キンカチョウの求愛歌
キンカチョウ(Taeniopygia guttata)の求愛歌に関する研究(Alam et al., 2024)が公表されました。鳴禽類における発声の学習は、雌の選好性が雄に多種多様な囀りのレパートリーを発達させる性選択によって進化した、と考えられています。しかし、鳴禽類には、一生の間に1種類の囀りしか学ばない種も多くいます(約1/3)。そのため、性選択がどのように単一のさえずりレパートリーを進化させるのか、まだ明らかになっていません。本論文は、キンカチョウの囀り行動に次元削減法を適用することで、シラブル(音節)の低次元特徴空間における広がりが、単一の囀りがどのように適応度の正当な指標として機能するのか、説明することを示します。
より具体的には、囀りの音を分類して分析するための深層学習手法が開発され、囀りの音節(約50万点)のマッピングが行なわれました。その結果、キンカチョウでは行動のこのゲシュタルト的な基準が囀りの音節の時間連続体の独自性を捉えていることや、雌は潜在空間をより大きく占める囀りを強く選好することや、若い雄にとっては低次元空間の経路長を合わせるのが難しい、と分かりました。この特徴を手本となる別の個体から学ぶことは雄にとって難易度が高いため、この様式の習得は雄の質の高さを示す指標となるかもしれない、と指摘されています。こうした知見は、鳴禽類において単純な発声のレパートリーがどのように進化したかを明確化するとともに、性選択が発声の学習をどう方向付け得るのかに関して、異なる戦略を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
動物行動学:鳴き鳥のさえずりスタイルは配偶者探しに役立つ
雄のキンカチョウ(Taeniopygia guttata)が配偶者を獲得するためには、求愛歌のさえずり方を習得する必要があることを示した論文が、Natureに掲載される。キンカチョウの場合、雌が配偶者を選ぶ際に影響を与えるのは、さえずりの音節(個々の音)の分散であることが、今回の研究で示された。
多くの鳴禽類種で、雄の発声レパートリーが充実し、さまざまなさえずりができるようになり、発声レパートリーの個体差も生じているのは、雌の好みのためだと考えられている。しかし、鳴禽類種の約3分の1は1通りのさえずりしか習得しない。全ての雄個体が同じさえずりをしている場合に、雌が雄をどのように評価するかは分かっていない。
今回、Todd Robertsらは、鳴禽類種の雌が雄個体を区別する際に雄のさえずりをどのように用いているかを調べるため、雄のキンカチョウのさえずりから数千点の音節を録音した。そしてRobertsらは、さえずりの音を分別、分類して分析するための深層学習ツールを開発し、さえずりの音節(約50万点)のマッピングを行った。さえずりの構造を詳細に分析したところ、雌が敏感に感じ取る特徴は、さえずりの連続した音節の分散であり、雌は音節と音節の間の「経路長」が長いさえずりを好むことが明らかになった。Robertsらは、この特徴を手本となる別の個体から学ぶことは雄にとって難易度が高いため、このスタイルを習得することは雄の質の高さを示す指標となる可能性があるという考えを示している。
以上の知見は、鳴禽類の求愛歌がどのように進化したか、また、さまざまな鳴禽類種において性選択のための戦略がどのように発達したかを洞察するための手掛かりになる。
動物行動学:雄のキンカチョウの求愛歌の潜在的な適応度
動物行動学:キンカチョウの求愛歌は量より質
鳴禽類の中には、雄のさえずりのレパートリーが1種類しかないものがいる。今回、キンカチョウ(Taeniopygia guttata)のさえずりの構造の詳細な分析によって、雌がさえずりに含まれる特定の特徴を、配偶者選択にどのように用いているかが明らかにされた。
参考文献:
Alam D, MZia F, and Roberts TF.(2024): The hidden fitness of the male zebra finch courtship song. Nature, 628, 8006, 117–121.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07207-4
より具体的には、囀りの音を分類して分析するための深層学習手法が開発され、囀りの音節(約50万点)のマッピングが行なわれました。その結果、キンカチョウでは行動のこのゲシュタルト的な基準が囀りの音節の時間連続体の独自性を捉えていることや、雌は潜在空間をより大きく占める囀りを強く選好することや、若い雄にとっては低次元空間の経路長を合わせるのが難しい、と分かりました。この特徴を手本となる別の個体から学ぶことは雄にとって難易度が高いため、この様式の習得は雄の質の高さを示す指標となるかもしれない、と指摘されています。こうした知見は、鳴禽類において単純な発声のレパートリーがどのように進化したかを明確化するとともに、性選択が発声の学習をどう方向付け得るのかに関して、異なる戦略を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
動物行動学:鳴き鳥のさえずりスタイルは配偶者探しに役立つ
雄のキンカチョウ(Taeniopygia guttata)が配偶者を獲得するためには、求愛歌のさえずり方を習得する必要があることを示した論文が、Natureに掲載される。キンカチョウの場合、雌が配偶者を選ぶ際に影響を与えるのは、さえずりの音節(個々の音)の分散であることが、今回の研究で示された。
多くの鳴禽類種で、雄の発声レパートリーが充実し、さまざまなさえずりができるようになり、発声レパートリーの個体差も生じているのは、雌の好みのためだと考えられている。しかし、鳴禽類種の約3分の1は1通りのさえずりしか習得しない。全ての雄個体が同じさえずりをしている場合に、雌が雄をどのように評価するかは分かっていない。
今回、Todd Robertsらは、鳴禽類種の雌が雄個体を区別する際に雄のさえずりをどのように用いているかを調べるため、雄のキンカチョウのさえずりから数千点の音節を録音した。そしてRobertsらは、さえずりの音を分別、分類して分析するための深層学習ツールを開発し、さえずりの音節(約50万点)のマッピングを行った。さえずりの構造を詳細に分析したところ、雌が敏感に感じ取る特徴は、さえずりの連続した音節の分散であり、雌は音節と音節の間の「経路長」が長いさえずりを好むことが明らかになった。Robertsらは、この特徴を手本となる別の個体から学ぶことは雄にとって難易度が高いため、このスタイルを習得することは雄の質の高さを示す指標となる可能性があるという考えを示している。
以上の知見は、鳴禽類の求愛歌がどのように進化したか、また、さまざまな鳴禽類種において性選択のための戦略がどのように発達したかを洞察するための手掛かりになる。
動物行動学:雄のキンカチョウの求愛歌の潜在的な適応度
動物行動学:キンカチョウの求愛歌は量より質
鳴禽類の中には、雄のさえずりのレパートリーが1種類しかないものがいる。今回、キンカチョウ(Taeniopygia guttata)のさえずりの構造の詳細な分析によって、雌がさえずりに含まれる特定の特徴を、配偶者選択にどのように用いているかが明らかにされた。
参考文献:
Alam D, MZia F, and Roberts TF.(2024): The hidden fitness of the male zebra finch courtship song. Nature, 628, 8006, 117–121.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07207-4
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