大河ドラマ『光る君へ』第12回「思いの果て」

 今回も、紫式部(まひろ)と藤原道長(三郎)の関係を中心に話が進みました。前回、両者は決別したようにも見えましたが、男女関係はそう簡単に割り切れるものではなく、両者とも相手に未練があり、結ばれるのかと思わせつつ、土壇場でひっくり返る展開は、説得力があり、上手く構成されているように思います。紫式部の父親である藤原為時と妾との関係が描かれたことを疑問に思っていましたが、妾も悪くはない、と紫式部に思わせ、道長の妾になる決意をさせて、そこからの破局を描く点で、物語として面白くなっています。

 その破局の要因として、紫式部と源倫子との良好な関係が描かれてきたところは、よく構成されていると思います。紫式部が道長と結婚する前の倫子と親しくしているのは、紫式部が道長と倫子の間の娘である彰子に仕える伏線と思っていましたが、もっと複雑な人間模様を描くためでした。道長の異母兄である藤原道綱とその母親(本作では寧子)が登場しており、妾の悲哀が道綱から道長に語られるところも、上手く構成されていると思います。主人公の紫式部と準主人公とも言うべき道長の関係が本作の軸となっており、両者の関係は深く描かれています。

 紫式部と道長の周囲の人物の思惑と心情も描かれており、道長の妻となる源明子は、本作の始まりの直前となる安和の変で失脚した源高明の娘なので、道長の父親である藤原兼家というか九条流を深く恨んでいる、との本作の設定には無理がないと思います。本作では、紫式部との関係からも、倫子の方が重要な役割を担っているのでしょうが、道長と明子との関係も注目されます。後に紫式部の夫となる藤原宣孝が紫式部の婿にと考えた藤原実資もわずかながら登場し、好色なところが示唆されたのは、後年の藤原頼通との逸話を描く伏線でしょうか。これまでも本作を高く評価してきましたが、今回視聴してさらに評価を上げました。紫式部と道長の関係を中心に、今後も楽しみですが、次回は定子が成人役として登場するので、とくに注目しています。

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