラシアとアフリカ)、ユーラシアとアフリカのミトコンドリア系統間の深い分岐(769000年前頃、95%信頼区間で100万~518000年前)を明らかにし、これは先行研究の調査結果と類似しており、最も可能性の高い起源地としてのアフリカを裏づけます。ヒョウのアジアの個体群は主要な3系統に区分され、チョウセンヒョウにより表される北方群、キタシナヒョウにより表される中央群、インドシナヒョウにより表される南方群が含まれます。中央群には韓国の大田(Daejeon)O世界遊園地に由来する標本1点が含まれ、これは分類学的にチョウセンヒョウと特定されましたが、キタシナヒョウからの約30%の遺伝的混合を含んでいる、と分かりました(図1Cの*キタシナヒョウ_山西省)。南方群にはインドネシアの標本1点が含まれ(図1Cの*ジャワヒョウ_インドネシア)、これは、アジア南東部の島嶼部と本土の間での生きている動物の歴史的な交換もしくは狩猟戦利品の獲得に由来するかもしれない、インドシナヒョウと密接に関連しています。老司城遺跡の標本2点は相互と最高の遺伝的相関を示し、中央群の個体群とまとまり、キタシナヒョウとの類似性を示した以前の結果と一致します。
ヒョウのユーラシア東部の3個体群(チョウセンヒョウとキタシナヒョウとインドシナヒョウ)は連続的な分布を示し、遺伝的パターンと地理的位置の間に顕著な相関があります(図1A・C)。明確な生物地理的障壁の欠如、およびアジア大陸部のヒョウとジャワ島のヒョウとの間の最小限の分子的違いを考慮して、ネコの分類任務に携わっている専門家22人から構成される国際自然保護連合(International Union for the Conservation of Nature、略してIUCN)のネコ専門家集団は、わずか724塩基対の連結ミトコンドリア配列から得られた分子証拠に基づいて、キタシナヒョウをチョウセンヒョウと統合し、おそらくインドシナヒョウはチョウセンヒョウと統合される、と提案してきました。
しかし、完全なミトコンドリアゲノムは、部分的配列よりもずっと多くの情報をもたらし、信頼性が高くなります。とくに、完全なミトコンドリアゲノムに基づくと、本論文の系統樹は明らかに、チョウセンヒョウとキタシナヒョウとインドシナヒョウを、それぞれ北方群と中央群と南方群に分類します。この調査結果は、分子分散分析(AMOVA)および系統発生網分析によりさらに裏づけられました。これら3クレード(単系統群)の分岐は、155000年前頃(95%信頼区間で215000~102000年前)に起きた、と推定されました(図1C)。以前のマイクロサテライト(数塩基の単位配列の繰り返しから構成される反復配列)分析も、チョウセンヒョウとキタシナヒョウとの間の有意な遺伝的分岐を示唆しました。したがって本論文は、明確な生物地理的障壁の欠如にも関わらず、これら3クレードのヒョウは明確な3個体群(亜個体群)と正確に見なすことができる、と結論付けます。
老司城遺跡の標本2点は中央群の個体とクラスタ化し(まとまり)、その出所地と一致します。19個体以上のヒョウが老司城遺跡で発見されており(本論文の標本2点も含まれます)、600~300年前頃に、周辺地域には比較的大きなヒョウ個体群が存在した、と示唆されます。この減少は、中国中央部におけるヒョウの現在の分布と大きく異なっています。ベイズスカイラインプロット分析から、ヒョウの有効個体群規模は過去3万年間に一貫して減少してきた、と示唆されました。しかし本論文は、過去数世紀にわたるヒトの活動の激化が、ヒョウ個体数の減少に大きく寄与してきた、と推測します。先行研究により結論づけられているように、ヒョウ個体群への主要な脅威には、ヒトと野生生物の衝突、獲物の減少、生息地喪失と劣化、狩猟/密猟が含まれます。
要するに、本論文は老司城遺跡の哺乳類遺骸の議論のある同定を解決し、問題となっていた頭骨2点はヒョウ(キタシナヒョウ)と認識されるべきである、と決定しました。この調査結果は種同定を明確にするだけではなく、既存の遺伝学的枠組みから大きく乖離している、アジア東部のヒョウの母方の遺伝的歴史への新たな洞察も提供します。本論文における老司城遺跡の標本2点かんら得られた頭骨測定は、計数式形態学的モデルと中国における古代のヒョウの遺伝的データの間隙を埋め、考古学的遺跡で発見された哺乳類遺骸の正確な同定について、形態学的データと分子データの成功した統合を例証します。動物遺骸は地域的な動物学研究、および分類群と古代の貴族の検証に不可欠です。この研究は、考古学的遺跡から発見された哺乳類遺骸と関連する同定の課題の解決における遺伝学的手法の有効性を示し、動物の進化史の解明におけるこれらの手法の有効性を強調します。
参考文献:
Zhang M. et al.(2024): Ancient DNA unravels species identification from Laosicheng site, Hunan Province, China, and provides insights into maternal genetic history of East Asian leopards. Zoological Research, 45, 1, 226–229.
https://doi.org/10.24272/j.issn.2095-8137.2023.292
●分析と考察
中華人民共和国湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州永順(Yongshun)県の老司城(Laosicheng)遺跡は、ダイチン・グルン(大清帝国)中期(300年前頃)以前のこの地域の動物個体群の構成の解明に重要な役割を果たしています。この遺跡では、かなりの数の動物の骨が発見されており、そのうち11960点は種水準で同定されていて、古代の動物個体群の直接的な証拠として機能としています。とくに、老司城遺跡の2点の哺乳類頭骨は、老司城1号(10YLG10、101)および老司城2号(10YLG10、134)として命名され、特別な注目を集めており、老司城2号は上述の文献で表紙画像に選ばれました。当初、これらの頭骨はイヌ科として分類され、老司城1号はイヌとして、老司城2号はオオカミとして同定されました。しかし、これらの分類の正確さには疑問が呈されてきました。
この状況で包括的な分析が行なわれ、微細計算断層写真術(micro-computed tomography、略してmicro-CT)と古代DNA技術を用いての老司城遺跡の標本2点の正確な頭蓋形態調査とミトコンドリアゲノム配列決定が含まれ、分類学的再評価が促進されました。その結果、両方の頭蓋はキタシナヒョウ(Panthera pardus japonensis)に分類される、と明らかになりました。さらに、アジア東部に焦点を当てての、この研究と世界中のヒョウのデータセットのデータを用いての系統発生分析から、アジア東部のヒョウ、つまりチョウセンヒョウ(Panthera pardus orientalis)とキタシナヒョウとインドシナヒョウ(Panthera pardus delacouri)は異なる3個体群に属する、と強く示唆されました。これは、アジア東部のヒョウの母方の遺伝的歴史の理解を大きく進展させます。
当初、micro-CT検査(中国科学院高エネルギー物理学研究所)は2点の標本で実行され、種同定のため正確な頭蓋形態データが得られました。この過程も、遺伝学的分析の前に頭骨の元々の形態的特徴の保存を確実にしました。頭骨形態を記載するため、22点の頭骨計測が三次元モデルで行なわれ、これらの測定値の平均値と標準偏差(standard deviations、略してSD)は補足表1に示されています。頭骨の大きさは一般的にヒョウやユキヒョウと類似していましたが、ネコ族やウンピョウ属よりも著しく大きいものでした。注目すべきことに、頭骨の耳骨胞は膨らんでおり、外鼓膜室は比較的小さく、これはユキヒョウとは異なる特徴です。さらに、乳様突起は比較的弱く、遠位後眼窩骨圧縮はユキヒョウよりもヒョウの方への密接な類似性を裏づけました。
正確な種同定のため、現生のネコ科15種とヒョウ族6種と老司城遺跡の標本2点を含む頭骨の背面を示す写真が収集され、8点の指標測定値の分散共分散行列を用いた主成分分析(principal component analysis、略してPCA)のために用いられました。その結果、老司城遺跡の標本2点はゆるいクラスタ(まとまり)を形成し、ネコ族とヒョウ族の間に位置し、決定的な種同定を提供しない、と論証されました。形態学的証拠から、老司城遺跡の標本2点は明確な特徴により特徴づけられるネコ科に属すると、と示唆されましたが、頭骨の損傷状態は特定の種決定に課題をもたらしました。したがって、より正確な同定のため、内在性古代DNA配列の回収が試みられました。
先行研究では、古代の動物の分類群の同定における古代DNA解析の有効性が確立されてきており、遺伝的データは個体群の遺伝的歴史のより包括的な理解も可能とします。本論文では、老司城遺跡の標本2点について、高品質なミトコンドリアゲノム配列の取得に成功しました。老司城遺跡の標本2点をネコ科の全属を表す他の114個体と組み合わせたデータセットの使用により、対での遺伝的距離分析から、老司城遺跡の標本2点は他の分類群よりもヒョウ属と密接な遺伝的類似性を共有している、と示唆されました。
老司城遺跡の標本2点とヒョウ属内の79個体(ヒョウ50個体、ライオン5個体、ユキヒョウ15個体、ジャガー4個体、トラ5個体)との間のさらなる遺伝的距離比較は、老司城遺跡の標本2点をヒョウに最も近いと位置づけ、老司城遺跡の標本2点は遺伝的に他の亜種よりもキタシナヒョウと近縁でした(図1B)。種同定を証明し、アジア東部のヒョウの母方の遺伝的歴史へのさらなる洞察を得るため、同じデータセットが用いられ、系統樹が構築されました。その結果得られたベイズおよび最尤系統樹は、遺伝的距離の結果と一致しました。本論文はこれらの調査結果に基づいて、老司城遺跡の標本2点の分類をヒョウ、具体的にはキタシナヒョウと提案します。以下は本論文の図1です。
全てのヒョウ種の個体は2群に分類され(ユーラシアとアフリカ)、ユーラシアとアフリカのミトコンドリア系統間の深い分岐(769000年前頃、95%信頼区間で100万~518000年前)を明らかにし、これは先行研究の調査結果と類似しており、最も可能性の高い起源地としてのアフリカを裏づけます。ヒョウのアジアの個体群は主要な3系統に区分され、チョウセンヒョウにより表される北方群、キタシナヒョウにより表される中央群、インドシナヒョウにより表される南方群が含まれます。中央群には韓国の大田(Daejeon)O世界遊園地に由来する標本1点が含まれ、これは分類学的にチョウセンヒョウと特定されましたが、キタシナヒョウからの約30%の遺伝的混合を含んでいる、と分かりました(図1Cの*キタシナヒョウ_山西省)。南方群にはインドネシアの標本1点が含まれ(図1Cの*ジャワヒョウ_インドネシア)、これは、アジア南東部の島嶼部と本土の間での生きている動物の歴史的な交換もしくは狩猟戦利品の獲得に由来するかもしれない、インドシナヒョウと密接に関連しています。老司城遺跡の標本2点は相互と最高の遺伝的相関を示し、中央群の個体群とまとまり、キタシナヒョウとの類似性を示した以前の結果と一致します。
ヒョウのユーラシア東部の3個体群(チョウセンヒョウとキタシナヒョウとインドシナヒョウ)は連続的な分布を示し、遺伝的パターンと地理的位置の間に顕著な相関があります(図1A・C)。明確な生物地理的障壁の欠如、およびアジア大陸部のヒョウとジャワ島のヒョウとの間の最小限の分子的違いを考慮して、ネコの分類任務に携わっている専門家22人から構成される国際自然保護連合(International Union for the Conservation of Nature、略してIUCN)のネコ専門家集団は、わずか724塩基対の連結ミトコンドリア配列から得られた分子証拠に基づいて、キタシナヒョウをチョウセンヒョウと統合し、おそらくインドシナヒョウはチョウセンヒョウと統合される、と提案してきました。
しかし、完全なミトコンドリアゲノムは、部分的配列よりもずっと多くの情報をもたらし、信頼性が高くなります。とくに、完全なミトコンドリアゲノムに基づくと、本論文の系統樹は明らかに、チョウセンヒョウとキタシナヒョウとインドシナヒョウを、それぞれ北方群と中央群と南方群に分類します。この調査結果は、分子分散分析(AMOVA)および系統発生網分析によりさらに裏づけられました。これら3クレード(単系統群)の分岐は、155000年前頃(95%信頼区間で215000~102000年前)に起きた、と推定されました(図1C)。以前のマイクロサテライト(数塩基の単位配列の繰り返しから構成される反復配列)分析も、チョウセンヒョウとキタシナヒョウとの間の有意な遺伝的分岐を示唆しました。したがって本論文は、明確な生物地理的障壁の欠如にも関わらず、これら3クレードのヒョウは明確な3個体群(亜個体群)と正確に見なすことができる、と結論付けます。
老司城遺跡の標本2点は中央群の個体とクラスタ化し(まとまり)、その出所地と一致します。19個体以上のヒョウが老司城遺跡で発見されており(本論文の標本2点も含まれます)、600~300年前頃に、周辺地域には比較的大きなヒョウ個体群が存在した、と示唆されます。この減少は、中国中央部におけるヒョウの現在の分布と大きく異なっています。ベイズスカイラインプロット分析から、ヒョウの有効個体群規模は過去3万年間に一貫して減少してきた、と示唆されました。しかし本論文は、過去数世紀にわたるヒトの活動の激化が、ヒョウ個体数の減少に大きく寄与してきた、と推測します。先行研究により結論づけられているように、ヒョウ個体群への主要な脅威には、ヒトと野生生物の衝突、獲物の減少、生息地喪失と劣化、狩猟/密猟が含まれます。
要するに、本論文は老司城遺跡の哺乳類遺骸の議論のある同定を解決し、問題となっていた頭骨2点はヒョウ(キタシナヒョウ)と認識されるべきである、と決定しました。この調査結果は種同定を明確にするだけではなく、既存の遺伝学的枠組みから大きく乖離している、アジア東部のヒョウの母方の遺伝的歴史への新たな洞察も提供します。本論文における老司城遺跡の標本2点かんら得られた頭骨測定は、計数式形態学的モデルと中国における古代のヒョウの遺伝的データの間隙を埋め、考古学的遺跡で発見された哺乳類遺骸の正確な同定について、形態学的データと分子データの成功した統合を例証します。動物遺骸は地域的な動物学研究、および分類群と古代の貴族の検証に不可欠です。この研究は、考古学的遺跡から発見された哺乳類遺骸と関連する同定の課題の解決における遺伝学的手法の有効性を示し、動物の進化史の解明におけるこれらの手法の有効性を強調します。
参考文献:
Zhang M. et al.(2024): Ancient DNA unravels species identification from Laosicheng site, Hunan Province, China, and provides insights into maternal genetic history of East Asian leopards. Zoological Research, 45, 1, 226–229.
https://doi.org/10.24272/j.issn.2095-8137.2023.292
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