カエルの体色の機能

 カエルの体色の機能に関する研究(Laumeier et al., 2024)が公表されました。小規模な研究により示されてきたのは、体色の明度差は外温動物において重要な生理学的意味を有するかもしれず、色の濃い種ほど加温速度が急で、病原体や光酸化損傷に対する保護がある、ということです。両生綱無尾目(カエルやヒキガエル)は、5000種以上から構成される多様性の高い分類群で、体色がきわめて多彩です。たとえば、毒があることを捕食者に警告するための鮮やかな体色や、擬態によく適応した体色などです。体色については、これまでの他の動物に関する研究から、これらの特殊な機能よりもさらに重要な役割を果たしている可能性が示唆されていますが、これを検証するためには、幅広い環境条件で数多くの種を研究する必要があります。

 本論文は、カブトシロアゴガエルやマダラヤドクガエルやコガタナゾガエルやレスプレンデントグラスフロッグなど、世界中の全ての既知のカエルおよびヒキガエル種の41%(3059種)のデータを用いて、より寒冷な地域とより高い病原体圧および紫外線放射へと向かって体色の明度が減少する、遍在的で強い勾配を明らかにします。山岳地帯や高緯度の寒冷な地域になると一般的に暗い体色になり、強い紫外線や病原体感染の高い危険性に曝される地域(マダガスカルやペルーやエクアドルなど)でも同じ傾向が認められました。

 病原体耐性の相対的重要性は熱帯でより高く、体温調節の相対的重要性は温帯でより高くなっています。この結果から、これらの機能は無尾目における色彩明度の進化に影響を及ぼし、気候の極端な条件下でより類似した色彩の種で選別された一方で、これらの同時的重要性は生産性の高い地域において高い個体群内の差異をもたらした、と示唆されます。本論文の調査結果は、無尾目における色彩明度の3点の重要な機能(体温調節と病原体および紫外線からの保護)を示唆し、外温動物における色彩明度と環境の関係への裏づけを広げます。気候温暖化と侵入病原体により世界中の両生類の個体数が減少しているため、こうした知見は脆弱性の高いカエル種やヒキガエル種とその生息域の予測に役立つかもしれない、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


動物学:カエルやヒキガエルの体色は見かけだけじゃない

 カエルやヒキガエルの体色の多様性は、環境ストレスや病原体から身を守るために役立っている可能性のあることが、3000種以上を対象とした研究で示された。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、カエルやヒキガエルの体色が、気候が変化する中で生き残る能力に影響を与えている可能性があることを示唆している。

 両生綱無尾目(カエルやヒキガエル)は、5000種以上から構成される多様性の高い分類群で、体色が極めて多彩だ。例えば、毒があることを捕食者に警告するための鮮やかな体色や、カムフラージュ(擬態)によく適応した体色などがある。体色については、これまでの他の動物に関する研究から、これらの特殊な機能よりもさらに重要な役割を果たしている可能性が示唆されているが、これを検証するためには、幅広い環境条件で数多くの種を研究する必要がある。

 今回、Ricarda Laumeierらは、カエルやヒキガエルの体色の明度が、体温調節、紫外線Bの照射(UVB)に対する防御、病原体耐性にどのように関連するかを調べた。今回の研究では、カブトシロアゴガエル、マダラヤドクガエル、コガタナゾガエル、レスプレンデントグラスフロッグをはじめとする3059種のデータが世界中から集められた。これは、無尾目の既知種全体のほぼ半数に相当する。これらのカエルの体色は、寒冷な地域(例えば山岳地帯や北緯度地方)になると一般的に暗い色になったが、UVBのストレスや病原体感染リスクが高い地域(マダガスカル、ペルー、エクアドルなど)でも同じ傾向が認められた。Laumeierらは、体色が明るいカエルやヒキガエルは熱耐性が高いが、その代償として、カエルツボカビ(両生類の流行性病原体)などの病原体やUVBに対する脆弱性が高くなっている可能性があるという見解を示している。また、今回の解析では、こうした要因が、無尾目の体色に地域差を生み出す上で重要な意味を持っており、熱帯域では病原体耐性の重要性が高く、温帯域では体温調節の重要性が高いことが明らかになった。

 Laumeierらは、気候温暖化と侵入病原体によって世界中の両生類の個体数が減少しているため、今回の知見は、脆弱性の高いカエル種やヒキガエル種とその生息域を予測するために役立つ可能性があると結論付けている。



参考文献:
Laumeier R. et al.(2023): The global importance and interplay of colour-based protective and thermoregulatory functions in frogs. Nature Communications, 14, 8117.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-43729-7

この記事へのコメント